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『同一性と個体』をよりよく理解するための哲学者リスト(横路 佳幸)

哲学において最も基本的で重要な概念「同一性」を解明する『同一性と個体――種別概念に基づく統一理論に向けて』を刊行しました。刊行にあたり、著者・横路 佳幸氏に本書の理解を深めるための哲学者リストを寄稿していただきました。ぜひ本書とあわせてお読みください。

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 前回の記事では、同一性とそれが生み出す問題を論じて、本書の中身を少しだけ紹介しました。続編となるこの記事でも本書の中身紹介を続けてもよかったのですが、なんとなく、美辞麗句を並び立てただけのありふれた「販促記事」になりそうな気がして、やめました。
 そこでなにかいいネタはないかと考えあぐねた結果、この後編記事は、せっかくなので(?)「本書をよりよく理解するための哲学者リスト」にしました。このリストは、本書に登場する重要な哲学者を20名ピックアップして、箇条書きで簡単な人物紹介をおこなうものです。色々思うところがありますが、言い訳や御託は末尾の注に回すことにして 、さっそくリストに入っていきましょう。ちなみに、順序はあいうえお順で、肩書は2021年8月現在のものです。また、名前の横にある【1, 2】は本書の第1章と第2章に登場することを表します。

1. ピーター・ヴァン・インワーゲン(Peter van Inwagen; 1942~)【1, 2】

現在ノートルダム大学名誉教授。行為論や形而上学、メタ哲学、宗教哲学において、時代を牽引する重要な成果を数多く残した。著名な哲学者ティモシー・ウィリアムソンの言葉を借りれば、1970年代から20世紀終わりにかけて「最もダイナミックで、最も正確で、最も創造性あふれる業績」を挙げた形而上学者の一人。同じく形而上学者である後述のロウとは、同意し合える部分を探す方が難しいくらいまったく相いれない哲学体系を持ち、互いの文章を引くことすら稀だった。しかし私生活では家族ぐるみの親交があり、二人は特別な友情で結ばれていたようだ。ロウの急逝後ヴァン・インワーゲンは、「もし私が内気でさえなければ、あなたと話せたことはいまでも大きな意味を持っていると伝えられたのに」と吐露している。

主な邦訳
「そもそもなぜ何かがあるのか」(『現代形而上学論文集』、柏端達也・青山拓央・谷川卓(編訳)、勁草書房、2006年所収)
「自由意志と決定論の両立不可能性」(『自由と行為の哲学』、門脇俊介・野矢茂樹(編・監修)、春秋社、2010年所収)

2. デイヴィッド・ウィギンズ(David Wiggins; 1933~)【1, 2, 3, 4, 5】

現在オックスフォード大学名誉教授。形而上学や哲学的論理学のほか、倫理学、言語哲学、行為論において独創的な業績を残した。哲学者柏端達也による「現代哲学の見取り図」では、「オックスフォードの文章の難しい人たち」の一人に数えられているほか、並外れて長い脚注を書く(悪?)癖の持ち主としても知られる。哲学を志したのは大学時代とのことだが、それまでは本気で画家を目指しており、一時期ロンドン大学の名門スレード美術学校に行こうとしたほど。教え子には、同じく難解な散文を書くことで知られるジョン・マクダウェルがいる。私生活では、行為論やフェミニズム哲学で活躍するジェニファー・ホーンズビーとの間に二人の子をもうけた。なお、ウィギンズの後任ポストには前述のウィリアムソンが着任している。

主な邦訳
ニーズ・価値・真理——ウィギンズ倫理学論文集』(大庭健・奥田太郎(編・監訳)、勁草書房、2014年)

3. ガレス・エヴァンズ(Gareth Evans; 1946~1980)【4】

元オックスフォード大学准教授。後述のストローソンのもとで学んだのち、言語哲学と心の哲学の領域で時代を先取りした論文を書いたが、病のため34歳で早世した。彼の死は、当時哲学の中心地であったオックスフォードの影響力を一気に低下させる遠因になったとまで言われる。彼が出版しようとしていた原稿は、友人で同僚だった前述のマクダウェルによってまとめられ遺作として出版された。

主な邦訳
「名前の因果説」(『言語哲学重要論文集』、松阪陽一(編訳)、春秋社、2013年所収)

4. デイヴィッド・カプラン(David Kaplan; 1933~)【3】

現在カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。言語哲学と論理学で革新的な成果を挙げ、同僚や教え子たちとともに1970年代以降の形式的意味論の発展を牽引した。カルナップの最後の教え子であり、一目ぼれした妻とはライヘンバッハの授業で知り合ったのだとか。歳を重ねてもパワフルかつ茶目っ気にあふれ、70歳を超えてから同僚と共同で受け持った授業では、同僚が作成した宿題をまるで新入生のように真面目に解き、最優秀の成績をとれるか知りたがったらしい。かつては書いた原稿をなかなか公刊しないことで有名だった。

主な邦訳
「Dthat」(『言語哲学重要論文集』、松阪陽一(編訳)、春秋社、2013年所収)

5. ピーター・ギーチ(Peter T. Geach; 1916~2013)【1, 2, 3, 4】

元リーズ大学教授。デカルトやフレーゲの翻訳を行ったのち、言語哲学や哲学的論理学、形而上学、宗教哲学、トマス研究で挑戦的かつ鋭い論文・著作を発表した。現代でも「フレーゲ・ギーチ問題」や「ギーチ・カプラン文」などにその名が残っている。個人としては、厳格なカトリック教徒であると同時に非常に短気な人柄で知られ、聖職者の説教中に「こんなものは異端だ」と突然叫び、家族を教会から連れ出すなど数々の逸話が伝わる。気に入らない哲学者への評価も辛辣で、ルソーを(バイロン卿になぞらえ)「狂気じみた悪人で、近づくのは危険」と評し、アリストテレスが作り上げた論理学を「アダムの堕落に匹敵する」と断じたことも。他方で家庭では、行為論の金字塔的著作『意図』を著したエリザベス・アンスコムのパートナーであり、二人は哲学界きってのおしどり夫婦として知られた。アンスコムが今際の際に最後の行為として意図したのはギーチへの口づけだったとかなんとか。また、100を優に超える書簡のやり取りを通じて、ギーチは後述のクワインとも終生豊かな友情を築いたようだ。

主な邦訳
哲学の三人——アリストテレス・トマス・フレーゲ』(野本和幸・藤澤郁夫(訳)、勁草書房、1992年)

6. W. V. O. クワイン(Willard van Orman Quine; 1908~2000)【1, 2, 3】

元ハーバード大学教授。言語哲学、論理学、認識論、科学哲学、数学の哲学、心の哲学、形而上学など数多くの分野で活躍した、二十世紀アメリカ哲学界における最重要人物の一人。ドナルド・デイヴィドソンやギルバート・ハーマン、後述のルイスなど影響力のある哲学者を多数指導したことでも知られる。論文を書くときは、論理記号をたくさん打鍵できるように文字盤を改造した自作タイプライターを愛用していた。記者に「さすがにクエスチョンマークはないと困らないですか?」と尋ねられたクワインは、「まあ、絶対確実なものを扱ってますからね」と返したという。研究以外では無類の旅行好きとして有名で、アメリカすべての州と100以上の国を渡り歩いたことを記した自伝は、同僚の一人からMoving Vanという題にすべきだったと茶化されるほどだ(名前の一部とトラックを表すvanをかけたもの)。

主な邦訳
ことばと対象』(大出晁・宮館恵(訳)、勁草書房、1984年)
論理的観点から』(飯田隆(訳)、勁草書房、1992年)

7. スーザン・ケアリー(Susan Carey; 1942~)【4】

現在ハーバード大学教授の心理学者。同大学のエリザベス・スペルキらとともに乳幼児の概念変化の研究を行い、ケアリーが考案した概念獲得のメカニズムはクワインにちなみ「クワイン的ブートストラッピング」と名付けられた。彼女のパートナーは、意識の哲学・神経科学への貢献で知られるネド・ブロックである。教え子には、発達心理学上で多数の共同研究を行った心理学者フェイ・シュウがいる。

主な邦訳
子どもは小さな科学者か——J.ピアジェ理論の再考』(小島康次・小林好和(訳)、ミネルヴァ書房、1994年)

8. マーク・ジョンストン(Mark Johnston; 1954~)【5】

オーストラリア出身で、現在プリンストン大学教授。専門は形而上学と心の哲学、宗教哲学。十代は、プロのスヌーカー(ビリヤードに似た競技)選手になろうとしたほどのスポーツマンだったが、神学校を離れ大学に入ったのちは哲学に開眼し、二十世紀分析哲学の双璧であるルイスとソール・クリプキのもとで博士号を取得した。近年は、同僚の認知心理学者セーラ・ジェーンレズリーとともにいわゆる総称文の研究を行っているほか、キリスト教哲学に関する大部の著作を立て続けに発表している。

9. ジェイソン・スタンリー(Jason Stanley; 1969~)【3】

現在イェール大学教授。専門は言語哲学や認識論、政治哲学。ホロコースト時代のドイツを経験した両親のもとで育ち、その影響もあってか近年は全体主義や政治的プロパガンダの研究に積極的に取り組んでいる。あるインタビューで、一日を一緒に過ごしてみたい人物としてスタンリーが挙げたのは、多くの著作を残した哲学者プラトンと、運動家でもあった社会学者W.E.B. デュボイスの二人である。博士課程時代の指導者は、言語哲学で長年にわたって先導的な役割を果たしてきたロバート・スタルネイカー。

主な邦訳:『プロパガンダの哲学』(青土社、未公刊)

10. P. F. ストローソン(P. F. Strawson; 1919~2006)【1, 4】

元オックスフォード大学教授。哲学者ポール・グライスのもとで学んだのち、形而上学と行為論、言語哲学のほか、認識論やカント研究などでも多くの著作・論文を執筆し、1950年代から60年代のオックスフォード哲学の隆盛をリードした。哲学者J. L. オースティンが主宰した伝説的な集まり「土曜朝の会」の参加者の一人(会では哲学の古典にくわえメルロ=ポンティやチョムスキーの著作も読まれた)。ナイトの称号を得て間もない頃に旧ユーゴスラビアで講演を行った際、若い出席者から「ブルジョワ的な考え方が滲み出ている」と苦言を呈されることがあった。これにストローソンはすかさず「いや、私は本当にブルジョワなのです。エリートでリベラルのブルジョワなのです」と返したのだとか。息子のゲイレン・ストローソンも哲学者となり、そちらはヒューム研究そして汎心論の擁護で高い名声を得ている。

主な邦訳
『個体と主語』(中村秀吉(訳)、みすず書房、1978年)
意味の限界——『純粋理性批判』論考』(熊谷直男ほか(訳)、勁草書房、1987年)

11. マイケル・ダメット(Michael Dummett; 1925~2011)【1, 2】

元オックスフォード大学教授。言語哲学や哲学的論理学、数学の哲学、形而上学、フレーゲ研究で大きな足跡を残した。人種差別への反対運動のほか、移民政策や選挙制度、タロット(!)の研究でも活躍した。学生時代の指導者は先述のアンスコムである。ある日、研究指導を受けようとアンスコム宅に赴いて彼女を待っているときのこと、階段から降りてきたガウンを着た男性に突然、「ミルクはどこにあるんだ?」と尋ねられた。知るよしもないダメットはこれに「私に聞くな」と応酬した。この一幕が、当時アンスコム宅に居候していたウィトゲンシュタインとの最初で最後の邂逅になった(と本人は語っていた)らしい。なお、ダメットの後任ポストに就いたのは先述のウィギンズである。

主な邦訳
真理という謎』(藤田晋吾(訳)、勁草書房、1986年)
思想と実在』(金子洋之(訳)、春秋社、2010年)

12. ロデリック・チザム(Roderick M. Chisholm; 1916~1999)【2, 3】

元ブラウン大学教授。認識論と形而上学、言語哲学、価値論において現代分析哲学の礎となる仕事を行ったほか、フィヒテやブレンターノ、マイノングらドイツ語圏の哲学者の翻訳も行った。指導者として多くの哲学者を世に送り出し、彼が博士論文を指導した人数は59人に上る。これはアメリカ史上トップ5に入る数だ。彼自身の博士論文は、締切から数週間遅れて提出されたものの、直後に入隊を控えていたため特別に学位を授与されたとのこと(1942年から約4年間従軍した)。反例に照らして定義を少しずつ修正していく論述スタイルは、彼にちなんだ動詞で「チザムする」と呼ばれている。学生時代、クワインの家に間借りしていたことがあるらしい。

主な邦訳
知識の理論』(上枝美典(訳)、世界思想社、2003年)
「人間の自由と自己」(『自由意志——スキナー/デネット/リベット』、青山拓央・柏端達也(監修)、岩波書店、2020年所収)

13. ベリット・ブロガード(Berit Brogaard; 1970~)【3, 4】

オランダ出身で、現在マイアミ大学教授。専門は形而上学や心の哲学、認知神経科学、言語哲学、認識論、生命倫理学。すでに150本以上の論文と5冊以上の著作がある多作家。詩や小説を発表したこともあるとのこと。共感覚やサヴァン症候群の研究でもよく知られ、彼女自身も共感覚の持ち主である。賛否両論ある哲学科博士課程のランキングサイトPhilosophical Gourmet Reportの主要な編集メンバーという顔も持っている。ポストドクター時代は、哲学的ゾンビの考案で著名なデイヴィッド・チャーマーズのもとで多くのことを学んだという。

14. キット・ファイン(Kit Fine; 1946~)【1, 5】

イギリス出身で、現在ニューヨーク大学教授。専門は形而上学や論理学、数学の哲学、言語哲学、アリストテレス研究。オックスフォード大学を卒業後、博士課程に進学することなくわずか二年で博士論文を提出した俊英。現在は、やや長い論文を書きがちな「哲学者好みの哲学者」だと紹介されることが多いが、若い頃は経済学者の実弟と社会選択理論についての論文を発表したこともある。二人の娘はどちらも心理学者として大学教授を務めている。

主な邦訳
「形而上学とは何か」(『アリストテレス的現代形而上学』、トゥオマス・E・タフコ(編著)、春秋社、2015年所収)

15. リチャード・フェルドマン(Richard Feldman; 1948~)【4】

現在ロチェスター大学教授(元学長)。専門は認識論で、アール・コニーと多くの共著論文を発表した。7つ離れた実兄は、死の形而上学や幸福の道徳哲学で活躍するフレッド・フェルドマンである。この兄が当時着任したばかりの大学院で、弟リチャードは哲学を学ぶことにしたそうだ。

16. リン・ラダー・ベイカー(Lynne Rudder Baker; 1944~2017)【5】

元マサチューセッツ大学アマースト校教授。数学の学士号を取得したのち哲学に転向し、形而上学や心の哲学、宗教哲学の分野で多くの論文・著作を執筆した。特に後年はプロテスタントの哲学者として神の存在証明や教義理解に努めた。結婚により「ベイカー」姓となったが、女性研究者の多くの例に漏れず、旧姓の「ラダー」はミドルネームとして残っている。実妹は大学教授も務めた政治学者である。

17. ジョン・マクファーレン(John MacFarlane; 1969~)【3】

現在カリフォルニア大学バークレー校教授。専門は言語哲学や哲学的論理学、古代哲学。オープンソースの文書変換ツール「Pandoc」の開発者としても知られ、2014年にオックスフォード大学出版局から出版された主著は、プログラマらしく彼のウェブサイトで無料配布されている。博士課程時代の指導者は、推論主義で著名なロバート・ブランダム。

18. デイヴィッド・ルイス(David Lewis; 1941~2001)【1, 5】

元プリンストン大学教授。形而上学、言語哲学、心の哲学、哲学的論理学、認識論、倫理学等々分析哲学のほぼすべての領域で、絶大な影響力を持つ論文・著作を多数残した。キャリアの最初期には、「規約」をゲーム理論の観点から分析する成果も残している。とあるランキング調査によると、20世紀後半で最も引用された英米圏の哲学出版物トップ100において、ルイスの出版物はなんと13回登場する。これは他を寄せ付けない圧倒的一位の回数だ。その優れた知性の反面、世間話ができないなどの浮世離れした雰囲気を漂わせていたことから、親しい友人からは「幽霊の中の機械」とあだ名されることもあった(「機械の中の幽霊」のもじり)。教え子の一人に日本出身の哲学者八木沢敬がいる。

主な邦訳
世界の複数性について』(出口康夫(監訳)、名古屋大学出版会、2016年)
コンヴェンション——哲学的研究』(瀧澤弘和(訳)、慶應義塾大学出版会、2021年)

19. マイケル・レイ(Michael C. Rea; 1968~)【2, 5】

現在ノートルダム大学教授。専門は宗教哲学や形而上学。ノートルダム宗教哲学センターの所長も務め、編集したものも含めると15以上の著作がある。キリスト教哲学者協会の基調講演にて、哲学者リチャード・スウィンバーンが同性愛について物議を醸す見解を披露した際、当時会長だったレイがとった対応には賛否が大きく分かれた。博士課程時代の指導者は、改革派認識論の提唱者として知られるアルヴィン・プランティンガである。

20. E. J. ロウ(E. J. Lowe; 1950~2014)【1, 2, 4】

元ダラム大学教授。哲学者サイモン・ブラックバーンのもとでオックスフォード大学に博士論文を提出したのち、形而上学を中心に、心の哲学、哲学的論理学、ロック研究、行為論などにおいて10を超える著作と200を超える論文を発表した(書評の数も100近くに及ぶ)。私生活では温かい人柄の持ち主で知られ、次のエピソードが残されている。教え子の一人が家族を連れてロウの研究室を訪れたときのこと、教え子の幼い息子が遊び半分でロウの似顔絵を描いて、それを本人にプレゼントすることがあった。後日教え子がロウの研究室を再訪すると、その似顔絵は真新しいフォトフレームに丁寧に収められていたという。63歳で急逝した際には、ヴァン・インワーゲンはじめ多くの人からその才能と人柄を惜しまれた。

主な邦訳
「新アリストテレス主義的実体存在論のひとつの形——関係的でも成素的でもなく」(『アリストテレス的現代形而上学』、トゥオマス・E・タフコ(編著)、春秋社、2015年所収)


〈注〉
本リストは、わかりやすく言うと「分析哲学サークル」の内輪ネタみたいなもんです。なので、本書にも哲学にも関係ないっちゃないです(関係あるっちゃありますけど)。しかも哲学研究者が読んだら、思わず「有名な逸話ばかりなのですべて知っているのですが…」とか、「あれ書いてないじゃん、はい書き直し」と言いたくなる内容でしょう。否定はしません。それでもなぜあえてこのリストを公表するかと言えば、研究者でない多くの人に少しでも「哲学」を身近に感じてもらいたいからです。その入り口に哲学者紹介はうってつけです。なぜって、単純に哲学者たちの生態は面白いから。それに、真面目な哲学書とにらめっこするだけでは彼らの人間らしい一面は見えてきません。哲学者のひととなりを知ることは、彼女または彼の哲学思想に触れるきっかけにもなるでしょう。そういうわけで、「本書をよりよく理解するための哲学者リスト」とかいう一見すると誰得なブツを、臆面もなく公表しようと思い立ったのです。なお、言い訳ついでに付記しておくと、このリストは元々、本書の末尾に付録としてつける予定だったのですが、本編の内容にそぐわなさすぎるということでカットになりました。もしつけていたら、だいぶちぐはぐな本になっていたと思うので、当時的確なアドバイスをくださった編集の村上文さんには感謝しかありません。いま思い出しましたが、「リスト」の元タイトルは「哲学者列伝」でした。ちぐはぐどころの騒ぎではなかったです。

前編はこちら↓

【プロフィール】
横路 佳幸(よころ よしゆき)
日本学術振興会特別研究員PD/南山大学社会倫理研究所プロジェクト研究員。
2019年、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程を単位取得退学。2020年、同大で博士号(哲学)を取得。専門は哲学、倫理学。主要業績に「非認知主義・不定形性・もつれのほどき ――分厚い語の意味論」(『倫理学年報』66集、2017年、日本倫理学会 2017年度和辻賞受賞)、「三位一体論についての同一性の相対主義者になる方法」(『宗教哲学研究』38号、2021年)など。

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#哲学 #同一性 #慶應義塾大学出版会

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