『宇宙戦艦ヤマト2199』

By おむしす


・前書き

 「宇宙戦艦ヤマト」の名は、日本のSFアニメの中でもよく知られている。放送当時こそ視聴率の低迷に悩んだが、再放送や総集編映画などによって再注目されるようになり、アニメブームのきっかけになったとの評価も根強い。アニメを見ない人の間でも、同名のささきいさお氏によるopテーマは応援歌などとして知名度がある。本作は1974年放送のTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』にはじまり1983年の『宇宙戦艦ヤマト完結編』でいったん終わったかと思いきや、2009年には続編『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』が制作され、さらには2012年の『宇宙戦艦ヤマト2199』をはじめに、現在も進行中のリメイクシリーズの制作が開始されたという長命なシリーズである。ここでは、私のヤマトシリーズ入門のきっかけとなった『2199』について、紹介と感想を述べようと思う。

・基本情報

原作:西﨑義展
総監督:出渕裕
音楽:宮川泰、宮川彬良
二〇十二年劇場で先行公開、翌年テレビ放送
※宇宙戦艦ヤマト(第一作)のリメイク

・あらすじ

 西暦二一九九年、地球は異星人国家「大ガミラス帝国」の侵攻を受ける。悪魔の兵器「遊星爆弾」による環境改造により、人類の滅亡が一年後に迫ったとき、宇宙のかなたにある星「イスカンダル」の使者が惑星再生装置の譲渡を申し出る。若い軍人古代進と島大介は老練な指揮官沖田十三のもと、十六万八千光年先の惑星イスカンダルにある装置を得るために戦艦大和の姿をした宇宙戦艦「ヤマト」の航海に参加する。地球人類を救うための戦いの中、彼らは宿敵ガミラスとの接触や自ら作った大量破壊兵器との向き合い、そして仲間との対立や理解を経験していく。

・解説や感想(微ネタバレ注意)

 人類の敵であり、主人公の古代と島の肉親を奪ったガミラス人との相互理解に近づいていく過程が、旧シリーズ以上に丁寧に書かれている点が素晴らしい。最初、地球人はガミラス人の正体が全く分からないまま戦っており、彼らのロボット兵をガミラス人と錯覚するほどであった。しかし航海のなかで、古代たちはガミラスが肌の色以外は自分たちと同じ人間であることを知り、さらにはガミラスのパイロットであるメルダ・ディッツを同乗させることになる。敵同士がそうたやすく信じあえるはずもないことは、メルダを仲間として扱うことを主張する古代と乗組員のガミラスへの怒りに配慮する上官たちの激論、戦争の原因が地球にもあることを語るメルダの姿などによって示される。はたして、星間戦争という最悪の形で出会った両者は歩み寄れるのか。旧シリーズでも書かれたテーマだが、複雑な個々人の思い、隠された戦争の真実などが入り組んでより深められている。
 また、戦闘シーンのCG映像の迫力も魅力の一つとなっている。『人類最後の希望』でありながら、大胆にも敵陣に肉薄して主砲の光線で敵艦を両断するヤマトと、それを物量と計略で包囲せんとするガミラスとの死闘にはとてもハラハラさせられる。第十六話「帰還限界点」の大型戦艦ゼルグート級との近接戦闘などはその最たるものだろう。重々しいパーカッションの音楽とメカニックの細かな書き込みも相まって、目の離せない一場面になっている。
 少し気になる点は、ご都合主義的な展開が散見されるところだろうか。2199は旧シリーズの設定を補完し、科学的考証や矛盾解消を積極的にしている部分が多い(例えば、旧作ではずっと艦橋にいたメインキャラたちの交代要員が設定される)ため、残された部分がやや際立ってしまう。具体的には、中盤にガミラスの内政問題が影響してヤマトへの攻撃が突如止まり、危機脱出につながるシーンなどがある。本筋につながるネタバレになってしまうので詳細は割愛するし、フィクションである以上突っ込みすぎるのも野暮かとは思うが。

・総評

 重厚なメカニックや宇宙戦闘の描写、人類の命運をかけた航海に赴く戦士たちの人間ドラマが魅力であり、とても見ごたえのある作品である。
 長大な『ヤマト』シリーズのなかでも作画の癖が少なく、第一作のリメイクである点を含め入門作としても親しみやすいといえるだろう。ただし旧シリーズ以来のファンの方は、特有のセリフ回しや泥臭さがやや少ないことを寂しく感じるかもしれない。それでも全体として、過酷な戦闘を生き抜く者たちの姿が生き生きと描かれることに変わりはないので、新規勢・旧作勢ともに楽しめる作品であると個人的には思う。


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