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数字と意志の経営(1)

湘南江の島の税理士、エイマエダケイタです。
これから税理士・中小企業診断士そしてコーチである私が考える、経営者の意志数字につなげる「数字と意志の経営」について何回かに分けて書いてみたいと思います。
経営は複雑で答えのないことも多いですが、何かのヒントになればいいなと思います。

数字をもとにして経営を考えるというとまず決算書を見るところから始めるという方が多いかもしれません。
決算書は財務会計をもとにできています。(試算表も同じです)
財務会計の役割は、情報提供機能と利害調整機能であると言われています。
単純に言えば、財務会計による決算書は銀行や投資家のためのものなんです。(税金計算の基準でもありますが)
そのため、現状分析には一定の役割を果たしますが、未来へ向けた戦略を考えるのにはそのままでは適していません。
決算書とにらめっこしているだけでは改善策を見つけることは難しいです。決算書の元となっている要素に分解していかなくてはいけません。
決算書はあくまで会社の活動の要素を財務会計のルールでまとめたものですから。

経営の原則は「売上は最大に、経費を最小に」であると稲盛和夫さんも言っていますが、これは私も賛成です。ベースの考え方はここにあります。
多くの人に価値を届ける、従業員を守る、安易な値引きはしない、余計な経費は使わない、といった意志がこの原則に表れていると思います。
また、チャンスが来たときに勝負ができるようにするためには安定した土台を築いて、それを維持していく必要があります。この原則はその土台を築いて維持していくための原則ともいえるでしょう。

売上は非常にわかりやすい指標ですが、決算書の売上を見て前期より上がった下がっただけではあまり意味がありません。売上を構成する要素に分解して考える必要があります。

また、売上だけでなく付加価値で考えることも必要です。
付加価値=売上-外部支払費用(仕入、外注費、原材料費)
※付加価値は売上総利益(粗利)に近いものですが決算書上の売上総利益と必ずしも一致しません
付加価値-固定費=利益となります。

例を上げて考えてみると、商品A,B,Cの3種類の商品を販売する小売業で、
・商品A…販売単価50、仕入単価40、1個あたり付加価値10
・商品B…販売単価100、仕入単価70、1個あたり付加価値30 
・商品C…販売単価200、仕入単価120、1個あたり付加価値80
・固定費(家賃、人件費、広告費など)…2,000
であるとします。

《パターン1》
売上
 商品A 50×40=2,000
 商品B 100×20=2,000
 商品C 200×10=2,000
 合計 6,000
付加価値
 商品A 10×40=400
 商品B 30×20=600
 商品C 80×10=800
 合計 1,800
利益
 1,800-2,000=-200…200の赤字

《パターン2》
売上
 商品A 50×20=1,000
 商品B 100×10=1,000
 商品C 200×20=4,000
 合計 6,000
付加価値
 商品A 10×20=200
 商品B 30×10=300
 商品C 80×20=1,600
 合計 2,100
利益
 2,100-2,000=100…100の黒字

上のパターン1とパターン2では売上も固定費も変わらないのにパターン1では200の赤字だったのがパターン2では100の黒字になりました。
現実にはここまで極端なことはなかなかありませんが、利益を上げるためには売上を上げる、固定費を下げる以外にも方法があるということがわかります。

上の例のように売上は変わらなくても売上の構成が変われば利益が変わります。このように売上を要素に分解すると何を、誰に、いくらで、どれだけ、売るかになります。
ここに経営者の意志、そして会社の方針が現れてきます。
再び稲盛和夫さんの言葉を借りれば「値決めは経営である」ということです。
この視点で考えると、利益を上げるための戦略として値段を安くして固定費を増やし、より多くの人にサービスを提供するといった選択肢も出てきます。
事業の改善策を考えるにあたっては、いま一度経営者の意志に立ち返ることが大事です。
そのための手がかりが要素の分解、売上=何を、誰に、いくらで、どれだけ、売るかということになります。
経営者としてどうありたいかという意志数字に反映させるにはこの視点で目標設定することがカギとなります。

あくまで経営の一部の話ですが、参考になればと思います。noteでこのシリーズを何回か書いていきます。
よろしくお願いします!



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