見出し画像

謎解きの全国大会に参加したら地上波に映って日本一になった話 その4

この記事は、
『謎解きの全国大会に参加したら地上波に映って日本一になった話 その2』
の続きにあたるものです。
その1はこちらから
その2はこちらから
その3はこちらから

※注意※

再三の注意とはなりますが、このnoteには『謎解き日本一決定戦X2022』のネタバレが大いに含まれます。

番組を視聴してからの閲覧を”強く”推奨します。

動きが一挙手一投足確認できるので、記事と番組を合わせて見てみるのも面白いかもしれません。

決勝大会の様子は↓こちら↓から!


決勝大会 準決勝編

いよいよ残り3組。残るステージも2つとなりました。

「次のステージではアイマスクとイヤホンをつけてもらいます!」

やったー!!

実は、敗者復活でアイマスクをつけながら歩いて行った人たちを羨ましく思っていたのです。
本日二回目のアイマスクとなるあせろら君は狂喜乱舞しています。
謎解きに魅せられるとこうなってしまうという、悪い良い例ですね。

アイマスクに加え、イヤモニも装着します。
ペアの相手と喋ることができるアイテムなのですが、通信が悪いのか鼓膜を破かんとばかりにノイズが鳴り続けます。

これは皆さんに是非一回経験してもらいたい、いややっぱりしなくていいのですが、アイマスクした状態で、耳元で騒音が鳴り続けるのは発狂しそうになります。
このままだとさすがに謎解きどころじゃないので、移動直前までイヤモニは外すことになりました。

その後、スタジオにちょっと近づくことでノイズが落ち着いたので、
イヤモニとアイマスクを装着し、スタッフに手を引かれいざ決戦の地へ!

が、時折思い出したかのように鳴るノイズ。
その度に僕の体が跳ね上がります。

これは皆さんに是非一回経験してもらいたい、いややっぱりしなくていいのですが、アイマスクした状態で、耳元で突然騒音が鳴るのは発狂しそうになります。
目的地に到着した頃には既にヘロヘロになってしまいました。
そしてこれは知見なのですが、アイマスクをした状態でもなんとなく空気の籠り方などで室内にいることがわかります。感覚ってすごいですね。

無策師「あー部屋だねこれ。」
けーおん「わかる。多分セットの裏にずっと見えてたあの四角い奴だ。」
無策師「部屋から脱出する系かなぁ。情報共有しっかりしていきたいね」
けーおん「ぐえぇ(3rdを思い出し死亡)」

その後も暫く、脱出ゲームだとしたらどういったギミックがあるのか相談し合っていると、松丸の声が聞こえ始め、目隠しを取るように言われました。ゲームスタートです!


まずは扉とパソコンに書かれたルールを読みます。
壁に隠れた3文字の動物を見つける度に20ポイント、誤答は-10ポイント。
こんな単純なゲームなはずはないと思いながらも、まずは全力で動物を探します。

パンダ、カレイ、羊、カモメ。
後1匹見つければいいのですがなかなか見つかりません。
ステンドグラスとか、曜日書いてある予定表とか怪しいものが多すぎる!

けーおん「んーさすがにこの本棚怪しい。
アルファベットがありそうなんだけどうまく拾えないから助けて」
無策師「任せろ」

ここまで入力に徹していた無策師にヘルプを求め、僕は他の動物がいないか探し始めると、無策師が見事に「オウム」を見つけてくれました。神!!!

これで脱出成功な訳ないよね、次の部屋があったりするんだろうな、
と思いながら勢いよく扉を開けると、まさかの壁が。

壁にびびる無策師

無策師が、
「出口のフォント、多分330だ。330ptにしよう」
と、すぐに気づいてくれます。

そう、無策師が操作していたPCに表示されていたルールにある、
「3文字の生き物」の「3」の真ん中がやや長く、2つ重ねることで「出」になるのです。ナイス記憶。

よく見ると3のフォントがおかしい

現在我々は100pt。330ptにするためには、動物をあと12匹見つけて1回誤答する必要があるのですが……。

けーおん「後12匹もいる???絶対無理だよ」
無策師「一旦さっき入れた動物もう1回入れてみるか。……だめだわ、通らない。」

うーん……

けーおん「……間違えまくってマイナス330にする?」

ぽつりと放ったこの発言は”賭け”です。
もし先ほどの「後12匹探すのが絶対無理」という前提が間違っていれば、「同じ答えは再度入力できない」というゲームの性質上、大きなディスアドバンテージ、もしくは最悪詰みとなりかねません。

一瞬の静寂。無策師も筋がいい案だと思いながら、リスクについても考えているはずです。

しかし、我々はこの大会を通しての心構えがあります。

“勝負できる材料が揃ったと思ったら、勝負に出る”

気づけば無策師がPCに向かって走り、誤答を連打し始めていました。

もし、マイナスに突入しなければ、敗退濃厚。
PCを操作する無策師と一緒にモニターを見守ります。
頼む、マイナスに行ってくれ……!

30,20,10…

0…

-10!!

マイナスがついた!!

心なしか、無策師が操作するマウスのクリック音が一段高くなったように感じられます。
後はマイナス330にして出るだけ。いけいけいけいけ!!

ここで、テンションは最高潮に達してしまい、「<-330>」の「<-」の部分が矢印になっていることを完全に見落とすという凡ミスをしますが、そんな細かいことは気にしません。

床と壁を指さす無策師を見て完全に理解。壁につっこめーーー!!!

「脱出成功でーす!」と教えてくれるスタッフ。

やったーーーーーー!!!!!!

こんな喜び方をする無策師はなかなか見られない
ハイタッチ下手くそ選手権優勝


終わってみればダントツでの1位通過でしたが、無我夢中で駆け抜けた上、周りの様子がほぼわからない状態だったので、
まずはクリアした歓びが勝り、その後じわじわと決勝進出1番乗りという嬉しさがこみ上げてきました。

決勝進出!【日本一】の座まで後1勝!!

幕間

控室に戻り、敗者復活での勝ち上がり以降、快進撃を続けていたEM・あせろらペアが帰路につきます。マジで強かった……。

帰り際、EM・あせろらペアはみずなし・potterペアに向かって「頑張れ!」と言いながらなにかこそこそと耳打ちをします。あ!ずるいぞ!!!

2ndステージ以降完全に四面楚歌だったのを思い出します。
まさか最後の最後まで共同戦線を敷かれるとは……。
一方こちらに残されているものといえば、常春の「がんばれよ」の手紙と、約10歳差というハンデによる疲労感だけです。とてもつらい。

EM・あせろらの2人が帰ると、スタッフも準備などで控室から出てしまい、我々4人のみに。

収録前には8組16人の参加者に加え、スタッフもわんさかいたことを考えると、今ではとても寂しくなってしまったものです。
『ダンガンロンパ』の最終章かな?


お互いがラストの謎についてどういう謎が来ると予想しているか等の牽制を掛け合っていると、スタッフが1人戻ってきて、「アイマスクをつけて移動します。荷物は全て持って出てください。」と言ってきました。

このスタジオじゃない……!?慌ててGoogleマップを見る我々。
一方、みずなし・potterチームは余裕の表情です。さては何か予想が立っているな?
我々は彼らに対抗すべく血眼で移動先の予測に全力を……注ぎません!!

ここまで勝ち上がってきた際にもある程度の予想を活かしてはきましたが、それはあくまである程度提示されている情報を使ってのこと。
車で移動する先なんていう、無限の選択肢がありそうな事象に対して予想をするのは労力に見合いません。出たとこ勝負じゃい!

こっちも余裕なふりをしはじめます。意地の張りありを続けているうちに、スタッフに呼ばれ、移動する時間がやってきました。


けーおん「そういやこの紙どうする?」
無策師「もういいんじゃん?置いていこ」

ばいばい、ハネッコ!


車に乗り込み、アイマスクを装着。
目隠しで車移動という、『水曜日のダウンタウン』でよく見たあの光景を体験しています。

横からカメラマンが「今のお気持ちは?」と訊いてきます。今訊く?
「暗いですね」と言いそうになる気持ちを抑え、それっぽいことを言いますが、放送では全カットでした。悲しい。


車が動き出すと、最初の方こそ「あ、今左に曲がったぞ!」「実はこのままぐるぐる回ってすごい近場に行くとか?」などとワイワイ言い合いますが、途中で異変に気付きます。明らかに揺れが一定だ……。

「これ皆気づいてると思うんで言うんですけど、絶対高速道路ですよね。」「どこに連れていかれるんだ一体。」

もう完全に未知のエリアに入ってしまいました。
みずなし・potterペアもさすがにこれは予想外だったのか、
「一回高速降りて、今度は反対方向に高速乗ってほしい~」
などと言い出します。

そんな彼らの叫びもむなしく、車は高速を降りてそのまま目的地へ到着。
目隠しをしたままなにやらエレベーターのようなものに乗せられます。

「この揺れの少なさや音の感じ……高層のエレベーターだな」
「階段下りまーす。肩貸しますね。」
「無理です手すりも掴ませてください!!」

そんなこんなで控室のような所に案内され、暫く待つように言われます。
これがかなり長い時間で、その間ずっとアイマスクをつけっぱなしなので精神力がじわじわ削れて行きます。

流石にこのままでは気が持たないので、みずなし・potterと無策師と4人でここまでの大会を振り返り、話に花を咲かせますが、
傍から見ればマスクとアイマスクで完全に顔が隠れた4人が向かい合わせで和気藹々と喋っているという、なんとも奇妙な絵面だったことでしょう。

しかし、忘れてはいけません。
彼らとはこれから【日本一】の座をかけて争う関係なのです。

長い待ち時間の後、スタッフに呼ばれ、手を引かれて歩く我々。

決戦の刻はすぐそこです。



決勝大会 決勝編


長い時間つけていたアイマスクを外した瞬間、白い光が一気に目に入ってきます。
目を押さえながら「なんも見えねぇ……」と呟く僕は、
さながら北京オリンピック2008の北島康介でした。

徐々に視界が慣れてくると、まず視界に入ったのは……

早押しボタンでした。

「早押しだ……」と絶望する僕。
今田さんがすかさず「そら決勝は早押しやろ~」と言ってきます。


別の大会の話になるのですが、『解神』という謎解きの大会では、「修羅」という一枚謎早押しラウンドが存在します。
8人で早押しを行い上位2人が勝ち抜け、誤答は即敗退という厳しいルールであるこの「修羅」をやる度に、僕はプレッシャーやらなんやらで吐きそうになっているのです。

決勝前の待機時間中に
「どんな謎でも解いてみせらぁ。でも、早押しだけは勘弁な」
と言っていたのですが、無情にも早押しボタンがこんにちはしてしまいました。絶望感がすごい。

そんな僕の絶望をよそに、ついに収録が始まり、松丸君によるルール説明が
進んでいきます。

「箱を見てみましょう。H,I,N,Tの4つの箱があります。
早押しで正解するとアルファベットを1つ指定できます。」

今わざわざ「アルファベット」と言ったということは、
選択肢は「H,I,N,T」の4つとは限らないということです。
とはいえ何をすればいいんだろうか?

考え込む僕に無策師がそっと耳打ちしてきます。

「Xがある。」

なるほどなるほど。真顔で頷いた後、ぼそっと返します。

「……どゆこと?」

「エレベーターのボタンにXがある。これを押せば屋上にあるトロフィーが取れるはず。気づかれるからじろじろ見ないように。」

「エレベーターのボタン」というのを何故かエレベーターの”中の”ボタンだと思い込んでしまいますが、一旦そのまま話を聞きます。

「オーケー。どうしようか、1問目取ったら直接X行っちゃう?」
「いや、最初は様子を見たい。1問目取れたらHINTのどれかにしよう。」

作戦は決まりました。後は正解するだけです。


第1問。
なんだこれは。携帯か……?いや、「一定」っていうのは明らかに異常だし、下が大きすぎるから携帯ではないな。あ、右上のロゴk
ピンポーン

早 す ぎ る !!

potter「本気!」
松丸君「正解!」

終わったかもしれん……。
最初から「X」と言わないことを祈ることしかできません。

みずなし・potter「N!」

あっっっっぶね~~~~

平静を装う僕と顔を背ける無策師

というかロゴ使った謎は1stステージのBブロックでやったでしょ!!
まさかもう1問出るとは。これは完全に迂闊でした。

まあでもまだ4分の1のヒントを見られただけです。
しかし、こちらには「X」という切り札があります。
次の問題を取れた場合も、作戦は変わらずHINTから選ぶように決めて、2問目に臨みます。

2問目。
この問題を目にした瞬間、今まで味わったことのない感覚を体験することとなります。

な、なにもみえない……


ここまで半日近く緊張感が張り詰めた瞬間が続いたことによる肉体と精神の疲労、そして先ほどまで長時間アイマスクを付けていたことによる目の負担もあるでしょうか。
イラストがたくさんあり、様々な色が主張してくるこの画像を、全く理解することができなかったのです。

極限の疲労状態にこの謎は効く

当然そんな状態で謎が解けるわけもなく、無抵抗状態でみずなし・potterペアにボタンを点けられてしまいます。

potter「がくふ!」
松丸君「正解!」

また祈るだけの時間が来てしまいました。果たして……?
みずなし・potter「T!」

あ~~~~ぶね~~~~~~

平静を装う僕と顔を背ける無策師アゲイン

助かってはいるのですが、何もできずに2問取られてしまった事実は変わりません。
流石に少しの焦りも出てきます。
しかし、無策師は「1問押せば勝てるはず。落ち着いていこう。」と声をかけてくれます。

Tを見て帰って来たみずなし・potterを見てみると、エレベーターの方をじろじろと見ています。もはや決着は時間の問題だ!!!
あ、ていうかXってそこにあったのね、という今更の理解もします(遅い)
流石に次の問題を取ったらもう「HINT」ではなく「X」に行こうと決めて、次の問題に向かいます。

第3問。

あ!!!

色が!!!!

主張してない!!!!!

これなら見えます!
オレンジは果物の名前であり、色の名前でもある。
上は「だ」と「い」が見えて「だいだい」に見せようとしてる~なるほど~
と思いながらボタンを押します!

ボタンを押してから改めて謎を頭の中で反芻します。
日本一がかかった大事な答え。しっかり噛み締めながら。

その答えを言い放ちます。

「正解!」というコールまでが何分にも感じられました。

まだ油断しない僕と勝利を確信する無策師

さあ、ここからが本番です。我々の心は既に決まっていました。
松丸君「アルファベットを1つ指定してください」
けーおん「じゃあ、せーので行きましょうか」
せーのっ
けーおん・無策師「エックス!」

瞬間、松丸君がニヤリと笑ったように見えました。
「それではXを押して箱を開けてください!」

「え?どういうこと?」という今田さんら出演者陣の慌てる声と、
「ああああそうすればよかったのか!!!」というみずなし・potterペアの声を背に受けながら。

エレベーターのボタンのXを押し。

トロフィーが入ったケースを自らの手で開け。

トロフィーを掲げます!!!

ついに掴んだ日本一の座です!!!

その先のことは頭が真っ白になってしまってあまり覚えていません。
最後のインタビューではもう完全にわけのわからない発言をしていました。
放送では、「感無量」というかろうじて意味のわかる部分だけを拾ってくれたので助かりました。

ただ、頭が真っ白な状態でも、カメラ映りを考えてトロフィーの文字の部分から手をずらしているのは偉い!自分で自分を褒めたいですね!!

えらくない
えらい

あとがき

かくして、我々は見事に戦いを勝ち抜き、日本一に輝くことができました。
もちろん、その道のりは険しく、実際何度も危ないシーンがありました。
しかし、そんな中でも、お互いがお互いカバーしあえた、お互いが自分の強みを発揮しきれたというのが今回の結果に繋がったと思っています。
無策師は間違いなく天才だったし、僕も多分天才だった。本当かな?

ちなみにペアの無策師視点でのnoteはこちらから読めます。

さて。

今回の放送を通じて、謎解きは裏をかきに来るものを見通す「メタ視点」が一番なのか、と思った人もいるかもしれません。実際、決勝ではギミックさえ見抜いてしまえば、1問で決着することができたのですからね。

しかし、勘違いしてほしくないのは、謎解きを提供する側は、あくまでフェアに出題することがほとんどだということです。
出題者は、フェアに進んでいくゲームの中で、突拍子もないことが起こった時のプレイヤーの驚愕の反応が見たいし、それを解決した歓喜の表情も見たいのです。

なので、説明の中に嘘は基本的にありませんし、プレイヤーも深読みせずに素直に進んでいくことが大事となる場面の方が多いのです。
プレイヤー側から裏を見通すのは、素直に進めるだけではどうしようもできない状況に陥ったタイミングからでも遅くありません。

今回は、競う相手がいるからこそ、先手を取るべく、与えられた情報から考えられる可能性を常に探り続けたわけであり、普段の謎解きイベントで遊ぶ際は、そういう力を必要とする場面は多くはありません。
むしろ、1つの予想に拘ったために、その思考にハマってしまい失敗するケースも多いでしょう。それは出題者側も不本意であり、双方が悲しい気持ちとなってしまいます。

つまり何が言いたいかというと、
謎解きは全力で騙されに行って、全力で楽しむのが一番よい
ということです。

そうして楽しんでいるうちに、自ずと謎解きの力は育っていくのかもしれません。僕はそう思います。









蛇足クイズ

僕は精神安定剤として龍角散のど飴をよく舐めるのですが、この『謎解き日本一決定戦X2022』の収録中に何個舐めたでしょうか?





答え:7個

(スタジオへ向かう途中に1個、各参加ステージ前に1個ずつ、決勝待機中に更に1個)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?