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引き際の潔さに惚れる

Mリーグ 10月9日2戦目(全体の12戦目)
起家 多井隆晴(渋谷ABEMAS)
南家 茅森早香(セガサミーフェニックス)
西家 佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家 朝倉康心(U-NEXTパイレーツ)

ここまであまりいいところがなかった茅森プロ、佐々木プロとしては、もちろんトップが欲しいところ。それでなくとも上位にいる2チームのどちらかにラスを引かせて、少しでも引きずりおろすことを考えたい。
(まだ全体の1割だから、そこまで意識していないかもしれないが)

結果。
1位 多井隆晴 +68.1pt
2位 朝倉康心 +18pt
3位 茅森早香 -15.3pt
4位 佐々木寿人 -70.8pt

ダントツのABEMASがまたトップ。2位のパイレーツもプラス組で、上下がさらに分かれる結果となった。

多井プロによる東発の2600オールからスタートして、一本場は四人の手がぶつかり合う形に。結果、北家の朝倉プロが二単騎の七対子を出和了る。
東2局は親のノーテン(二人テンパイ)で流れ、東3局。

始めにテンパイをしたのは親の茅森プロ。
六七八①③⑤⑤⑤(赤)⑧⑧⑧南南 ドラ5
リーチ赤1のカン②待ち。

そこに佐々木プロが追いかける。
一一一三四②③④⑥⑥666 ドラ5

この二人のリーチ合戦かと思いきや、西家の多井がもっとも高かった。

345(赤)77③④⑤⑥⑧五(赤)六七 ドラ5

ダマテンのままリーチに危険牌を2枚押して、佐々木プロから8000は8600を和了りきる。供卓のリーチ棒も3本拾い、リードを確たるものとする。

東4局も4順目にドラの東をポンして、2順後に四引きテンパイ。④と八のシャボ待ちとなり、捨牌は「①中⑨⑦9九北中」

三四五八八④④678 東東東(ポン) ドラ東

片割れの八は、⑦⑨落としの後の九切りでテンパイ気配であることを考えると出づらいが、ドラポンで否が応にも注目を集める捨牌が、見事に中引っかけとなっている。朝倉プロの手牌には⑤の暗刻もあったので、カンチャンで当たる可能性も低い。そう考えた朝倉プロから出た④で8000点。

南1局の親番でも白ポン、ペン三の2900点から始まり、1本場は朝倉プロのホンイツ仕掛けに萬子を止め、フリテンの二五萬待ちをツモ和了る。

2本場は茅森プロの先制リーチ
三五(赤)五六七⑤赤⑥⑦⑨⑨345 ドラ⑤
イーシャンテンに⑨引きの⑧切りリーチ。正直、広い受け入れの中で入り目としては最悪に近いが、ドラ3。うーん、これツモ切りはヌルすぎる?(たぶん自分もリーチしていた気がするが……)

このリーチに対して、すでに

二二③⑤⑦⑧發發東東南西中 ドラ⑤

から發を仕掛けていた多井プロが、1度二をスルーしたうえで東を仕掛けてイーシャンテンに。

二二③⑤⑦⑧7 東東東(ポン) 發發發(ポン) ドラ⑤

ここに最高の④を引いて7を勝負、ほどなくリーチの茅森プロが⑥をつかんで放銃。5800は6400+リーチ棒1本。二のポン2900点では行きたくないから、發を鳴けてはじめて勝負。すべての判断がうまくいく。

3本場も茅森プロのリーチ
三三三2235七八九⑦⑦⑦ ドラ5
これに対して多井プロは、
四五(赤)②④④⑤⑦⑨3466西 ドラ5
なんと面子が一つもない形から⑥チーと仕掛ける。このチーで茅森プロのツモ牌4を食い流したうえ、最終形が三六テンパイとなり、2900+900点の和了り。まさに「点棒の盾に守られた無敵モード」だ。

東3局より6連続和了り。これは小林プロの5連続和了りを抜いた、Mリーグ記録だそう。本当に多井プロがテンパイすると、すぐに誰かがアタリ牌を掴むか余らせる……という巡り合わせの連続だった。

とはいえ、この半荘は、残りのメンバーも十分に魅せてくれた。
南2局1本場、前局に4000オールをツモ和了って、朝倉プロを抜き微差の2着目に立った親番の茅森プロ。中盤から終盤に差し掛かった当たり、すでに箱下に転落している佐々木寿人プロから、絶好の先行リーチが入る。

一二三五(赤)六七八八⑤⑥⑦78 ドラ⑥

これに対して2万点そこそこの茅森プロの手牌がこちら。

一三五②②③④⑤666白白 ドラ⑥

上家の多井プロから現物の白が打ち出されたのを、一瞥もせずスルー。親番だからとりあえずポンテンを……とも考えず、すぐに⑦を引いて白落とし。さらにドラの⑥を佐々木プロがツモ切り、現物となったところで上家の多井から出た⑥をチー。タンヤオもしくはケイテンでの親連チャンを狙う。

※ちなみにこの場面、多井プロはドラの⑥以外に切る牌はなかったのかな……と考えてしまう。超ダンラスの佐々木プロに和了られるのは、それほど痛くない。それよりも2着目の親番だった茅森プロの連チャンの方が面倒くさかったはず。そう考えると、ドラを食わせたのは不用意だったのかな……とも感じた。白のトイツ落としを見れば回ったことは確かなので、後々で手づまりするくらいなら今、というつもりだったのかもしれないが。

結果、茅森プロは二を引いて「一二三五②③④666 567(チー)」のケイテンに。しかしそこに、佐々木プロのアタリ牌9を引いてくると、あっさりピンズの面子を落として撤退。その後、もう一度復活仕掛けるも再度のテンパイはできず、ノーテンで親流れとなった。

ここで箱下ラス目の佐々木プロのリーチは、安いはずがない。微差とはいえ2着目の状況から飛び込むと、親がなくなり、さらに二着争いから後退するのみならず、ラス転落まで現実味を帯びてくる。
そのリスクを負ってまで攻めるには、魅力がなさすぎる手だったのだろう。冷静に考えればわかるが、驚くのは茅森プロの決断の速さ。他のプロでも多少は逡巡する場面だと思うが、すべての判断をノータイムで行なっていたのがすごかった。

さらに南三局でも、西と一を仕掛けてトイトイ気配の多井に対して

7順目 三四五五④⑤⑥⑦⑦334中 ツモ二 ドラ8

中を切れば悪くないイーシャンテンでも、二をツモ切り。親の佐々木プロも仕掛けていたので、そこへのケアもあっただろうが、惜しげもないその決断は見事なものだった。実際の西家・多井プロの手牌はこちら。

4499中中1 西西西ポン 一一一ポン

中が実際に多井プロの手の内にあったわけだが、もはやそれは関係ない。リスクの高さを察知して手牌と天秤にかけ、撤退を即座に決断する能力の高さに驚くばかりだ。

この局は、一度は撤退に近いうち回しをしていた朝倉プロが、成り行きでまとまってきた手牌を逃さずに、場に出てきた4枚目の5をポン。

1345(赤)6789⑤⑤(赤) 555 ドラ8

カン2のイッツーで満貫テンパイとなり、ダンラス状態で親番維持のために下りられない佐々木プロから2を和了り。

そこから南4局、3本場まで積み上げて、あとひと和了りでダントツだった多井プロをまくれるところまで攻め込んだ、朝倉プロもお見事だった。その意味でも、南1局、少し行き過ぎくらいに攻めて、がっぽり稼いでいた多井プロの判断が良かったとも言える。オーラスは防戦一方だったけどね。

週後半の4戦についてのレビューは、週末かな。。
さすがにだんだんキツくなってきたけど、Mリーグ第1期は書き切れればいいなあと。

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