悪神と鉄 一話
夜更かしして眠りについた僕は、夢を見ていた。なぜだかそれを自覚していた。
夢の中で僕は、遺跡のようなところに立っていた。そこは、銀色に鋭く輝いていた。
その遺跡は、金属製の立方体で作られていた。道路も、橋も、今となっては雨ざらしの家屋の壁も、大小さまざまなブロックで作られていた。
それらの金属製のブロックは苔が生えていたり、植物が絡んでいたり、泥が付着して汚れていたり、年代を感じさせる特徴がいくつも見受けられた。しかし、どれ一つ錆付いていなかった。まるでその金属が自ら発光しているのかと思うほどに眩く輝いていた。
ーそれは、鉄。本来の鉄の姿だ。
頭の中に、声が響く。性別も、年齢も、声からは判別できない。その何者かはさらに語りかけて来る。
ーかつての人類は、鉄の本来の扱い方を知っていた。それらは錆びず、衰えず、その力を保っていた。だが今となってはどうだ。人類は、不向きな土地で採れた粗悪な鉄を、拙い加工技術で扱っている。
内容は奇妙なものだが、何故だかそれが正しいのだと確信してしまう。それは、何度も夢でこの話を聞いているせいなのか。
ーかつて、人類はその鍛冶の技を高め、栄華を極めていた。しかし、それは突然に終わりを迎える。厄災という脅威と、それらに対抗するための武器の出現が原因だ。
ー人々は脅威に対抗するために、武器をとった。はじめのうちは良かった。彼らの高度な鍛冶技術で作成された武器は、朽ちず、錆びず。それらの武器は人々の助けになった。しかし、日々高まる脅威に対して立ち向かう人数に対して、彼らの武器は少なすぎた。それも当然のこと。平穏な時代を生きた者たちは武器の作り方など知らないのだから。
ー次第に、鍛冶職人は槌を持つのをやめ、その手には粗悪な武器を握るようになった。職人たちが武器を作らずとも、世界には数々の武器が出現した。誰が作ったわけでもなく現れたそれらは、脅威に抗うために訪れた祝福かに思えた。
ーしかしそれらの脅威も、祝福もどちらも悪心の手によるものだった。悪心は自ら、脅威となる魔物と、それに対抗するための武器の数々を世界にまき散らしたのだ。
ー鍛冶屋は戦士となり、皆戦いの中でその命を落としていった。こうして世界から、かつての鍛冶技術は失われたのだった。
僕はそんな話を朧げに理解しながら、また布団の中のまどろみに身を委ねた。何度も見た夢。そして何度もそれを忘れた夢だ。きっと今回も、起きた時にはさっぱり忘れるのだろう。僕はうっすら開きかけた目を、再び瞑った。
翌朝目が覚めても、昨夜の夢が頭から離れなかった。夢の内容も、それを何度も忘れていたことも、はっきりと覚えている。そして、その話はきっと確かなものなのだと、僕の心が信じてしまっている。
・・・いやいや、そんなはずないじゃないか。きっと膨大に摂ってきた漫画やら、小説やら、ゲームのシナリオやらの影響に違いない。きっとこんな物語をどこかで読んで、心に残っていたのだろう。作品名を思い出せないが、こんなに心に残っているならば、是非とももう一度読みたい。
こういう時こそインターネットの出番だろう。
早速僕はストーリーの概要を投稿した。
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