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マーケットビジョン2024:踊り場のBPO市場

新年の業界展望として3つのトピックについて書きました。第二弾として「コンタクトセンターBPO業界」を取り上げます。

私自身はコンタクトセンターのマネジメントやデジタル化・AI活用を専門としており、この記事はその界隈のトピックとなります。


市場予測はマイナス成長に転換

2023年のコンタクトセンターBPO市場は、ワクチン業務などのコロナ特需が大幅に減少となったこともあり、マイナス成長となったようです。2024年以降も市場の縮小が予測されており、長らく拡大が続いてきたマーケットの転換点にあると言えます。

デジタルチャネルへのニーズ拡大やAIの進化に伴って、BPO市場はいずれ縮小すると見られてれてきましたが、とうとうそれが現実になったようです。

一方で、グローバル市場は引き続き拡大傾向にあるようです。日本市場のみマイナスになるのは、一人当たりのGDPがG7で最下位といった市場全体の成長率が低さや労働力不足の影響を大きく受けていると考えらます。

英語人材が少ないこともあり、日本をオフショア拠点として外貨を取り込むことも難しいため、再び拡大の方向に転換する要素は今のところ思いつきません。

"ビジネスプロセスアウトソーシング"の実践が鍵

市場成長が踊り場を迎えたことを反映してか、このタイミングでトップ企業同志の統合もありました。一般的に市場の成熟化に合わせて寡占が進むわけですが、定石通りこの流れが加速するのでしょうか。

BPOビジネスは、かつては設備産業的な側面もあり、多くの座席数を抱える大手企業の収益率が高いといった傾向がありました。しかしながら、システム基盤のクラウド化や在宅化といった選択肢も出てくるなかで、固定費の変動費化は進んでおり、以前ほど大手と中小のコスト構造の差がなくなっていると言えます。実際に収益性を見ると、売上1千億円を超える上場トップ企業よりも、下位レンジの企業に収益性の高い企業が目立ちます。

こうした収益性が高く、クライアントから支持されているBPO事業者では、本来の意味でのBPO = Business Process Outsourcingを実践できているところが多いと感じます。

コスト削減を主目的とした"アウトソーシング"を進化させた概念として"BPO"というキーワードが使われるようになったのは、20年近く前でしょうか。単純作業の委託ではなく、アウトソーサーにビジネスプロセス全てを預け、プロセス改善・効率化も含めて委託するといった考え方です。

中堅企業では、テクニカルサポートや金融などの業務・業種特化が進んでおり、結果としてクライアントのパートナーとして評価されている、"BPO"が実践できているケースが多いと感じます。
規模の追求ではなく、本来の意味での"BPO"を実践できるかが、収益性の高いプロジェクトを増やしていく鍵になるのではないでしょうか。


テクノロジー <  PMスキル・業種専門性

一方で、トップ企業は大規模ブースが多いため、必然的にコスト追及型のクライアントが多くなります。結果として、IT・AIによる自動化を組み合わせた"ピープル&テクノロジー"が基本戦略になるわけですが、グローバルベンダーも同様の傾向があり、この戦略が「王道」になるのだと思います。

各社、テクノロジー側の強化を進めていますが、テクノロジーの進化は想定以上に早く、内部にプロダクトやエンジニアを抱え込むリスクは高くなっていると考えます。クライアントから最新のプロダクトを使う要求が降りてくることもあり、スタートアップや海外ベンダーの目利き、パートナーシップも必要になっています。

こうした状況下では、外部パートナーも含めた様々なチームを組成、マネジメントすることが求められており、これまでのセンター運用スキルだけではない、高度で汎用的なPMスキルが求められていると思われます。

これら人材層は、外資コンサルやトップSIerの得意領域ではありますが、BPOベンダーもこの層の人材を集めてこなければ、収益性の高い数十億規模のプロジェクトを受託するのは厳しくなるでしょう。
BPOベンダーの給与テーブルにマッチしない人材層にはなりますが、高度なPM人材の育成や採用は、マイナス成長の市場で勝ち抜いていくための重要な要素になると考えています。



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