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中卒の話


私には話し相手がいないので、
ここに書く。仲間と家族の話だ。

■「中卒」

・・・ときどき昔の仲間のことを思い出す。

サラリーマンをやっていた頃のことだ。
同僚に「合コンに行こうぜ!」と誘われ付き添った。
居酒屋で2対2で男女向き合った。

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女性はOL二人組。話を聞くと先輩の顧客とその友人。
・・・だから最初はまるで接待みたいなものだった。


酒が入ると。それなりに話も弾む。
会話の中に存在した敬語も少しづつ数を減らしていった。

そして生まれや育ちの話になった。
酒と話の流れの勢いで同僚は言った。

「オレはぁ中卒だから!」

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・・・すると女性たちは笑顔でこう言った。

「学歴なんて関係ないよね!」

「そうそう!有名な〇〇社長も中卒らしいよ!」

「〇〇くんの話、面白いから頭の回転はやそ~」

「わたし大学行ってたけどバイトしてた記憶しかないよ~」


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彼女たちの表情からも。話の内容からも。
もちろん嫌味など・・・微塵も感じられなかった。
そして合コンが終わり際になると・・・
「連絡先交換のイベント」がある・・ハズなのだが。


・・・笑顔でかわされ。

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解散。(いつものことだけど)

また男二人。肩組んで。寂しく2軒目に突入した。

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私が酒を飲めないせいか。彼は余計に飲みすぎていて
ベロベロになった同僚は、いつになく愚痴っぽくなっていた。


「おい!!おまえ・・・中卒でまともな人間見たことあるか?」

「・・いや?見たことないなぁ~」と私は中卒の彼に軽口を返した。

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ちなみに私は高卒だけど。地元で最底辺のバカ私立高校。
「名前が書ける」「ハイ!と返事が出来る」
この二つが出来れば入れるところだ。

私の軽口を聞いた同僚は満足げな顔をして。

「そーだろぉ?」と言ってガハハと大笑いをした。

そして「なーんにもわかってねぇんだよ・・あいつら」と言う。

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同僚が言う『あいつら』とは、合コンの女性だけじゃない。
私たちいわゆる『底辺』以外の『全ての人間』を指している。

合コンの彼女たちが連絡先交換を拒否したのは、
彼が中卒だからではない・・・はずなのだが。

どうしても拭いきれない
劣等感が彼にはあるのだ。

恵まれた環境に生まれたすべての人間は・・・『敵』

・・・それは言い過ぎかもしれないが、
彼らは心のどこかで自分たちとは『相容れぬ存在』と感じているのだ。

3件目に向かう途中。
さらに酒に酔った同僚が言った。

「みーんな俺たちのこと・・・
 死んだほうがいいと思ってんだぜ?」

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