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トレーニングの回数とセット数

『このトレーニングは何回×何セットやれば良いでしょうか?』
よく質問を受ける内容ですが、これについては万人に共通な何回×何セットやると良いでしょうという明確な目安はありません
というのもトレーニングをする人のエクササイズ経験値や目的・目標に応じてトレーニングメニューにおける回数やセット数は異なるからです。
しかしながら、気の赴くままにトレーニングの回数やセット数を決めても効率的なトレーニング効果を生み出すことができないので、基本的な回数・セット数を決める考え方は理解しておいた方が良いでしょう。
まず、負荷を決めるのに知っておいた方がいい考え方としてRM(Repetition Maximam)理論から目標に合わせた負荷を導く方法を知っておきましょう。
RMというのは、何回その重量を挙上できるかを表しています。1RMであれば1回しか持ち上がらない重さ、10RMであれば10回はギリギリ持ち上がるけれども11回は持ち上がらない重さということです。
トレーニングの回数を決定するには、まずその方が今どのくらいの力を保有しているのかを確認するためにnRMテストというものを実施します。nRMテストを一例を挙げて説明すると、仮に1人の男性がベンチプレスを実施していただいた時、60kgを8回持ち上げることができたが、9回目の途中で持ち上げきれずに潰れてしまった場合、この方の8RMは60kgというような言い方をします。
このテストで得られたデータを使い、その人の目的に合ったトレーニングの負荷を設定していくことがこのRM理論によるトレーニングの負荷設定です。
負荷設定を導くには今は既に換算表というものが世間的にも広まっており、nRMテストを実施後それを活用することが良いでしょう。
【図1:RM換算表】

この換算表を用いることで計算上の推測ですがその人の1RM=最大挙上重量(MAX重量)を計算することができます。
先程の例を用いて計算してみると、上段の8回を下に見ていき、60kgを示すところの左列MAX重量を見てみると70kgとなっています。
このことから、この方で言うとベンチプレスのnRMテストの8RMの60kgという結果から、この方が持ち上げられる1RM(最大挙上重量)は70kgということが推測できます。
そして、その最大挙上重量を基にその方の目的に合わせた強度設定(何RMで実施すべきか)を決めていきトレーニング回数を導き出すことができます。

換算表の見方がわかったところでトレーニングの目標について、整理をしていきましょう。
まず前置きとしてトレーニングの言葉についてですが、トレーニングと言っても種類はたくさんあり、有酸素運動も一種のトレーニングと解釈することができます。
これからトレーニングを行うことで起きる筋肉の変化について言及していきますが、今回ここで言及するトレーニングというのは重りなどの負荷を使ったレジスタンス(筋力)トレーニングを行うことにおける変化と捉えてください。
では、筋力トレーニングを行うことで起きる大きな筋肉の変化について見ていきましょう。筋肉の変化は大きく分けて
①最大筋力(最大パワー)の向上
②筋肉を大きくする(筋肥大)
③筋肉のスタミナ力(筋持久力)を向上
させるという3つの目標があります。
①の最大筋力の向上はその文字通り最大挙上重量を高めることになります。純粋に物を押す力や物を引っぱる力が強くなるといったニュアンスです。何かに対して踏ん張ったり、物や人を持ち上げたりなどスポーツのパフォーマンスに直結するような内容が多いでしょう。次に②の筋肥大ですが、筋肥大とは筋肉の断面積を大きくすることです。男性の胸板を厚くしたいや肩幅を広げたい、女性のメリハリボディのためのヒップアップなどが当てはまります。最後に③の筋持久力は筋肉がたくさん動いても疲れにくくならないや、綺麗な姿勢を保ちたい、たるみなどの身体の気になる箇所を引き締めたいなどに効果的です。
以上に大枠整理できますので、トレーニングの目標を何にするのか事前に明確にした上で、トレーニング負荷を決定していきましょう。
それでは、次のステップとして上記の3つの効果に対して、どのような強度設定をすればいいのかについて触れていきましょう。
まずは下の図2をご覧下さい。
【図2】

黄色く示されているところが1番効果が高いと言われています。
・最大筋力の向上であれば6回以下
・筋肥大であれば6回以上12回以下
・筋持久力であれば12回以上
といった指標です。
ただし、この図からも読み取れることですが、15回のトレーニングを行っていたからと言って筋肥大が起きない訳ではないということです。その回数で行うことがあくまで一般的に効率が良いと言われています。
実際の現場でも自分は1セット15回でやった方が筋肥大すると言った状況も良くあり、個人差があるので同じトレーニングをしても身体の反応は人それぞれ違うことも理解をしておきましょう。

回数が決まり次はセット数ですが、セット数については初心者であれば1-3セット、中級者以上であれば3セットを軸に設定していただくといいでしょう。3セット以上が悪いわけではありませんが、1種目3セットが適当と言われており、その理由は筋タンパク質の合成作用は限界点があると言われているからです。私の所属するNSCAのデータでも1セットと複数セットでの比較では46%の効果差がありましたが、4セット以上では効果の差は見られないとの検証データが示されています。しかしここでご注意いただきたいのはこの3セットというのはあくまで本セットのトレーニングであり、軽負荷で行うウォームアップの動作は含まれません。そのためウォームアップの数を含めピラミッド方などで段階的に強度を高めていく場合は4〜5セットになる場合もあります。あとはセット数で考慮しておくべきことは全体的なボリューム量です。トレーニング時間に関してはたくさん出来るに越したことはありませんが、一般的な人であればトレーニングに掛けられる時間は限られており、その目安はジムに来てから帰るまでの時間が1時間から2時間程度であると考えられています。時たまジムに5時間近くいて運動をフルコースで行う方がいますが、筋トレは貯筋できないため私のオススメとしては、週に1度5時間実施するより週に2回1.5時間トレーニングを実施する方が、さらには週に3回1時間トレーニングを継続できた方が効果が高いと考えています。
その上で参考にすると良い数字が50分22セットです。60分のジム時間で考えれば前後の準備なども含めて活動時間は多くて50分です。その中でストレッチなども1セットに数えて、各エクササイズの間の休憩を1分程度で計算すると22セットの時間配分がちょうど良い按分になります。その日のトレーニング時間をもとに何種類のエクササイズを実施するのかを考えるとあとは必然的に何セットを実施するのかは自然に見えてきます。

基本的な知識として上記のことを知っておき、その上で自分の身体と対話をしながら自分に合ったトレーニングの回数×セットを見つけていくことが良いでしょう。それを見つけるには自分の身体をよく感じながら行うことが大切です。この点については知識だけでは難しい一面があります。料理のように大さじ1杯が目分量で分かってくるのと同じように、たくさん繰り返すことで加減が分かってきます。料理を初めたばかりの人がどの量が適切なのか分からないのと一緒で経験がとても必要なのです。またnRMテストを自分1人で行うと思ってもその動作に慣れていないことや、人間心理として経験が浅い運動に関して、まず100%の力を出し切ることは難しく、正しい1RMを導き出すことが難しいでしょう。そのためより早く効果を出したい場合、まずは熟練のパーソナルトレーナーなどに実際の動きを見てもらい効果的な回数×セット数を組んでもらうことをオススメします。

さて、少し視点を変えて先程、個人差があると言及しましたが、どのようなところに個人差があるのでしょうか。身長・体重・性別・年齢などそもそも違うので、確かに身体の反応に変化があるのは当然でしょう。
ただ、小学生や中学生など身長や体重も性別が同じであっても強く力を発揮出来る人と発揮出来ない人がいることは事実です。この違いはどこから来るかを少し深掘りして考えてみましょう。物理的に手足の長さが違うや食事の質が違うなどもあるでしょう。心理的な側面でも厳しいときに強い子や弱い子そんなこともあるでしょう。しかし、トレーナーとしていろいろな方を見させていただいてトレーニングが上手で効率的な運動をできている人の共通点としては身体の使い方が上手ということが挙げられます。筋肉の主働筋・協働筋という言葉がありますが、主働筋とは字の如く1つの動作に対してメインに働く筋肉のことです。協働筋とは主働筋をサポートするように働きます。この主働筋が効率良く使えているかいないかによって身体が上手に使えているかを見極めることができます。特にわかりやすい動作でいうとメジャーなトレーニングでラッドプルダウンと呼ばれる背中のトレーニングがあります。
【図3:ラットプルダウン】

このトレーニングの主働筋は背中の広背筋です。しかしジムで良く見かける光景として、概ねバックプルダウンとして頭の後ろにバーを持ってくる場合のときに最初の初動を背中を丸めるようにお腹の腹筋を使って動作を行う人や、背中の広背筋でなく腕の曲げ伸ばしによる上腕二頭筋をメインに使ってしまう人がいます。それではトレーニングの効果を最大限に活かすことができません。
前述の通り、RM理論で適切な回数を導き出すことができてもそれは正しい動作が反復できて使える理論なのです。そのためまず最初の第一ステップとしては、トレーニングを正しいフォームで行える。そのことが何よりも大切です。正しいフォームとは主働筋に効率的に効かせることができて、身体の障害を生み出しにくいフォームのことです。そしてそのトレーニング動作を20回実施してもフォームが変わらないことです。10回の動作をしてもらっても最初の2.3回は上手にできても少しずつ動作がズレ始め10回目には1回目と違う動作になってしまうことが多いです。これからトレーニングを始める方であれば、まずはフォームの習得を第一に取り組みましょう。野球のピッチングフォームなどと一緒で変な投げ方であれば、いずれ肩や肘を痛める怪我のリスクが高まり、球速などの伸び代が少なくなってしまいます。そして、幼い頃についたお箸の持ち方、鉛筆の持ち方のように一度付いてしまった癖を直すのは容易ではありません。またトレーニングを指導する立場の人で有れば、重い重量を持ち上げられる必要はありませんが、正しいフォームを模範演技として魅せられること、また正しいフォームへ導くことができることが絶対条件です。常にそのことを念頭においてお客様へ対応すべきかと考えています。もし仮にお客様から聞かれたエクササイズを自分自身が上手に見せることが出来ないのであれば、それは正しく教えられる先輩や同僚に依頼をすることもお客様のためになるということを理解しておくといいでしょう。

では、最後に正しいフォームの習得も含めて、お客様へのトレーニングメニューを課すガイドラインとしてNASMが推奨するOPTモデルという指導方法があります。
下の図がOPTモデルというものです。
下から順にトライしていき、そのエクササイズのレベルは今どこなのかを確認しながらレベルアップしていくガイドラインです。

OPTモデルの詳細については、また別の機会に記述することと致しましょう。

それでは。


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