記事一覧
損害保険の原則について
以前のnoteにおいても、保険に向くリスク、向かないリスクとして書いておりますが、全ての偶然外来な事故に伴うリスクについて保険が最適であるとは考えていません。損害保険が成立する原則を満たしている事が前提だと思います。損害保険を取り扱われる方は商品や約款を学ぶ事も重要ですが、こうした原則論を学んで頂く事がまず大事だと思います。
偶然外来な事故に伴う損害は様々ありますが、そのリスクが損害保険でカバー
損保協会「リスクマネジメントと損害保険」リリース
先般の損害保険諸問題に関わる有識者会議においても、損害保険を考える前に、リスクマネジメントプロセス(リスクの特定→評価→対応→残余リスクに対するファイナンス意思決定)が重要である点を繰り返し強調しました。損害保険の認知度が高いからか、被保険者の中にはリスク=保険とすぐに考える方も多い中で、むしろ保険ヘッジはプロセスの中では最後のワンピースである事を改めて考えて頂く機会となったと思います。
こうし
損害保険諸問題に関する有識者会議と「リスクマネージャーの視点と実務」出版
3月より金融庁主催「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」に有識者メンバーとして参加しておりました。財務副大臣や金融庁幹部の皆様がご出席され、YouTubeライブでの中継、発言内容の議事録公開など、初めての経験でしたが、結果として非常に貴重な体験をする事が出来ました。
すでに金融庁より有識者会議報告書が公表されておりますので、内容についてはそちらをご覧いただければと思いますが、
保険引受審査: アンダーライティングとは
本日の日経新聞に「三井住友海上、政策株1.7兆円を2年で解消」との記事があり、これまで企業保険分野において重要な役割を担ってきた政策株の解消前倒しする事が報じられています。この中で、アンダーライティングの強化について以下の通り触れられています。
アンダーライティングとは一般に日本語では保険引受審査などと呼ばれ、保険会社がリスクの審査を行うようなニュアンスに聞こえると思いますが、その目的は「リスク
企業保険の競争入札プロセス
企業が契約する損害保険契約についてカルテル行為についての報道、行政処分が出ています。企業保険契約者として、競争入札を行う際には単に仲介者に丸投げするのではなく、自ら主体的に全体をコントロールしていく必要があります。
ステップ1: マーケット情報を集める
どのような保険条件でキャパシティをどのくらい確保するのか、スペックを決定するにあたって、最新のマーケット情報を得る必要があります。仲介者ともよく
「急速な保険マーケットの変化とその対応」セミナー開催
先週木曜日にPARIMA Japanセミナー「急速な保険マーケットの変化とその対応」を開催しました。実に2019年1月以来のフル対面イベントで、参加者、スポンサー様、メディア合わせて約100名の皆さんにご参加いただきました。会場後方には立ち見の方もいらっしゃり、テーマについての関心の高さが伺えました。セミナーでは主に、企業保険マーケットの現状について、自家保有を進める為のステップ、各企業における実
もっとみる複数の保険会社による企業保険契約
昨年より多くの報道の出ている企業保険カルテル問題ですが、大きなキャパシティを必要とする大規模契約者は複数の元受保険会社あるいは再保険会社を起用してプログラム組成をしなければならず、契約者はその起用方法やメリデメを承知しておかねばなりません。
まず本邦で最もポピュラーな引受方式が昨年よりニュースの出ている共同保険方式です。各保険会社の引受責任は独立ですが、日本独特のシステムにより幹事保険会社が証券
経営者の意思決定に資するリスクマネージャーの役割
他業界からの転職や内部異動で新たに事業会社の保険リスクマネージャーとなる方がさらに増えてきています。昨年の企業保険カルテル問題を受けて、契約者である企業側も自身の保険リスクマネジメント体制を見直そうという動きが加速しているように思います。
転職であれ、内部異動であれ、初めての役割、役職のオンボーディングは戸惑う方も多いと思います。筆者も当社創業以来初の保険リスクマネージャーでしたので、社内での認
航空保険事故と海外直接付保について
1月2日に羽田空港にて日航機と海保機の衝突事故が発生しました。改めて痛ましい事故であり、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。本事故に関してロイターの報道では日航機の航空保険の幹事会社がAIG、ブローカーはウィリスタワーズワトソン、付保額は$130Mであることが報じられました。
事故直後にも関わらず、このような詳細情報が報じられることも驚きでしたが、多くの読者が日本航空の航空保険の元受保
保険調達の難しさが再認識される時代
本日も日経新聞に企業保険のカルテル問題に関する記事が掲載されました。国内大手損保に公正取引委員会の立ち入り検査があったとの事でした。いくつもの事例の報告があった背景として、損保の寡占化、企業保険収支悪化、過剰な営業協力、トップライン思考などの指摘があります。
本来は保険付保の意思決定は、①リスクを把握して分析する、②企業の戦略と保険マーケットのアペタイトを考慮してストラクチャーを決める、③マーケ
リスクマネジャーの時代
昨日日経のオンラインメディア日経フィナンシャルにリスクマネジャーの時代と題したインタビュー記事が掲載されました。
記事は有料会員向けですが、リレー記事となっており日本企業にとっては比較的新しいリスクマネジャーという職種にスポットを当てて、各社がどのような取り組みをしているかを紹介しているものです。
こちらの記事はnoteに書き溜めたものをまとめて頂いたような形ですが、やはり「保険料コスト削減」
国内契約者の海外源泉契約とリスクマネージャーの役割について
先週国内大手損保の第二四半期決算が発表されました。一言で言えば諸問題はあったものの、総じて良好な決算、特に買収して傘下に収めた海外保険事業が利益を牽引しているが、旧来の国内保険事業は苦戦といった内容に見えます。
こちらは東京海上の国内損保事業ですが、本業の保険引受では赤字、資産運用で大きく黒字で経常利益を確保しています。赤字の要因として発生保険金の増加、特にハワイ山火事など「海外源泉」の悪化をト
保険事故データのにおけるプロセス可視化の重要性
グローバル保険プログラム導入の目的はリスクマネジメントの高度化、トータルコストオブリスクの最小化になりますが、副次的な効果として事故データの一括管理収集が可能となり、特に日本的な低免責あるいはゼロ免責プログラムストラクチャーにおいては、これがガバナンス強化の観点で大きな力を発揮します。
保険事故データいわゆるロスランデータの活用、特にロスプリベンションに活かすことは古くから行われてきましたが、事
PARIMA Tokyo Conference 開催
去る10/19(木)に赤坂インターシティカンファレンスにて、2018年以来のPARIMA Tokyo Conferenceが開催されました!
PARIMAについてはこれまでもnoteを書いていますが、シンガポール発のアジアパシフィックエリアの被保険者団体であり、保険会社やブローカー、鑑定会社やアシスタンス会社など、保険関連業界のみなさまのスポンサーにより成り立つ組織です。
毎年アジア各地でカン
日経記事解説: 保険ブローカー活用の時 カルテル疑惑再発防止の切り札
本日掲載された以下の記事は立場を問わず企業保険関連業務従事者には重要ですので、記録も兼ねて僭越ながら記事解説を書かせていただきます。
まず、大手企業の損保契約におけるカルテル疑惑問題に対するキープレイヤーとして、保険ブローカー(保険仲立人、以下ブローカー)が挙げられていますが、プロの仲立人を活用するためには、そのノウハウを最大限引き出すためのリスクマネージャーも必要になります。ブローカーは保険リ