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Keita's talk その225 デジタルと写真と光


 デジタルカメラになって一番変わったのは写真がデータになったこと。データだとパソコンやスマートフォンなどでも簡単に加工ができる。今回のトップの写真もかなりデジタル的な加工が入っている。加工というと響きは良くないが、こんな極端な調整が撮影だけで完結するのもデジタルカメラのすごいところ。


 そんなデジタル的な写真を撮るのに適しているのはミラーレスと呼ばれるファインダーの中までEVFというデジタルのパネルになったカメラだと言われている(ファインダーがついてないものもや外付けという後からつけるタイプもある)。

 そのカメラでは撮影後のイメージを確認しながら撮影できる。こんな強い加工状態だけでなく、露出補正も反映された結果を確認しながら撮影できて、悩みの種だった失敗が少なくなる。いいことばかりのように感じるが、へそ曲がりのボクは改めて写真とは何かを考えたくなる。



 写真の元になっている photograph の語源はギリシャ語の 光で描くこと を意味する photographic (photo:光 graphic:描くこと)。要するに写真で一番大切なのは 光 の扱い方。

 日本では 写真 という 意訳 が使われているので、真実を写すもの という意識が強い。確かに見たものをそのまま写すこともできるが、自分が感じた光を再現するときは見たままというのはあまりしっくりこない。



 最低でも露出補正をして、印象的になる角度を選んで強調しないと自分の感じた光にはなりづらい。



 写真を見るのにプリントがあっているのはデジタルでも同じ。プリント作りの最終調整がしやすくなったのはデジタルの利点で、失敗しなくなったのはデジタルの弱点だと思っている。



 ミラーレスカメラの良さは失敗がなく誰でも簡単に撮れるというのも、実は弱みになる。



 確かに事実を伝えるだけならば、失敗はいけないかもしれないが、表現にとっては失敗こそが宝。失敗の中には新しい可能性がたくさん詰まっていて、それが次に繋がる楽しさになる。たくさん失敗をしてから楽をすると全てが最高の利点になる。


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SHCと呼んでいる仕上げ

 SHC はスーパーハイコントラストの略。こんな表現も間違えてトーンカーブを思い切り動かした失敗から始まった。フォトショップの調整でトーンカーブのポイントを消すつもりが大きく動いた状態で止まって、その画像がおもしろかったのが始まりだった。ただ、画像処理で作るとこの処理に合わせた光を選ぶ意識が弱くなるのでしばらく放置していた。


 今回の写真はカメラ内の処理でほぼ完結している。ちょっと極端な印象で、なんでもない駐車場もカッコよく見える。光を選んで露出を追い込まないとカッコよくならないので、設定するだけでは使えない。露出補正もカメラが表示する適正から -1.0EV などのちょっと極端な補正を使うことが多い。


 極端な補正を使うので、結果を見ながら撮影しても撮影中に見ている感じとの間に違いがでやすく、想像力が必要な一眼レフの光学ファインダーの方がしっくりくる。光学ファインダーは見た目と同じ風景を見ながらこの仕上がりを想像するので確かに失敗も多いが、失敗しながら感覚を鍛えると必要な光も決めやすくなる。ちなみに、この設定の撮影は 0.3EV の露出の違いでもかなり表現が変わる。


 こんなことを書いていると設定が気になる人もいるだろうが、これがカメラで完結するのはペンタックスだけ。

 「カスタムイメージ:リバーサルフィルム+デジタルフィルター:ハイコントラスト」という組み合わせが必要。


 カスタムイメージは、デジタルの画像の仕上げを調整する項目。他社のカメラではナチュラルや風景、Vividなど色の傾向とコントラストなどが少し変わる程度の項目だが、ペンタックスは他社ではデジタル的な強い調整に入ってしまいそうな 銀残し や クロスプロセス など独特な調整をした仕上がりも入っている。リバーサルフィルム もフィルムのようなこってりとした表現ができるように調整されている。


 デジタルフィルターは、デジタル的な強い調整をする項目で、ペンタクスはいち早くこの機能をデジタル一眼レフに搭載したメーカーでその数も最多。撮影時に使えるものと撮影後の画像にカメラ内で使えるものがあるが、撮影時に使えるものは今回のハイコントラストのように調整系が多い。


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この青はこの設定でないとでない

 かなりコントラストが強い状態になるので、この設定にしないとでない色も多い。一番わかりやすいのは空の青。空の青はフィルム時代のコダックブルー、デジタル初期のオリンパスブルーとそのこだわりが現れやすいが、この処理でも独特な青になる。


 もうひとつ、改めて面白いと感じたのが HDR の表現。HDR は輝度合成といって明るさの違う画像を重ねて輝度差を補う表現。デジタルの初期は撮像素子のダイナミックレンジが狭く、それを補うために使われたり、海外では下の写真のような極端な効果を楽しむ人が多かった。


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強いHDRの表現

 ちなみにダイナミックレンジとは、撮像素子が再現できる明るさの差をいう。最も明るい場所から最も暗い場所まで再現できる幅が広ければより自然な目で見ているような雰囲気になる。この範囲を広げるために明るさの違う画像を撮影して重ねるのが HDR 。明るさの差をどのくらいの幅にするかでその仕上がりの雰囲気が変わる。


 パソコン用の画像処理ソフトでHDRを作る場合、基本的には露出が標準的な画像と明るい画像、暗い画像の3枚が必要になる(ソフトによって必要な枚数は違う)。

 スマホ用のアプリでは1枚の画像から同じような効果を作れるソフトもあるらしい。カメラ内でこの効果を使えるカメラは昔からあるが、複数の画像がズレるとあとで合成できないので、基本的には三脚が必要な機能だった。

 最近はコマ速(一秒間に撮れる枚数)も早く、手持ち撮影でも使えるカメラが多くなった。今回の写真も全て三脚なしの手持ち撮影。


 特に海外系のサイトでは一時期このHDRばかりで、最近は極端に明瞭度を高めて光の入り方を無視した強さを出している画像が多い。なんで流行から少し外れたこの処理が今頃気になったのかといえば、新しいカメラのユーザー設定にあらかじめこの極端な設定が登録されていたから。初めは気にしていなかったが、使い始めると面白く、この設定でも光を意識すれば立体感も出しやすいことにも気づいた。


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絵画調の強い効果だけでなく繊細さも感じるのが最新のHDR


 デジタルだろうとフィルムだろうと写真は光。その扱い方が最も分かりやすいのがモノクロ。目に見えない光は感じることしかできない。感じた光をどう表現するかがモノクロのポイントになる。光学ファインダーはこの感じる感覚を養える。


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小さな気づきを大切にしていると自分らしさも見つかる


 良い悪いではなく、シンプルなモノクロだからこそ無限の可能性が広がるので、写真をやるなら一度しっかりモノクロをやってみるのが良い。


 やっぱりフィルム?個人的には今はそこにこだわる必要はないと思うが、デジタルではモニターとプリンターを揃えないと調整中に見ている画像とプリントのズレが大きかったり、微妙に色がつく(色がかぶるという)こともあるので、追い込み時にストレスが溜まる。


 デジタルでもフィルムでもどんな設定でも写真に光の捉え方が大切なのは変わらないし、その違いが自分らしさになる。



 では、また、次回。

レンズ:HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR カメラ:KP
オリジナル Keita's talk その225 デジタルと写真と光 2017年7月19日

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