見出し画像

パリオリンピック目前ですね。で、何回目のオリンピック選考なんだろう…って振り返ると。パリオリンピック・トラック自転車競技代表候補選手発表記者会見を取材して。

競輪選手がオリンピックに出場できるようになったのは1996年のアトランタオリンピックから。
その時は全プロ自転車競技大会がオリンピック選考会を兼ねて開かれて、伝説が生まれたわけですが、もう28年前ですか。
いわき平競輪場で行われた全プロ自転車競技大会の1㎞TTで、その直前まで神山雄一郎が選考されるところをタイムでひっくり返したのが十文字貴信でした。
これは完全に実力勝負で決着し、その時のいわき平競輪場に詰め掛けていた関係者の興奮は凄かったものがありました。
アトランタオリンピックでは十文字が1㎞TTで銅メダルを獲得。その後も選手村での出来事や何やらで、当時まだあった特別競輪の前夜祭に今でいうワイドショーなレポーター達、TVクルーが大挙して押しかけ盛り上がった(いまでいえばあまりにもゲスくて盛り下がった?)のを覚えています。

そこから、トラック日本チームは試行錯誤、紆余曲折しながら、今にいたり、2024年パリオリンピックはフルエントリー一歩手前までのオリンピック種目枠、選手枠を自転車トラック競技で獲得できたのですが、よくここまできたなと改めて思う次第です。
特に中距離は不遇な時代でした。専任コーチもいず、選手がほぼ自力で大会に出場するなんていまを見ていたら考えられないでしょう。
ここまで到達できたのは関係者達のオリンピックに懸ける熱い思いがあったからこそやっと達成できたのだと思います。
あとはオリンピックでメダルラッシュ!となればいいだけですが、こればっかりはね。運、不運のこともあるから何とも言えませんが、オリンピックに出場できた選手たちには、レース当日に出来得る限りのベストパフォーマンスを出して悔いなくオリンピックを楽しんでほしいと思います。

また、今回の選考に不満を持つ選手はいると思います。
過去にも大きく不満を持った選手たちを数多く見てきました。しかし、今回の選考は、今まで一番、目的がある選考になったと思います。
その目的は

「メダルを狙う」


その一点です。
では過去はどうだったのか?
アトランタ、シドニー、アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロ、東京と7大会を見てきましたが、メダルを狙う選考では無くて、出場を目的とした選考だったと取材をしている中で感じました。選考大会での成績を見ていれば、確実にメダルを狙える順位は取れず、オリンピックに出場できればよし、更に奇跡的にメダルが獲れればラッキー。
確実にメダルを狙えるとして、選手を選考できたなんて、一つもなかった。いや?東京は確実性が上がったかな?
過去のオリンピックではメダルは獲れていますが、狙って獲ったかというとそうではなく「運が良かった」だけでしょう。
では今回のパリオリンピックはというと、今までとは全く違い、メダル獲得が大きく期待できるチーム、代表選手となったと言い切れます。

各々の選手をみると

世界選手権、ネイションズカップの成績を積み重ね、日本トラックチームが世界のトラック強豪国になったのは紛れもない事実です。その実績をもってパリオリンピックに臨むのですからメダルが獲れて当然でしょう。特に、太田海也、佐藤水菜には大きな期待がかかります。

太田海也
佐藤水菜

そして、メダルの期待はそれだけかというと、そうではなく、急成長を遂げている内野艶和、垣田真穂の女子マディソン、窪木一茂、橋本英也の男子マディソン、窪木の男子オムニアムも高確率でメダルの可能性があります。

窪木はべらぼうに強い


特に窪木は、どういうわけか今べらぼうに強い。鬼神のごとく強い。それだけ自分に課しているものがあるのだと思います。
男子ケイリンの中野慎詞は狙って獲るために動けるところが素晴らしい。そしてクレバーなレースが出来るのでケイリン向きな選手だと思います。
女子オムニアムの梶原悠未の凄いところはレース勘だと思います。勝負できる位置に必ずいる。これは日本随一だと思います。あとはパワーと持久力が世界トップとオリンピック時に並んでいればメダルは確実。
男子チームスプリントに関しては出たとこ勝負。オリンピック当日、予選でかみ合えばメダルが大きく期待できると思います。当日までにちょっとづつを埋めていくトレーニングなんでしょうね。

内野艶和、垣田真帆のマディソンペア
橋本英也、窪木一茂のマディソンペア
男子オムニアムの窪木一茂
男子ケイリン 男子チームパーシュート 中野慎詞
オムニアムで優勝の梶原悠未と2位の内野艶和
男子チームスプリント 左から小原佑太、長迫吉拓、太田海也
男子スプリント 小原佑太

自転車競技界では物議を醸している男子チームパーシュートは、メダル獲得の一点においては、なくはないけど低いことには違いない現実がある。一気に5秒近く現行チームで縮められるかというと、難しいでしょう。
ゆえにチームパーシュートの枠を使ったのだと思います。
女子チームパーシュートもオリンピックにおいては男子と同じでしょう。がしかし、今回2024年のアジア選で絶対に負けられなかった中国と1-2位決勝では14秒と感動モノのタイムをたたき出し勝利。この一戦が女子チームパーシュートの枠をつかみ取れた勝因でした。この気合がオリンピックの時に発揮できれば、上位には食い込めるはず。頑張ってほしいですね。

女子チームパーシュート 左から内野艶和 池田瑞紀 梶原悠未 垣田真穂


とはいえ、パリオリンピックの出場枠は選手が勝ち取ったもの。この決定を下した選考メンバーは、共同記者発表の時に

「自分たちに決定の責任がある。責任は自分たちが取るから決定に選手たちは納得してオリンピックに臨んでほしい」


と言い切って欲しかった。
枠取りばかりさせて出場できないとはどういうこと?という自転車競技ファンの疑問に日本自転車競技連盟は誠意をもって応えてほしかったですね。
オリンピック出場はその選手の人生も変える場合が多々あることは否めない。メダル至上主義だけではなく、努力が報われる出場は我々の心情にグッとくるものがあり、そこがオリンピックの見どころでもあります。
その心情の機微にふれてもらえれば次を目指す選手たちがより多く集まるだろうしコーチ陣、日本自転車競技連盟のトラック部会の方針にも理解をしてもらえると思うのだがいかがだろうか。

自転車競技は実力でメダルを勝ち獲れるものでもあるが、

オリンピックには何とも言えない運、不運もある


アトランタオリンピックの1㎞TTは優勝候補のシェーン・ケリーがスタート直後にペダルが外れ、その瞬間に十文字の銅メダルが決定。
アテネオリンピックの男子チームスプリントの日本銀メダルは奇跡の神風が吹いた。
北京オリンピックでも男子ケイリンで永井清史が3位銅メダルを獲得しました。この時も神風が吹いていた。

東京オリンピックの女子個人ロードサイクリングの優勝選手をどのように感じるか、また、男子スプリントの新田祐大の予選落ちのようなこともある。
男子ケイリンで期待が大きく掛かっていた脇本雄太も1-6位決勝は進出できなかった。
オリンピックでメダルを獲るには、実力だけではないもう一つの何かがある者が獲ると、見ていると痛切に感じます。

競輪でいう順番を実力でつかみ取りに行く

競輪で最近は言わなくなったと思いますが、順番が来たから先行という言葉があります。ところが今や順番なんて待っていたら来るわけがない。
如何に仕掛けられるかが大きなポイントとなっています。競技も同じで待っていたら置いていかれます。如何にうまく一撃を決められるポジションを取れるかが重大になってきます。それは短、中同じでしょう。
自分たちの実力を最大限に発揮するために実力で順番を取りに行ってほしいですし、それが出来ればメダルは確実。しかし、オリンピック、特に決勝はそんな実力の持ち主ばかりが集うのですから、本当に小さな差が勝敗を決めます。出場する選手には悔いなくオリンピックを終えて帰ってきてほしいです。

ところで…

オリンピックメンバーは決まりましたが、考えさせられることが起きています。
男子中距離選手はロードサイクリングに出場していますが、短距離選手はまったく、走りません。
今後の課題として、選手を露出するのであれば、短距離選手は、直前の全プロ大会にエキシビジョンレースを組み込み、走るべきではないでしょうか?
中距離選手だって走ってもいい。
いくらポスターなどで露出したところでファンの方々には関心が集まらないでしょう。
競輪界は今一度、なんでトラック自転車競技に補助金を出しているのか。HPJC杯をやっているのか考えたほうが良いのではないかと思います。
今だからこそ、積極的に選手の露出を増やさなくてどうするのでしょうか?
競輪競走を走るというのではなく、全プロ大会などでお披露目していくパフォーマンスが必要でしょう。
ファンがいなければたとえパリオリンピックでメダルを獲得しても一過性のファンが増えるだけで終わってしまうのは、目に見えているはず。
ロスアンゼルスオリンピックに向かっては、大幅に走る機会を増やし大勢のファンの前で走る愛される選手を目指してもらいたいですね。

使用するメインピストレーサー


V-IZU

約2000万円のバイクであるブイイズ。関係者はビーズと読んでほしいらしいのだが、記者発表の時にブイイズになってしまった。
さて、このバイクは重たい。発表でもあったように、完成車で9㎏以上ある。UCI規定では最低重量6.8㎏であるから、相当重いのがわかるでしょう。
という事は、タイム系のレースには相当不利になる。
事実、ネイションズカップ・ミルトンで男子チームパーシュートには使われていません。
ところが、女子チームパーシュートでは使われています。女子の方が空力を考えたほうが速いからなのでしょうか。
オリンピック本番でどのバイクを使うのかも楽しみの一つとなるでしょう。
写真はタイプ2ですから、もしかするとタイプ1の改良版が使われるかもしれません。
ドイツがFESを使っていますが、短距離用、中距離用とフレームが違います。オリンピックまでにバランスや堅さ重さをV-IZUは変えてくるのかどうかも見どころですね。
ちなみにこのバイクは競輪の補助で開発されたもの。1億5千万円がこのバイクの開発にかかっています。これでメダルが獲れないとなると…。
まあオリンピックメダルは運不運がありますからね。

さて、パリオリンピックの自転車競技のロード、MTB、BMXレーシングの代表候補選手が発表されました。
他の種目もフルで枠が獲れるように、頑張って行きたいですね。
                     




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?