見出し画像

その場で試せるスクワットで腰が丸まらないようにする動き方

このブログを読み、過去に自分もこんなクレームをしたこと/されたことがあると思い出しました。

筋力がない人は、その体と手のポジションではどうしたって指定された姿勢をキープできないのです。つまり、それらのセリフはクレームです。指導ではありません。...そのできない瞬間にとやかく言われたって、言われている方は困惑し云われの知らぬ罪悪感に襲われるだけです。

スクワットは「下半身の大きな筋を刺激して基礎代謝up」という営業トークで、フィットネス界隈でよく推されます。

それだけ一般的だからか、人のスクワットを見ていると、その人の個性やトレーナーの指導の差が現れるように感じます。

重さの設定、お尻の引き方、どこまでお尻を下げるか、足裏のどこに体重をのせているか、目線はどこか等々...

上記ブログを読む少し前、NZのジムで「腰を丸めない、反って!」とスクワットの指導を受けている人を見て「反れないなら、そう言われても無理でしょ。」と思ったのが、今回のネタになる論文を探したキッカケです。

前置き:相手が競技者(S&C)か非競技者(フィットネス)かの違い

競技者向けの指導ならば、目的を達成するための動作ができない場合は、難易度を下げたエクササイズを選択する。その動作をできるように原因の根本的な解決を模索するでしょう。それが理想だし、そうすべきだというのが私の意見です。

非競技者向けのフィットネスの世界に身を投じてから、この意見でやり通さないほうが良いときもあるのでは?と考えています。

競技者の場合、運動・練習・トレーニングと言われる類のものを長期間継続できることがその存在の前提にあります。しかし、フィットネスの場合は違います。

厚生労働省の2017年の調査では以下のような結果が出ています。...1回30分以上、週2回以上、運動している人は20%以下ということです。

このnoteで言及されているように、運動を継続できないことがフィットネス現場での運動指導における大きな課題です。しかも運動に対して可処分時間を割く優先度は必ずしも高くはありません。別のnoteでこんなことも述べられています。

逆に、「フォームが難しい」「運動がつまらない」「運動しに行くのが面倒臭い」「運動すると疲れる」といったものが「嫌子」に該当します。確かに、なんだか運動するのが嫌になってしまいそうな内容です。

Instagramを眺めて「お尻を引き締めたい」と一念発起したのに、難しい動きは嫌だし、かと言って地味なエクササイズはつまらない。疲れるのも嫌だけど(謎の)やった感は欲しい...

勝つために必要なことならやるであろう競技者とはマインドセットが違います(勿論、全員がそうとは思いませんが)。

これを考慮すると、例えば、スクワットがその目的(例: 臀部・ハムストリングスを鍛える)を達するための動きで完了できないとき、ヒップスラスターやヒップリフトを代わりとして選択するだけでなく、

重りを持ってお尻を上げ下げするタスクを所定の回数を完了(手段の目的化)することで、30分や1時間の短いセッションの中で「できた」という成功体験を積んで「新しいことをやれた」達成感を得てもらい、

それを楽しみとして運動を継続してもらう。そんな選択肢もあり得ると考えています。

前置きが長くなりました。

そういう状況も想定し、スクワット動作時に「背筋まっすぐ」「胸をはって」「体幹を意識」と言われても腰が丸くなる(腰椎後弯)とき、気合や意識ではなく身体の仕組みでどう対処して、そのタスクを完了させるところまで持っていくか。それが今回の主旨です。

膝とつま先の向きを変えると腰が丸くならない

結論から言うと、膝とつま先を正面から45°外側に向ける(股関節外旋)ことで、スクワット時に腰を反りやすくできそうです。

スクワット時のつま先の向きを変えて、腰の反り具合や体幹・下肢の筋の効き方の変化を調べた研究があります。

私が過去に所属した研究室から発表された論文ですが、このnoteを投稿してから修正した2020年4月22日現在まで、取引・利害関係はありません。

太ももが床と平行になるパララレルスクワットでは、膝とつま先を45°外側に向けると、正面に向けたときに比べて、下から持ち上げるフェーズでより腰椎が伸展した。筋の働き具合に差は無かった。
下までしゃがむフルスクワットでは、膝とつま先を45°外側に向けると、正面に向けたときに比べて、ボトムポジション前後で脊柱起立筋と多裂筋(要するに腰の筋)の働きが弱くなり、お尻の筋が強く働いた。腰椎伸展に差は無かった。

膝とつま先を45°外側に向けることで、動作中の腰が反れるようになった、または腰の反りは変わらないけど腰を反らす筋の働きは弱くて済んだ。ということです。

腰が丸くならない理由

膝・つま先を外側に向けると、膝下外側から伸びてお尻の大臀筋と合流して骨盤に着く腸脛靭帯(iliotibial band posterior fiber※)が緩み、スクワット動作中に腸脛靭帯〜大臀筋がつっぱって骨盤を後傾方向に引っ張る(腰椎後弯の)働きが弱くなるからだろうと論文では考察しています。

骨や筋によって動きが制限されていたら、動き方・意識を変えようとしてもそれは変えようがないので、スクワット中に腰が丸くなる場合は試してみる価値があると思います。

ハムストリングス(特に外側の大腿二頭筋。起始腱に仙結節靭帯と連続することもある。)や梨状筋などの影響はないのか?股関節前方のつまりの問題んではないのか?など疑問はありますが...

※ 腸脛靭帯は英語でiliotibial bandという言い方もされるのをこの論文で初めて知りました。tractus iliotibialisしか知らなかったです。勉強不足...

まとめ

膝とつま先を45°外側に向けると、スクワット動作中に腰が丸まらなくなりそう。

カバー画像はCCで利用:"Nick Mascioli squat" by ljgoyke is licensed under CC BY 2.0