この世で一番おおいゲーム脳

漫画脳、ゲーム脳と呼ばれる奇病というか、現代病というか、迷信がある。
人生にリセットボタンがあると思ったり、前頭葉が活動を停止したりするらしいのだが、それは真偽含め些末な問題である。
ゲーム脳の最も怖い症状は「クリアしなければいけない」という思い込みだ。

昨今の漫画やゲームでは、人がよく死ぬ。
肉体的にも死ぬし、精神が破壊されたり、プライドが折られて再起不能になったりする。
そして、傷を負いながらも勝者となったものは美談となり、正義になったり、英雄になったりする。
それらの娯楽に触れていると、人間はいつしか短期的な試合で勝利することや、わかりやすいボスを攻略すること、ノーコンティニューやタイムアタックで良い結果をだすことこそが正解であると思い込んでしまう。

しかし、現実では負けることや、失敗することによって死ぬ人は少ない。
一般的な日本人が日常生活で起きる範囲の勝負事に負けて、それが直接の死因となる事なんて駅のホームで酔っ払いと殴り合いになった時くらいしかないだろう。
仕事でやらかそうが、恋愛でやらかそうが、家族が離散し露頭に迷おうが、その瞬間に急にHPがゼロになってゲームオーバーになることは無い。
つまるところ、本人の気持ちとして困ることなどがあったとしても基本的に現実では、負けようが、失敗しようが別に良いのだ。
これは大きなセーフティネットである。
社会のセーフティネットがまともに機能していないのは国のせいかもしれないが、自分を守る為の自分のセーフティネットが機能していないのは、おおよそそういったゲーム脳的な思い込みである。

目先の勝ち負けにこだわることは一時的なブーストにはなるだろう。
それまで無くすと無気力になってしまう人も居るかもしれない。

しかし、人生という道のりは残念なことにそれなりに長い。
長い距離を走るためには、ブーストをかけていない時間も止まらずにダラダラとでも前に向かって進む必要がある。
そして不思議なことに、そういったダラダラとしている時にこそ、解決策が浮かぶ事もある。
人生は自分で断ち切らなければ、ゲームオーバーとなることは少ない。
タイムアップはあるかもしれないが、ゲームと比べればいくらでも時間はある。焦ってやって結果が出るという人も居るだろうが、一般的には焦らずにやったほうが良い物が出来るのが普通だと思う。
「今」成功することや、勝利することに拘らなければ、「いつか」なにかで勝つ事が出来る。
その時まで生き、その時まで考えることが大事だ。

「自分は、ゲームや漫画に影響を受けている」と自覚できる人は少ないかもしれない。
それは、思想や行動などキャラクターの模倣をイメージしているからだ。
しかし、現代人の多くは、実はゲームや漫画のルールのルールの方に影響されている。
その最もわかりやすいのはジャンプの三要素だろう。努力、友情、勝利。
しかし、人間は突き詰めれば生き物である。生きる方法が社会を重視しているというだけで、本来ならば他の動物同様に産まれ、生き、死ぬことだけがやるべきことだ。
あなたにとって人生での目標はなんですか?
今の暮らしを続けたい人は、すでに自分の大事なものを知っている人だ。
愛する人たちを大事にしたいという人は、思いやりのある尊い人だ。
生きる以外に無いのであれば、生き物としてなんと誠実なことだろう。
成功や、出世や、勝利などの目標を望むのは、それを望むことが好きな人だけで良いのだ。
何もそれが苦手な人まで、その終わりの無い戦いに身を投じる必要はない。

#エッセイ #ゲーム脳 #大事なもの #焦り #生きる目標  

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