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完全無欠の差し込み

Mリーグ3日目 第2半荘(6戦目)
起家 小林剛(U-NEXTパイレーツ)
南家 松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家 二階堂亜樹(EX風林火山)
北家 佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)

EX風林火山は二階堂氏の連投。小林氏、佐々木氏も2度目の登板となる。渋谷ABEMASの松本吉弘氏は、第25期發王位などを獲得している最年少Mリーガーだ。26歳、若い! 囲碁や将棋の世界では、若い選手の判断のスピードや感性にベテランが追いやられる構図が時々見られるが、麻雀の場合はどうなのだろうか。

結果。
1位 松本吉弘 +80.9pt
2位 二階堂亜樹 +10pt
3位 小林剛 -17.4pt
4位 佐々木寿人 -73.5pt

最年少Mリーガー、現時点の最高得点でトップを奪取。これで渋谷ABEMASの3連勝だ。まだ6/80とはいえ、他チームとしては「これ以上走らせるわけにはいかない」という思いは持ち始めるころだろう。

東発 南家の松本氏。5順目。

二三四五赤六七八468⑥⑦⑧ ドラ⑥ ツモ一
ここから4切り。教科書に出てくるような「三色とイッツーの両天秤」となる。9順目、ここに八を引き、残念ながら三色は崩れるも、カン7の引っかけリーチ。捨牌は「⑨9西④4東4發一」。
ここに飛び込んだのが北家の佐々木氏。リーチを受けたタイミングで

北家 9順目
111345赤79⑤赤⑥ 北北北(ポン)

この形になってから何順かツモが空振りし、後手を引く形となる。ここにリーチを受けてドラまたぎの⑧を引き、9(現物)7(スジ)とカンチャン落としに進む。⑤を引いて首尾よくカン⑦テンパイを取れた……と思った瞬間の放縦だ。自分の満貫テンパイもあり、巡り合わせが悪いとしか言いようがない。

東2局。その佐々木氏が手なりで7順目に2000‐4000をツモ和了る。たくましい(笑)。そして東3局7順目の佐々木氏。

二二四七八八九白発発発中中 ドラ9

ここから上家の捨てた二をポン。二枚切れの白を切らずに八を捨て、小三元の可能性を追う。結果的に次順七⇒その次に六を引き、和了り逃しのカン五テンパイ。この選択が裏目となる。
その間に2-5で高め満貫のテンパイを組んだ親の二階堂からリーチ。赤5をツモって4000オールとなり、先行する。
さらに次局、完全に手なりで6000オール。二階堂氏、前回の半荘も含めてここまでの和了が「12000、12000、18000」。とんでもない打点力。素点で54300点とダントツになる。

今回の6000オールは、直前にリーチを売った松本氏が誘発したと言える。
北家7順目
23455赤79二四四⑤⑥⑦ ツモ8 ドラ六

ここから四を切ってカン三リーチし、直後の二階堂氏の追いかけリーチを誘発する。索子はイッツー目もあり幾らでも手がわりが期待できるので、ダマにする人の方が多いだろう。もし先行リーチがなければ、二階堂氏もダマ満貫のままで4000オールだったかも知れない。

しかしやはりMリーグ。そう簡単にはトップを取らせてくれない。

南2局、親番の松本氏がタンヤオ赤2の2000オール⇒さらに4順目

3445777六八3456 ツモ4 ドラ⑧

まさかの中膨れ4を頭にして、カン七待ちのタンヤオリーチ。親番特権のような先行リーチで他家の打牌を制限し、ツモ和了りを狙う。解説の瀬戸熊プロ「(東3局の)カン三リーチはかなり危なっかしかったと思うが、このリーチはあり」。ほぼ同感だが、自分が打っていたとしたらリーチをかけるかと考えると、これも迷ってしまう。12順目にツモ和了り、裏1で満貫4100オールに。トップ目の二階堂氏との点差を2800点まで詰める。2本場も先行リーチ⇒一人テンパイでついに逆転。その差200点!

次局。トップを争う二人が直接ぶつかりあう。
先行したのは二階堂氏。

南家 7順目 リーチ
七七七①①⑤⑥⑦34678 ドラ⑥

次順、追いついたのが松本氏。

東家 8順目 リーチ
三三四四五五赤八八23567 ドラ⑥

ここに飛び込んだのが、国士無双のイーシャンテンだった佐々木氏。雀頭候補の一と1から1を選び、親満12000に飛び込むことになる。攻撃的な佐々木氏ならではの打牌で箱下へ転落。「ヒサト棒」が登場する展開に。いずれにせよ、この和了りで勝負あり。

次局。ここまで一度も名前が出ていない小林氏が魅せてくれる。
五八八九1145赤79⑦發東 ドラ7
悪くはないが、平凡な配牌。これを丁寧に打ちまわして、二階堂氏のリーチを受けた後に
四五八八345赤567②③⑤ ツモ三 ドラ7
⑤切りで追いかけリーチ、二階堂氏より一発で①を打ち取る。裏ドラが乗って跳満。これで二階堂氏はトップよりも三着の方が近くなる。

この半荘、ここまで手牌に恵まれず、耐えに耐えてきた小林氏。この局も決して配牌とツモに恵まれたわけでもない中で、何度もあった分岐点を間違えずに進んで手を仕上げている。お見事でした。

そして南三局。この局の松本氏の判断に唸ってしまった。
リーチの小林氏に対して、流局直前でも強い牌を連打する親の二階堂氏。親の完全なテンパイ気配を見て、ダントツの松本氏があえてリーチに差し込みに行く。最後の打牌の際に親の現物の六で小林氏に振り込み、2600点の支出。親に連チャンされるよりは……という判断で、絵に描いたような見事な差し込みだった。これやられると、追う方の親番は凹むんだよね……。

オーラスは出和了り満貫で2着の小林氏がテンパイに一番乗りするも、なかなか条件を満たす手配にならずに局が進行。

123567④⑤赤⑥⑦⑧⑨北 ドラ4

北の地獄単騎でテンパイするなかで赤⑤を引き、リーチ行くかな……と思ったが、まだ自重。結果論だがリーチに行っていたら、2着目の二階堂氏より出て、裏1あれば逆転していた。ドラ引きか、ドラ待ちになる1引きを期待していたのか。その隙にトップ目の松本氏が和了りをモノにして終局。

翌日(金曜日)はABEMASが休みとはいえ、これで4戦3勝のABEMASを他のチームが確実に意識し始める。まだ少し早いが、チームの点数を意識して打ち方が変わっていく過程も、見逃さずに触れていきたい。

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