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インク沼に溺れている理由

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
ここ半年ほど本業があまりにも忙しかったのもあり、
記事が書きやすく見た目も楽しい「インクの世界」をご紹介する機会が増えました。

彩り豊かなインクの沼に溺れてる理由を、改めて振り返ってみましょう。

特殊な存在

自分は主に美術の世界に棲息しているので、いろんな画材に触れる機会があるのですが、「筆記用インク」って、ちょっと特殊な存在なんですよね。

筆記用のカラーインクは、万年筆などの筆記具に入れて使う前提で、
「単独で使う」ように考えられています。
違うメーカー、シリーズのインクを混ぜると、化学変化を起こして色や成分が変わったり、詰まりの原因になったりと、ブレンドしての利用を推奨されていません。
混色用のシリーズが別途用意されている事からも分かりますね。

そのため混ぜて使うことが多い「画材」として見ると、使いにくい印象ではあります。

どこに惹かれるのか

そんな自分が、なぜ筆記用カラーインクに惹かれるのかと言うと。

やはり、その色・色名に垣間見える「物語性」に尽きます。

端的にその色の名前を付けている画材に比べて、
インクの名前って情緒豊かな感じがするんですよね。

小学校時代に使っていた水彩絵の具は「あか」「あお」といった名前がついていましたし、
手元にあるアクリル絵の具も「ホワイト」とか「パーマネントイエロー」「ウルトラマリン」のような「色名」がそのまま付けられています。

でも、インクだとボトルのラベルに書かれた色名は

「若鶯、夜桜、時雨、狐日和…」(SAILOR)
「花筏、翠玉、竹林、冬将軍…」(PILOT)
「NOSTALGIC HONEY、BRILLIANT MINT、SMOKY NAVY…」(寺西化学工業)
「桃太郎、瀬戸内シーグリーン、牛窓オリーブ…」(うさぎや)

というような、風景までギュッと詰め込んだような名前がつけられています。

単独色だからこその世界観

その情緒に満ちた名前と、実際に書いた時の色合い。
なぜその名前が付いたのか、なぜこの名前でその色なのか。
そういうのを想像させてくれるところが、インクに溺れる最大の理由なのかなと。

絵の具のチューブに想いを馳せることはありませんが、
インクのガラス瓶には心に響く何かがあります。

混ぜないからこそ見える色の世界。
共感できるものもあれば、自分の感性にはなかったものもあって、
色彩の捉え方を豊かにしてくれる存在。
だからこそ、ぐっと引き込まれてしまったのかもしれませんね。

その他の惹かれる点

また時間経過や使う筆記具、紙などで表情が変わるのも特徴ですね。
色そのものが変わるものもあれば、フラッシュが出るもの、濃淡で表情がガラっと変わるものも。

画材は基本的に大きく色合いが揺らめくようなことはありません。
(それだと正確な作品創りができなくなってしまいます)

でもインクは描くではなく「書く」ことに特化しているので、
その揺らぎや遊びも、心が弾む表現になります。
そこも画材にはない楽しみ方ができるポイントですね。

あとは単純に「ボトルのデザイン」がコレクション性の高いものであることが多いのも挙げられますね。
可愛い見た目のものが多く、インテリアとして飾っておけるのも良いところです。

底が見えない

ということで、自分が感じているインク沼の魅力を語ってみました。
大手メーカーさんから出ているもの、外国のもの、日本各地のご当地インク、イベントでの限定色。
手元に100色以上のインクがありますが、インクの紹介本を紐解くだけでも何千色とある世界では、まだまだ氷山の一角。
底が見えません。

浮上したり、沈んだりを繰り返しながら、
延々と辿り着かない海底を目指して進んでいくんだろうなぁと感じています。

底に向かうまでにあとどれくらいの色に出逢えるのか。
筆記具や便箋とのペアリングを楽しみながら、これからも沼に溺れて行こうと思います。

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