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スペインへ、ただ純粋に目を向けるということ

2023年9月23日(土)

スペインへ移動する日。5時半の電車に乗って羽田空港へ。約2年ぶりの国際線で、ワクワクと緊張が入り混じる。初めて利用する中国東方航空のチェックインカウンターは長蛇の列。時間ギリギリで手続きを終え、外貨両替の窓口で改めて円安に戦慄する。私がミラノに住んでいた2年前より、1ユーロが30円くらい高い。

まずは上海へ。約3時間のフライトは少し本を読み、あとはほとんど寝ていた。今回旅のお供に持ってきた本は、泉が前にラジオで言っていた真木悠介さんの『気流の鳴る音』。目次を見た感じ理解できるかどうかが不安だけれど、序章は今のところ面白く読めた。

上海に到着。中国発上陸でワクワクしていたけれど、空港を楽しむ暇など全くないほどに急いで飛行機を乗り換えた。荷物検査は厳しく、リュックの中身を全部外に出された。カメラやらバッテリーやら、機械が反応しそうなものが色々入っているのでまあ仕方ないけれど、こんなに綺麗にカバンをひっくり返されたのは初めて。まだ開けていない水を取られたのは地味に悲しかった。セキュリティチェック後電車に乗って搭乗口まで移動したので、おそらく空港はとても大きい。まったく全容がつかめないまま、あっという間に機内に到着した。

マドリードまで約12時間。長時間のフライトは好きなような嫌いなような。客室乗務員の何人かが私に中国語で話しかけてくれたけれど、私がポカンとしているのですぐに英語に切り替えてくれた。機内で観られる映画は少なく、「Loving Vincent」と「Green Book」を観た。でもどうしても飛行機の音がうるさいので、それほど集中はできなかった。少しだけ編集の仕事をしたけれど、パソコンの充電が切れてからは寝たり本を読んだり。

マドリードに到着し、バスとメトロを乗り継いで夜行バスのターミナル駅に向かった。ここで夕飯を食べようと思い、バス停の近くを散策するも、バーガーキングとケンタッキーフライドチキンくらいしか見つからない。知っているチェーン店で食べることに抵抗感があり、スーツケースの移動は大変だけれどもう少し歩くことにした。結局バスターミナルの逆側に小さなバルがあり、全然人がいなかったけれど、思い切って入ってみることにした。店員のお兄さんが私の拙いスペイン語をちゃんと聞いてくれて、ゆっくりとメニューについて説明してくれた。ツナとトマト、パプリカの入ったボカディージョというサンドイッチと、トルティーヤ・デ・パタタスというスペイン風オムレツを頼んだ。注文を終えた後は、テラス席で通りを見ながらぼんやりしていた。

目の前の人が純粋に私のことを聞こうとしてくれている実感は、なんとも言えない充足感や自信をもたらしてくれる。これは外国にいる時だけに起こることではないと思う。あなたの目の前にいる人に、ただ目を向け耳を傾ける。人種や性別、肩書きや印象などではなく、純粋にその人の存在だけを見る。このことがどれだけ難しくなっているか、私は最近実感することが多い。

作ってくれたボカディージョとトルティーヤはとてもとても大きく、単純に二食分の量だった。結局ボカディージョは食べ切れず、アルミホイルに包んでもらって鞄に入れた。

0時近くにバスに乗り、約7時間かけてバスク地方のサン・セバスチャンに向かう。車内で韓国人のおじさんが韓国語で話しかけてきた。再びきょとんとする私を見て、韓国人だと思ったと英語で説明してくれた。人によって、きっとどうとでも見えるのだろう。

仕事と友達に会うのが半分半分のヨーロッパ旅の始まり、正直どこまでが今日だったのか曖昧だ。

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