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リーチ超人の矜持

Mリーグ7日目第1試合(13試合目)
起家 村上淳(赤坂ドリブンズ)
南家 勝又健志(EX風林火山)
西家 近藤誠一(セガサミーフェニックス)
北家 黒沢咲(チーム雷電)

西家の近藤誠一プロのみMリーグ初戦。あとの面々はすでに2~3戦を経験しており、独特の緊張感からも脱却している状態のはず。「麻雀ジェントルマン」という異名のわりには、けっこう異例の手順を踏むこともある感覚派の近藤プロが、どんな戦いを見せてくれるのか。

結果。
1位 近藤誠一 +75.5pt
2位 村上淳 +5.9pt
3位 勝又健志 -28.6pt
4位 黒沢咲 ‐52.8pt

近藤プロが見事に初戦を飾る。苦しい戦いが続いていたセガサミーフェニックスに、一筋の光明が見えた。逆にチーム雷電、今回もラス。かなり苦しくなってきた。

東発。入場時にお守りを触っていた村上プロの出親だ。中盤、全員が形の悪くないイーシャンテンから、最初のテンパイは12順目の北家・黒沢プロ。

四五六①②③⑤⑤(赤)34789 ドラ⑧

捨牌は1西一⑨六①中白中南南東(リーチ)
なんと中張牌は六がひとつ切られているのみ。12順目なのに捨牌が強い。
イーシャンテンの道中で浮き牌の4に3をくっつけて、中のトイツ落とし。教科書通りのメンピン赤一のテンパイだ。

流局2順前、村上プロは以下の手牌をテンパイし、2を打つ。
二二二五(赤)③③⑥⑦⑧2345 ツモ七 ドラ⑧
親番だけに、気持ちはわかる。裏が乗らず3900点。

東2局は親を流された村上プロがリーチ。6-9索待ちでで1300‐2600をツモ和了る。続いて東3局、近藤の親番4順目。

一二三六八八④⑦⑧56中中 ツモ⑥ ドラ九

ここで六切り。中と八のシャボ待ち最終形となったときに、少しでも和了りやすくしたいという意図か。しかし次順に赤五を引いて来てツモ切り。正直、イタイでしょ。

さらに④に③をくっつけた際、次の形となる。

一二三八八④⑥⑦⑧56中中 ツモ③ ドラ九

ピンフに進むなら中トイツ落としがセオリー・・・の中で、八のトイツ落としを選択。
「どうせ両面待ちならばリーチをかけるので、平和にこだわる必要もない。それよりもターツのどちらかの牌を重ねて、中のポンテンにも構えられる形で親の連荘を狙う」という判断だろう。ここに②を引いてリーチ、47待ち。テンパイしていた村上プロが掴み、リーチのみの2000点。

東3局一本場。めげない「リーチ超人」村上プロからまたしてもリーチ。

二四五(赤)六七⑥⑦⑧⑨⑨555(赤) ドラ西
捨て牌は「九九白南9中⑤(リーチ)」。ツモ七で⑤切リーチなので、あまり好ましい最終形ではないが、赤赤があるので即リーチをかける。

これに対して、親の近藤プロは以下の手牌より、

三四①②③④④⑤(赤)⑥⑧667 ツモ西 ドラ西

ドラの西をツモ切り。まだリャンシャンテンだが安全牌は⑤(赤)のみ。中途半端に回すよりは、と考えたのか。これが功を奏し、2順で⑦二とツモって①切りリーチに踏み込む。③⑥⑨の3メンチャンだ。

二三四②③④④⑤(赤)⑥⑦⑧66 ドラ西

「これカッコよくないすか?」と解説の白鳥プロが少し興奮していた。
一発で村上プロが掴んで親満12000点+300点に。

二本場。親の近藤が連続となる5順目リーチ。勝又より3900点は4500点を和了。この時点で43500点となる。
次局も村上の先行リーチに、無筋の二2と強打。しかし次順に6を掴んでオリを選択。「無筋3枚目は流石に……」という感じなのだろうか。村上が赤赤のカン8をツモ和了って、2000‐4000の三本場を和了りきる。

東4局。先行リーチはトップ目の近藤プロ。

二三四①①⑥⑧234777 ドラ2

カン⑦のリーチドラ1。親もまだ面前で、いつ追いかけられるかわからない。トップ目としては、なかなかの冒険だ。
そこに本当に、親の黒沢プロから大物手の追いかけがくる。

3455(赤)6⑤⑥⑦三四五(赤)北北 ドラ2

入り目は4、リーチ宣言牌は3。絶好の二度受け解消リーチ。
このタイミングで、実は西家の勝又プロも索子の鳴きイッツー、カン④でテンパイしていた。

さぁ、誰が誰に打つ?と思ったのもつかの間、2つ仕掛けてテンパイを取った村上プロから放たれたのは、山には残っていなかった⑦。

結果は和了れたものの、正直、ここは近藤プロの勇み足だったように思う。巡り合わせで和了りをモノにしたとはいえ、まだ赤も1枚も見えず、自分はドラ1のカンチャン。⑦待ちが悪くない、と判断したのだろうが、手痛いしっぺ返しを喰らっても何も言えない選択だと思うのだが……。

南1局。この局の近藤プロはすごかった。
配牌は以下の通り。

一五五六六六七③1中中白北 ツモ五 ドラ四

この手がこんなテンパイに。

五五五六六六中中西西 七七七(ポン) ドラ四

捨て牌は「1③北白二⑤一八」。なかなかホンイツとは見抜けない。そんななかで大物手の気配を感じたのか、受け始めた勝又プロは流石だった。黒沢プロがドラドラのイーシャンテンから西を打って、12000点を放銃。

ここまで長々と書いてきたが、白眉だったのは南三局。
7順目、親番の近藤プロが上家の捨てた四に食いつく。

五五(赤)⑤⑦23567中 二三四(チー) ドラ⑦

イーシャンテンとはいえ、まだ片上がりも残る厳しい手牌……と思いきや、五を暗刻にして受け入れが一気に増える。

五五五(赤)⑤⑦23567 二三四(チー) ドラ⑦

ここに絶好のドラの⑦を重ねて、片和了りの4待ちとはいえ、親マンテンパイに。

五五五(赤)⑦⑦23567 二三四(チー) ドラ⑦

さらに、これでは終わらない。次順、もう1枚⑦を引き、フリテンの危険性がある片和了りも解消。3切りで2単騎に受ける。解説の白鳥プロは「どうします? 返りますか。怖いんだけど・・・」と苦笑い。

こんなのただの「バカヅキ」? 「白眉」だなんてバカバカしい?
たしかに私もそう思う。実はこの局、白眉だったのは近藤プロではない。

西家の村上プロ。13順目。

六七⑤⑥⑨⑨⑨555(赤)7北北 ツモ八 ドラ⑦

場に④が三枚切れとはいえ、ドラ⑦ツモを期待してリーチに行ってもいいところ。しかし村上プロは7を切り出しテンパイを取るものの、ダマテンを選択。次順、近藤プロの親満のアタリ牌、2を引かされる。

六七八⑤⑥⑨⑨⑨555(赤)北北 ツモ2 ドラ⑦

●親の近藤プロが四を仕掛けた後で、何度も手出しをしていること
●ダントツの近藤プロが仕掛けたからには、早いか高いか。仕掛けた後に何度も手出しをしていることで「早い」は否定され「高い」が残った。
●まだドラが場に一枚も見えていない。
●最後の手出し牌が3。

これだけの材料が揃ったことで、2を止めての北落としを選択する。正直、少し鳥肌が立った。テンパイ時に切ったワンチャンスの7は、ギリギリの勝負牌。直後に2を掴まされて、お手上げになったのだろう。実は、入場時に触っていたお守りのおかげ?(笑)

このファインプレーにより、村上プロが二着に粘り込んだ形だ。
振り込んでも振り込んでも、リーチをかけて復活しかたと思えば、ギリギリで踏みとどまってダマテンを選択して放銃回避する。

リーチを知り尽くした男、、村上プロの凄みを見た。

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