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日本企業のガバナンスと株主②

そうこうしているうちに前稿から2週間経ってしまった。先日受講したコーポレートガバナンスに関するWebセミナーの登壇者(企業年金を運用する方)はスチュワードシップ・コード(以下SSコード)とコーポレート・ガバナンス・コード(以下CGコード)についても辛辣な意見を述べていたので、以下備忘メモとともに考え方を整理したい。
【SSコードに対する考え方:要旨】
2014年に制定されたSSコードは「投資家は他と協働で企業と対話すべき」という点を除けば、英国のSSコードをまねしたものだが、この点が今でも大きな問題となっている。SSコードの対象は運用会社、保険会社、年金基金など機関投資家であるが、これらが保有する株式(議決権ベース)は東証上場株式の20%にもならないのに対し、SS コードの対象外である銀行と一般事業法人の保有する株式は同30%程度である。このため、SSコードの対象となっている機関投資家の保有株式数(議決権)が小さく、「企業を変える」責任を持たせることに相当無理があることを認識しなければならない。
【CGコードに対する考え方:要旨】
CGコードはSSコードに続いて2015年に制定されたが、上場会社全社を対象としているものの、遵守されない場合でも罰則がないし、毎年全社から出されるCG報告書を検証する仕組みもない、のが問題である。特に、原則1-4①において「政策保有株主からその株式の売却の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆するなどにより、売却等を妨げるべきではない」となっているにもかかわらず、いまだに実態を伴っていない企業が多い。また、未だに「会社は株主のモノ」という考えに反発する経営者がいる。考えを改めるべきであり、改めるように研修をやり直すか、会社そのものを非上場化すべきであろう。なぜ非上場化しないのか理解できない。
【SSコード・CGコードに対する考え方:所感】
SSコードは、対話すべき機関投資家が多数派ではない以上、他と協働して企業と対話すべきながら、対話しても実効性に乏しく「企業を変える」責任ヲ負いきれないところが大きな問題である。では協働するのは誰か。銀行と一般事業法人と協働すれば多数派になれるだろう。しかしながら、デッドファイナンスに関わることができればいいというスタンスなのか、銀行はもはや企業を変える力は持ち合わせているとは思えないし、一般事業法人は売りたくても売れずに困っている、むしろ誰かが売らせないように仕向けているというのが実情だとすれば、SSコードが唱えることは無理があると思える。こうした慣行、組織間の連携など、アセットオーナーに言う前に、変えるべきことはあるのではないだろうか。CGコードに至ってはさらに問題だ。上場会社の所有者は株主である。何のために上場しているのか。大抵の場合、上場会社の経営者はその会社のプロパー社員が多数を占めている。新卒で入ってここまで仕事をしてきて、やっと会社のマネジメントを任されるようになったわけで、自分の会社に愛着があるのは理解できるが、一般社員ではない経営者であれば、上場会社は株主のモノであることくらいわかるはずだ。株主は経営者に経営を委託しているからこそ上場できているし、資本市場から株式発行による増資を通じて同社のサステナブルな経営を続けられるのだ。なぜ同社は上場しているのか、明確に答えられない経営者も多いのではないだろうか。企業価値/株主価値を高めることができるのは経営者だけだ。そのあたりをもっと真剣に考え、投資家と対話を続けていくべきではないかと思う。
次回は、株主の目から見た日本企業のガバナンス上の問題点を見ていく。



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