中国のアンケート調査は信頼できない?ちゃんと回答してくれないは本当か。
中国人のことをもっと知りたいけれど、アンケート調査を実施してもちゃんとした回答が得られないかもしれない、といった不安の声を耳にすることがあります。
中国消費者のことをきちんと理解することは、ビジネスの成長のためには必要不可欠な要素です。今回は中国でのアンケート調査の品質に対する懸念の声に対し、アンケートが本当に信頼できないものなのかについて書いていきたいと思います。
中国でのアンケート結果が信頼できない理由
中国人に対してアンケート調査は行いたい。だけど、ちゃんとした回答を得られないかもしれないからアンケートをするのは控えておこう、といった意見は多数存在します。なぜ、中国でのアンケート結果は信頼されずらいのでしょうか。ひとつずつその理由を見ていくことにしましょう。
1. 回答が適当
まずシンプルに考えられる理由としては、回答態度に関する問題点です。お小遣い稼ぎを目的としてアンケートに回答するため、多くのアンケートに回答することで、得られるインセンティブは増えます。そのため、適当にでも回答しておけば報酬が得られると考える人がいるため、結果として結果を信頼できなくなります。
2.ロボットによる回答
アンケート回答はボランティア活動ではないので、回答者はアンケートを回答するごとにインセンティブ(商品と交換できるポイントやギフト券)を獲得できます。しかし、アンケート1件当たりの獲得インセンティブは少額です。そのため、アンケート回答をするために会員登録をする際、一人の人や組織が多数のアカウントを作成し、アンケートをロボットに回答させるなどの不正回答のケースがあります。
現在では、アンケート会員の管理会社が厳重にチェックを行っており、IPアドレス確認をはじめとした各種対策を施していますので、昔ほどこの問題は気にしなくてよくなっています。
また、調査会社もあらかじめ用意しておいた、ひっかけ設問(矛盾が生じるように設計されたものなど)に該当する回答者を削除して再度回収するなどして回答品質担保を行っています。
3. そもそものアンケートの設計に問題がある
ここまでは、我々ではなかなかコントロールができない外部要因を見てきました。アンケート回答品質を下げる要因には内部的な要素もあることを忘れてはいけません。
もし皆さんがアンケート回答者だとして、50問もの質問をアンケートで聞かれたら、どのように感じるでしょうか。おそらく回答の途中で疲れてしまったり、注意力が散漫になり、後半に進むにつれて回答が適当になることは想像できないでしょうか?
このように、アンケートの長さやアンケートの内容(自由記述させるものが多いなど)は回答結果に大きな影響を与えてしまいます。アンケートを専門に扱う調査会社では設計に関するノウハウがたまっていますので、相談をしてみるとよいでしょう。
中国でアンケート調査をする上での注意点
中国でアンケート調査をする上で、注意しておくべき点についてお話しします。
1. オンライン調査は回答者属性に制限がある
中国においてもメジャーなアンケートの回収方法はインターネットを用いたオンラインアンケート調査です。郵送調査や会場に来てもらって回答を得るオフラインアンケート調査に比べ、圧倒的に低いコストで多くのサンプルを各地域から短期間で回答できます。
便利なオンラインアンケート調査ですが、回答者は20-49歳がメインになるという点に注意しなくてはなりません。また、地方都市の回答者は集めにくい傾向にあるため、比較的大都市圏での調査が必要となります。これらは主に、上記の属性以外のアンケートに協力してくれる人の登録が少ないことに起因します。
2. 事前調査と本調査を分けて実施できない
日本でオンラインアンケート調査を実施したことがある方は経験があるかもしれませんが、日本では事前調査と呼ばれる調査と本調査を別建ての調査として実施できます。
自分たちが回答をしてもらいたい人を呼集するために行うのが事前調査です。そして本調査とは自分たちが聞きたいことを聞きたい人に対して行う調査です。
日本が唯一特別な点はこの事前調査と本調査が分かれて実施できるため、本調査では事前調査の結果を見たうえで、本調査に呼ぶ対象者の条件を決めたり、サンプル数を決定することができます。
しかし、中国を含む海外では日本のようにはできないため、事前調査と本調査は一体で行われてしまいます。事前調査の結果を見て本調査のサンプル数を決めるなどができない点には注意が必要となります。
3. リクルーティングが難しいはずなのに集まると言われたら要注意
本調査で回答させたい人の条件がレアターゲットにもかかわらず、アンケート会社から集まるといわれたときは、いったん疑うようにしましょう。複数の会社に確認をしてみて、本当にそうなのかを確認するようにしてください。
例えば、60代で特定の健康系のアプリを週に3回以上使っている。などのような条件があった場合、これらの人をオンラインで回収することは難易度が高いはずです。理由は60代であるという点、特定のアプリとなっている点が挙げられます。
語弊がないように言うと、中国で集まらない対象者はいません。何が何でも集めようとすれば集まるるのが中国です。しかし、このとき、アンケート回答者は信頼ができないケースがほとんどです。どうにかこうにかして集めてきた、適当な回答者による回答である可能性が極めて高いからです。
※条件によりますので一概には言い切れません。
自分の肌感覚とアンケート会社の回答にギャップを感じたら、疑うようにしましょう。そして、その要因をしっかりと聞くことです。繰り返しますが、そのような場合は複数社に問い合わせをすることをお勧めします。
より良い回答を得るための設計
我々でコントロールできる回答品質向上施策としてアンケート設計があります。中国で本格的に調査を行おうとする場合はご自身でアンケートを作成された場合でも、必ずプロのアンケート設計者に目を通すようにしてもらってください。これだけで回答精度は格段に上がります。ここでは、アンケートを自分で作るときに注意すべき点として重要な点を3点程お伝えしたいと思います。
1. マトリクスを多用しない
マトリクス設問と呼ばれる以下のような設問タイプがあります。
上記の例でいうと、このタイプの設問は1問の中に、実は15個の設問があるということに気づいていただけますでしょうか。10問のアンケート調査でもこのタイプの設問が多数あれば回答者は疲れてしまい、回答をしたい気持ちになりません。このことは中国に限らず万国共通です。
2. これ知ってますか?「はいorいいえ」はNG
認知度を把握したい時や、商品やサービスの使用・利用経験を把握したい際、ストレートに「この商品を知っていますか」などの形で聞いてしまうと「はい」と回答する人が多い点にも注意が必要です。このような内容を聞きたいときには、自社の製品やサービスだけではなく、競合品も含めて知っているかどうかを聞くようにしましょう。上述のマトリクス形式の設問タイプや複数回答形式の設問を使用するとよいでしょう。
3. 自由回答を多く盛り込みすぎない
自由回答とはアンケート回答者に自由に思ったことなどを自分の言葉で書いてもらう形式の設問です。生の声を得やすいといった点からも人気の設問ですが、あまり多く盛り込むと、これもまた回答者が疲れてしまいます。自由回答一つあたりに求める文字記入量にもよるのですが、150文字程度の内容を記載してもらいたい場合は3個以内には収めておきたいところです。
いずれにしても、自分でも回答をしてみて、疲れてしまわないか、回答しにくい部分はないかを事前にチェックしておくことで設計は大きく変わりますので是非試してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では中国人のアンケート回答が信頼できないという点にフォーカスをしてきましたが、正しく運用すれば中国でのオンラインアンケート調査は信頼できるものになります。また、調査会社では多くの案件を実施しており、知見もあります。セルフで行おうとするのではなく、まずは調査会社に相談をしてみましょう。
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明路市场调查(上海)有限公司
営業経理 長谷川恵介
k_hasegawa@macromill.com
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