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消えた「はだ色」

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
今日は、絵の具セットに入っていたあの色を考えてみます。

絵の具セットにあった色

自分が小さい頃は、色鉛筆や水彩絵の具の中に「はだ色」という、明るいオレンジ色が入っていました。
今も同じ色はありますが「うすだいだい色」や「ペールオレンジ」と改名されています。

2000年初頭にかけて、名称の変更が行われてきたようです。
(2000年に色鉛筆、2007年にクレヨンと絵の具が変更されました)
一時SNSでも話題になったことがありますよね。
子どもの頃に使う画材は、成長につれて使わなくなってくるので、
自分もその話を聞くまで、ぶっちゃけ知りませんでした。

メーカーがグローバル化したり、
様々な人種の方々と触れ合う機会が増えたことで、
「この薄いオレンジだけが『はだ色』ではない」となったのは、必然なのかなと思います。

日本は特殊な文化圏

と言いつつも、日本で生まれ育った私たちは、そこまで「はだ色」という表現に違和感って感じていなかったのではないでしょうか。

島国という立地で、日本語もこの国だけでしか使われないし、
昔は「ほとんど日本人しかいない」ような人種構成。
はだ色の違いといえば「日に焼けているかどうか」くらいの、多様性が少ない状況だったので、「はだ色」は普通に受け入れられてきたのだと思います。

それは悪いことではなくて、ただただ「多くの肌の色があることを、昔は考える必要がなかった。そういうものだった」ということですね。
今の常識で、昔をはかっても意味がないと自分は考えています。

スキンカラーのセットもあります

今「はだ色」はというと、様々な人の肌に合わせたスキンカラーのセットになっています。
絵文字もいくつかの肌色が用意されて選べますし、
色鉛筆やクレヨンなども、カラーセットを通して、いろんな「はだ色」があることを学べます。

薄いピンクも黄みが強いオレンジも濃い目の茶色も、分け隔てなく並んでいて、その姿はこれからの「世界の在り方」を示す形の一つなのかなと感じます。

日本ではたまたま画一的だっただけですが、
様々な色があって当たり前で、何もおかしいことはない。等しく同じ位置にあるもの。という認識が、育まれていくといいですね。

余談

ちなみに、日本の伝統色において「肌色」は変わらず存在します。
宍色ししいろ」「肉色」から転じて生まれた色名だとも。
人形の肌に使う色彩で、実際の肌色よりは、明るめの色調です。
今でいう「透明感のある素肌」的な色合いなんでしょうか。
実際の美しさはさておき、「憧れを色にした」と考えれば、肌に対する各時代の流れが分かる面白い色だなと感じます。

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