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圧倒的「ゼウスの選択」

Mリーグ4日目 第2半荘(8戦目)
起親 高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家 瀬戸熊直樹(チーム雷電)
西家 鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家 朝倉康心(U-NEXTパイレーツ)

チーム雷電の瀬戸熊氏のみ初登板。十段位の三連覇に加えて鳳凰位も3期獲得している歴戦のツワモノだ。これまで苦戦が続いているチーム雷電は、ここで立て直したいところ。

結果。
1位 鈴木たろう +79.7pt
2位 朝倉康心 +9.9pt
3位 高宮まり -25.5pt
4位 瀬戸熊直樹 ―64.1pt

チーム雷電、立て直すどころか、傷口を抉り出して塩を塗られた感じの箱ラス。面子の厳しさを考えると、まだ各チーム4~5戦した程度とはいえ、早くもチーム雷電は優勝争いから脱落しかけているイメージだ。

東発。西家の鈴木たろう氏がリーチをかけ、2000-4000をツモ和了り。

二二四四五五六六456②③ ツモ④ ドラ北

分岐点は5順目から。
一二三四五五六七②③45北 ツモ二 ドラ北
ここでドラを手放し、次順に四をツモって一と入れ替え。さらに次順、ここに六を持ってくる。

二二三四四五五六七②③45 ツモ六 ドラ北

ここで三⇒七と落とし、平和一盃口を確定(高めタンヤオ)。首尾よく6⇒④と引いて和了り切る。二五八の三面張を生かして②③切りや、面子優先で二切り(イーシャンテンの受け入れはこれが一番広い)もあったが、打点と最終形の良さも鑑みると、三七落としが一番バランスがいいとの判断か。

東二局は高宮氏が2000-4000のツモ和了り。トイトイ・ツモリ三暗刻で一をツモったが、本人の申告は三暗刻を忘れていたようで。後の南3局では朝倉氏が海底の位置に気づかず誤申告するし、やはり緊張感は半端ないようだ。

東三局は鈴木たろう氏が三局連続となるリーチを打ち、高めツモの6000オールを決める。

一二三122335赤67⑦⑦ ドラ南 ツモ1

イーシャンテンでドラの南を切り、浮かせた八と2のうち、2に3をくっつけてのリーチ。高め一盃口の1をツモって裏1。完璧な仕上がりだ。2と八は浮き牌として心もとないので、まだドラを切らないという人もいるだろうが、仮に2を落としていたら後悔しきれないレベルの裏目になっていた。

一本場では、高宮氏が瀬戸熊氏より8000+300点の和了り(メンピンドラ2)。ドラ⑥だったので、瀬戸熊氏的には「打っても安め」のつもりで、⑨を切ったと思われる。しかしテンパイ形は⑥⑥⑦⑧という形のドラ雀頭両面だったという悲劇。

東四局は、鈴木たろう氏がフリテンツモの700-1300。南入時点でトップ目の鈴木たろうが5万点越えとなる。
少し省略してオーラス。この南4局は一本場も含めて2局あったのだが、これがどちらもすごかった。

まずは平場。トップ目の鈴木たろう氏が、赤1の四七待ちリーチで決めに行く。捨て牌は「9②八三一」。これに対して親の朝倉氏は

一二二七七⑤⑥⑦35赤中中中 ツモ六 ドラ⑥

この手牌から六をツモ切り。「とりあえず現物の一」と打つ人が大半だろうが、朝倉氏は「七だけは絶対切らない」という条件下で、もっとも受け入れが広くなる打牌を選んだ。結果、4を引き入れて二七のシャンポンリーチ。高宮から二をロンで12000点。自分の「読み」と心中できる人は強い、と『アカギ』が何度も言っていたけど、その意味がわかる一打だった。

そして一本場。もっと驚きのことが起きる。
トップ目ながら朝倉氏に迫られている鈴木たろう氏が、4順目にテンパイ。

六七八九九九④⑤⑥⑦789 ドラ⑥
出和了りできないとはいえ、手がわりも数多いこのヤミテンは当然の選択。なんなら⑧でも引いてくれば高め三色まである(いらないけど)。ここにドラの⑥をツモ。

六七八九九九④⑤⑥⑦789 ツモ⑥ ドラ⑥

こんなん誰が打っても、九切りで⑤⑧待ちダマテンだろう。場合によっては後のことを考えて、六切りがあるかないか、くらい。しかし『ゼウスの選択』はまさかの⑦切りリーチ。自分の目から4枚見えている⑤⑧はあまりに悪いという判断のようだ。

そして一発目にドラの⑥をツモで3000‐6000(朝倉氏のカンが入ったので一発はなし)。驚くのはその1順のうちに、たろう氏も含めた3人が③⑥を山から持って来ていること。結果論とはいえ「山にいる」というたろう氏の判断は圧倒的に正しかったということだ。

後のインタビューで鈴木たろう氏本人が「微妙なラインだった」という⑦切り。この「微妙なライン」を拾えるか否かが、トッププロと普通のプロとの差なのかもしれない。

さらに、のちの検証によると、三位・四位の二人(高宮と瀬戸熊)が、こういうときでも順位を上げるべく、重い手を狙ってくるタイプだったこと、そして実際にそう打っているように見えたことが大きいようだ。「親以外がサッと和了って終局」を望めない時点で、鈴木たろう氏としても「自分で和了って決着を付ける」という形を狙わなければいけないと考えたと。平場の四七待ちリーチにも、同じことが言える。


解説の白鳥プロの口からも「ちょっと引くわ……」という声がこぼれた、この1局。直前の朝倉氏の六切りからの12000点も含め、本当にすごい南4局だった。世の中には、戦いたくない相手というのがいるものですね。

記念すべきMリーグ第1週目、チームごとのトータルは以下の通り。

1位 渋谷ABEMAS +207.6pt 消化試合数 4
2位 赤坂ドリブンズ +127.1pt 消化試合数 5
3位 U-NEXTパイレーツ +14.0pt 消化試合数 5
4位 EX風林火山 -59.9pt 消化試合数 4
5位 セガサミーフェニックス -79.5pt 消化試合数 2
6位 チーム雷電 -85.6pt 消化試合数 3
7位 KONAMI麻雀格闘倶楽部 ―123.7pt 消化試合数 5

チーム雷電が厳しいかと思ったら、KONAMIがさらに厳しかった。そして7チームで週8ゲームというアンバランスな構成なので、消化試合数にちょっと差が出てしまっているんですね。

正直、わずか8半荘ながら「実力上位」と思われるチームは上にいて、「厳しい」と思われていたチームが順当に下にいるイメージ。
とはいえ、まだ多くても5ゲーム、全体の1/16が終わった程度。明日からもまた、おもしろい試合を期待しています。

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