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カモミッラを探して 〜ミラノ編〜

イタリアというと、エスプレッソとか、カプチーノといったイメージが強い。実際、10代の頃に興味があって勉強したイタリア語会話で習ったのは、エスプレッソかカプチーノを注文をするためのフレーズが多かった。

今から7年くらい前の話だ。その日は、日本に帰国するクライアントを見送り、私は仕事で別件があったため、イタリアのミラノに残った。

前日までは、クライアントと同じ高級ホテルに泊まっていて、その日からは、少しランクの低いホテルへ変更し、そちらにチェックインした。夜遅い時間だった。疲れもあってか、夕食で何かを口にする気にはなれなく、なぜかカモミールティーが急に飲みたくなってしまったのだった。

ホテルの周辺を歩き、まだ明かりのついているバルやレストランに何件か行ってみたが、テラス席を片付け始めていたりと、どこももう営業を終える準備をしている様子だった。ただ一件、まだお客さんがいて、営業をしているバルがありそこに入った。

私:
カモミールティーってありますか?
—イタリア語できいたが、全く通じていない気がして、英語できいてみた

バルのお母さん:
えっ、何だって?
何あなたイタリア語話せないの?
困ったわ〜うちの息子が英語が上手だから、今呼んできてあげるわ。
—イタリア語で、バルのお母さんは絶対そう言っていて、2階にいる息子の名前を大声で呼ぶのだった

すぐに、見た感じまだ若そうな息子が現れた。

バルの息子:
どうしました?

私:
ああ、本当にごめんなさい。この店まだ開いていますかね?
もし開いているなら、軽く食べるものか、何ならカモミールティーだけでも飲みたくて。

バルの息子:
えっ、何ティー?
もううちも閉店の時間ですが、ドリンクだけなら。

私:
えっ本当?
ありがとうございます!
そう、たぶんないかな、カモミールティーってありますか?

バルの息子:
えっ何、何ティー?
…ああっカモミッラ!?
イタリアでは、カモミッラって言うんですよ。まあいいや、メニューにはないけど、あるある!
今持ってくるね、それだけでいいですか?

私:
もう閉店なら、カモミッラだけで大丈夫です。
よかった。本当にありがとうございます!

バルのお母さん:
カモミッラかぁ!あるわよあるわよ〜
—ニコニコして私より嬉しそう

どこかから、カモミールティーをバルの息子が持ってきてくれる。ビスコッティも添えられている。

カモミールの香りがしっかりと漂って、飲むと、体を温めながら、なぜか落ち着かせてくれる。更には、アーモンドの入ったビスコッティは、カモミールティーとも相性がいいことを知るのだった。

バルのお母さんは、私に興味があるのか、息子に通訳をさせながら、どこから来たのか、ミラノに来たのはなぜか、何の仕事をしているのか、家族はどこにいるのか、イタリア料理が好きかなど、たくさん質問をしてきた。私は、まるできた球を次々と打ち返していく卓球選手のように、次々と質問にこたえていった。

ただあまり長居をしてはいけないと、バルのお母さんにもわかるように、ジェスチャーも入れて感謝を伝えて、お会計をしようとした。すると、バルのお母さんが支払いは要らないとジェスチャーで伝えてきた。

そしてバルの息子が、英語で説明してくれた。

バルの息子:
お支払いは要らないです。メニューにはない我が家のカモミッラを出しただけですので。
ここでは、色々美味しい料理やワインも出せるので、ぜひまた来てください。

私:
えっ!?そんな…
でもまた絶対来ます!

バルのお母さんと息子:
じゃあホテルまで気をつけてね。
おやすみなさい〜

結局、私は、極上のカモミールティーを淹れてもらい、おしゃべりまで楽しんだのに、支払いをさせてもらえなかったのだった。

あれからかなり時間が経過してしまい、未だお礼ができていないが、いつか、このバルに何か極上の日本のお茶を持っていきたい。

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いつかこの「地球人のおもてなし」がNetflixでドラマ化されたらいいなと夢みながら😴💫

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