森おじの大槌移住ライフ【2024年4月活動報告】
今月に入ってようやく春の暖かさを感じられる日が多くなり、それに釣られて様々な草花や動物たちも顔をのぞかせるようになってきた。
新年度を迎え、新しく物事がスタートする中で準備作業などで忙しくされている方々もいるとは思うが、心に余裕が無くなってきたなぁと感じた時は、何気なく道端に息づく生き物たちを観察してみてはどうだろう。
期待と高揚感の中で意気揚々と活動し始めているのは、どうやら私たち人間だけではないことに気づくかもしれない。
それでは今月の報告をどうぞ。
1.伐採作業@大槌町内
4/1〜12は大槌町内の現場にて伐採作業及び集材作業を行なった。
この現場は今年の2月から現場調査と打合せを進めてきたところで、依頼主と最終合意が取れたので、いよいよ4月初めから着手することになった。
この現場の最大の注意点としては、車道と建物に挟まれている敷地に沿って電線が走っているという点であった。
このような状況下で伐採作業をする場合は、安全性を考慮して対象エリアを管理している電力会社の営業所と、電線被覆や干渉部分の除去等の打ち合わせを重ねた上で作業することになる。
中には、私有地で個人的に伐採をするという方もいらっしゃると思うが、対象木の周辺に電線や光ケーブルが通っている際は、必ず所定の管理会社や営業所と打合せをしてから作業していただきたい。
下手をすると賠償責任問題になりかねないのでご注意を。
ちなみに、今回の現場ではありがたいことに隣地に広い敷地があり、作業エリアとしてお借りすることができた。
このように広い作業エリアが確保できる現場は非常に稀で、大概はもっと狭いエリアで作業しなければならず手間暇と時間がかかるのだが、今回はこの敷地があったおかげで非常に安全かつ効率的に作業をすることができた。
また、その敷地をお借りするお礼として、作業終わりには屋根に堆積した枝葉や泥などを清掃させていただいた。
今回の現場でも様々な人達のご理解とご協力をいただき、最後まで無事故無災害で作業を終えることができた。
伐採後の木材に関しては、依頼主のご厚意で地域のために利用してほしいということだったので、吉里吉里国が窓口となり、管理および配達などをさせていただくことになった。
現場には吉里吉里国の連絡先を書いた看板を設置してあるので、ご要望がある時はぜひそちらにご連絡ください。
2.いわて森林インストラクター総会@盛岡
4/13は岩手森林インストラクター会の観察会及び総会に参加させていただいた。
午前中は盛岡城後公園にて古地図と現況地図を見比べながら散策した。
歴史的観点から盛岡の地がどのような特徴を持ち町が形作られてきたのか、また時代の変遷によって敷地内の動植物がどのように変化していったのかをガイドしていただいた。
自然の中の森林だけでなく、今回のように人間の生活と密接に関係してきた動植物を歴史的観点から観察するというのも非常に面白い見方であると感じた。
午後からは場所を移してアイーナいわて県民情報センターの会議室にて総会と岩手大学農学部森林科の當山(とうやま)准教授による講義に参加させていただいた。
講義では演習林※での活動事例紹介やマテバシイのドングリの利用方法などコアな話題が多く盛り込まれており、非常に勉強になった反面改めて自分の知識量の少なさを実感させられた。
これから森林インストラクターとして恥ずかしくない仕事をしていくためにも、今回のような場を通じて貪欲に知識をアップデートしていかなければならないと感じた。
3.草刈り現場調査@大槌町内
4/17は町内で農業を営んでいるSさんが管理されている田畑に伺った。
今回は、シカやイノシシによる食害から農作物を守る電気柵を正常に機能させるための下草刈りするエリアを見せていただいた。
電気柵はその名の通り、一定間隔で通電することにより触れた獣を驚かせて近づかせないようにするための設備だが、その弱点の一つとして雑草などに線が触れてしまうと電気の逃げ道ができてしまいその威力は半減してしまう。
そうならないために、電気柵の下は草を短く刈り込んでおく必要がある。
これは一見単純そうに見えて、やってみると非常に手間暇と時間がかかる作業である。
なぜなら柵が立っている場所は必ずしも平坦とは限らず、自走式の草刈機ではポールの周りは刈ることができないため、どうしても最後は人間の手で丁寧に刈る必要があるからである。
昔から農家に伝わることわざには「上農は草を見ずして草を取る」※という言葉があるように、農業は草と野生動物と人間との戦いの歴史なのだということが分かる。
4.薪割り体験受け入れ@吉里吉里国
4/24は薪割り震災講話の受入れ対応をした。
今回の受入れは『東北フィールドスタディー』という名目で開催され、テーマは「東日本大震災の復興現場からリーダーのあり方を学ぶ」といったものであった。
大槌町での企業研修を2015年ごろから継続していただいている団体と、企業研修の受入をコーディネートしている一般社団法人おらが大槌夢広場とがコラボして今回の企画が実現している。
吉里吉里国の作業場では創設の原点となる薪割りを体験して汗をかいてもらった後、創立者である芳賀(はが)前理事長の講話にて、逆境を力に変えて前に進むための精神や考え方などについて学んでいただいた。
5.大槌町特別支援員研修会@大槌町役場会議室
4/26は大槌町教育委員会主催の特別支援員研修会に参加させていただいた。
東京大学病院精神神経科の医師である佐藤駿一氏に「障がいの特性の理解と支援」についてご講義いただいた。
今回の研修会のねらいは「小学校及び義務教育学校の特別支援教育支援員を対象に、障がい特性の理解や障がい特性を持つ児童生徒に対する支援について学び、支援員の質の向上を図る」というものであった。
色々と学びの多い講義内容だったが、その中でも特に自分的に納得できた内容は「病気と障がいへの理解は明確に分けなければならない」ということだった。
「病気には治療が必要になってくるが、障がいには環境調整という考え方が大切になってくる」という内容である。
これはどういうことかというと、病気とはホルモン異常や染色体疾患など、はっきりとした原因があり、治療法があるものに関しては対処療法が存在するのだが、障がいの有無が認知されるかどうかは、身の回りの環境によって大きく左右されるということである。
例えば、運動神経がとても良いが、落ち着きがなく感情的で時には暴力的な子がいたとする。
今の世の中では「悪い子」だとか「少し障がい特性が強い子」などとレッテルを貼られてしまうことが多いが、もっと昔の狩猟時代であれば「獲物を獲る能力が高い優秀な子」として認知されたであろうという話である。
これは極端な例だと思われるかもしれないが、少なからず今の世の社会環境にそぐわないがために、生きづらい状態になってしまっている子が一定数存在することは間違い無いだろう。
特に現代の日本の学校教育の中では、集団内での協調性や親和性というものが最も重要視される傾向にある。
運動会でも順位をつけず、皆んなでゴールするのが良いとされる学校もある時代なのである。
そんな中で、突出した才能や突飛な考え、行動をする子がいれば、たちまち障がい特性があるとして認知され、そのレッテルを貼られてしまうのは目に見えて分かりやすい構図と言える。
では、治療法のない障がい特性を持った子どもたちに対して、支援者側の立場としてはどのように対処したら良いのだろうか。
それはその子たちの特性をよく理解した上で、身の回りの環境の方を調整することに考え方の重点を置くということである。
つまり、その子たち自身を環境に合うように薬や教育によって無理矢理変えるのではなく、その子たちに合うように支援者側が環境を少しずつ変えてあげるのである。
ただし、これは言うほど簡単なことではないということも佐藤講師は同時に仰っていた。
支援者側も一人の人間であり、それぞれの社会的立場や決まりの中で生きている。
上手くいかなければ、どうしても感情的になってしまったり、時には無関心になってしまうこともあるかもしれない。
しかし、そんな時は他の人に相談したり頼ったりして自分の中に余裕を持つことも大切であると言っていた。
都会ではなかなか難しくても、大槌町というちょうど良いサイズ感のコミュニティであればそれができるのではないだろうか。
みんなの顔が見える距離感、地域性がここにはある。
地域全体で支える仕組みができれば、この上なく生きやすい環境の地域になると思うのである。
今、大槌町教育委員会ではその想いを形にしようと「けやき共育」という取り組みを始めている。
これは、「大槌町の0歳から18歳までの全ての子どもたちを対象に、特別支援教育の視点で支援することで目指す子どもの姿(自立、協働、想像)を実現し、誰一人取り残さない学びを保障しよう」というものである。
実際に、令和6年度に開設された「けやきルーム」という教育支援センターを大槌町子ども教育センターOLAIにて運営している。
ここでは、何らかの理由で登校できない児童生徒に対して、学校とは異なった環境の中で学びを得ることを目的としている。
この取り組みの協力組織の一つとして、吉里吉里国も参加しており、野外体験学習や創作活動の補助などを予定している。
子どもたちの明るい未来のために、そしていずれはその子たちが地域の有能な人材として成長してくれることを期待して、今私たち大人ができることをそれぞれが真剣に考え、知恵を出し合い、行動に移していくことが大切なのだと思う。
6.製材・木工品等製作@吉里吉里国
普段、伐木案件などがない時は吉里吉里国の作業場で製材や木工品製作などを行なっている。
吉里吉里国の働き方の傾向として、作業のある時は短期集中でガッツリ作業するが、その他に余裕のある時は自分のやりたいことや技術力の向上に時間を使わせていただいている。これは私たちのような人間にとっては非常に有り難い。
仕事も遊びもやはりメリハリが大切だと思う。
今月はゴールデンウィーク前に少し余裕があったので、前々からやろうと思っていた吉里吉里国の看板作りや家具製作などを行なっていた。
将来的にここで得た木工の知識や遊びの技術が仕事に繋がれば最高だと思っているので、遊ぶことにも全力で取り組むようにしている。
7.個人的活動『生き物図鑑』
最後は恒例となっている生き物たちの紹介をして今月の報告を終えようと思う。
暖かくなってきたからなのか、今月はお届けしたい生き物たちが多くなっている。
最初の方は植物系だが後ろにいくにつれて虫や爬虫類などが増えてくるので、苦手な方は三枚目の写真ぐらいでご退出願いたい。
それでは、また来月の報告をお楽しみに。
グッドバイ👋
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