無事にリリースは本当に無事なのか?〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#29
世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。
無事システムはリリースされる
たくさんの人が参加し、何ヶ月もかかったそれなりに大きな規模のシステム構築プロジェクト。そのシステムが数々の苦難を超えてついに本番環境にリリースされ業務ユーザーが新システム利用し始めます。
企画時には充分にユーザーの業務要望を聞き、開発時には充分すぎるほどのテストをし、リリース直前には親切すぎるくらい利用者に対する教育をした結果・・・・リリース当日は大きなトラブルもなく、静かなまま無事業務終了時間を迎えた・・・・・・
誰しもが憧れるような素晴らしい光景ですね。
しかし本当に、それって本当に素晴らしい光景なのでしょうか?
あなたの立場がSIerであれば、顧客からの信頼も得られ、これ以上システム開発やサポートにコストが掛からないので、ほんとうに素晴らしい限りでしょう。瑕疵も無いですし、プロジェクトは大成功、評価もアップ・・・・といったことになるでしょう。
しかしあなたがユーザー企業の情シスであるならば、ちょっと違うのかもしれません。
企業の活動は常に投資対効果
あなたの所属する組織が営利組織であるならば、プロジェクトの成功は投資対効果の高さということになります。つまりは利益・・・すなわち目指した目標を最低限の投資で達成することが究極の目標になります。つまり100の価値を生むためには100以上のパワーでシステム構築をするのは良くないことなのです。できればギリギリのコストでやるのが理想なのです。
ちょっとコレをモデル化してみます。
この図はシステムの機能の価値を図にしたものです。
水色の部分が組織が本当に必要な機能のレベルです。必要な機能には強弱が必ずありますので、イメージ的には高低差のあるギザギザな形状になるはずです。例えばメインの入力の機能性は非常に高いものが求められますし、マスタメンテみたいなのは若干つかいにくくても問題がない・・・みたいな感じです。
それに対して実際に構築したシステムのレベルというのはピンクの部分になります。こちらは要件定義の基準、開発標準などがあるので、ちゃんとしているプロジェクトであればあるほど大抵は横一線になるはずです。
つまり2つを重ねてみてピンク色に見えている部分が「ムダ」になります。具体的に言うと「なくても困らない機能」「作らなくてもクレームにはならない機能」ということになります。
さらに言うと障害対応のために確保したエンジニアのコストも完全に空振りです。
つまりは「無事なシステムリリース」は無駄が多いということになります。
とはいえ足りないとやばい
とはいえピンクの部分でるシステム機能の充実度が低いとエラいことになります。ピンクの水面の上に出る尖った部分がすべて「機能不足」となり、コレが多いと業務が回らないことになります。
こうなると大変です。現場は大混乱でパニックになり、ヘルプデスクにガンガン問い合わせが入り、最後はプロジェクトルームにお偉いさんが殴り込みます。そのせいでサポートコストもリカバリコストも膨れ上がり、増員対応などでプロジェクトコストは爆上りになって、投資対効果がマイナスになってしまいます。この状態ではSIerもユーザー企業双方不幸になります。
誰もが思い描く失敗プロジェクトとなります。
究極はちょうどよいトラブル具合
究極の成功プロジェクトというのは「適度にトラブルがある」リリースというのが一番効率がいい気がします。リリース後の障害も、機能的な不満もある程度であればたいしたことはありません。障害となる部分が限定的なので業務も基本的には回ります。チラチラと不満はあるかもしれませんが大パニックにも偉い人のカチコミもありません。準備したエンジニアの体制で予定通りの工数で対応するだけです。
機能的にも余計に作り込んだ部分(ピンクの部分)は少なくはないものの最初のパターンと比較すると少なくて済んでいますし、用意したリリース後のサポート工数もしっかりちゃんと使いるので、もっとも効率的なコストとなります。
そうそう「ぴったり無駄なく」というのは現実には難しいですが、トラブルが適度に有るくらいが本当はいいのかもしれないなぁ・・・なんて思うのです。
ある意味贅沢な悩みをしています。
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