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知らなかった場所が好きになる。

私は今の住まいに引っ越してきてようやく1年になろうとしている。

今までは生まれ育った実家に30年、また彼氏だったオットの家に転がり込んで約10年。

どちらも同じ区内であったので、特に目新しいこともなかった。

基本的に車移動だったので、歩きや自転車で動いたのは主に幼少期を過ごした実家近辺だったと思う。

オットの住まいだった地域も多少なりとも散策したとはいえ、そこまで愛着のある場所だと思わなかった。

今の住まいは実家の地区の隣の隣の地区なので、そんなに離れていないし、なんなら会社と実家は車で10分圏内である。

実家から会社へ通った方が近くて便利なのである。

そうは言っても、マイホームを建てたのだから多少の不便は気にするよしもない。

オットは前に住んでいた場所が利便がよく、住みやすかったと言っていた。

確かにそうだったかもしれない。

正直言って、今その土地を離れてみて、ずっとそこから出たかった私ですらそう思っている節はある。

地域だけで言えば、この住まいはあまり治安は良くないと思う。

「暴走自転車に注意」というステ看板が家のそばの道路沿いに置かれているし、

夜半にアパートのゴミ捨て場の花壇に腰掛けて語らう若いカップルもいる。

よくないところを挙げればキリはないのだ。

逆にいいところもある。

私はこの地域のお店が好きだ。

お店は働いている人の人柄が色濃くでる場所だから、店員さんの態度が店の顔になる。

家から車で5分ほどにある地域密着系のスーパー。

置いていある商品は基本的にそこまで安くない。

とはいえ、品質が良く、たまに掘り出し物があったりする。

また、地元のメーカーを応援しているようで、そこで作られたお菓子や餃子など積極的に販売している。

逆に簡単にいけそうにもない地方都市のコアな食材などもフェアを開催して扱っていたりもする。

ミニマムながらに味の濃いぶどうのようなお店だ。

地域密着系とはいえ隣の区にももう一店舗あるので、

ここと同じ感じだろうと思い、訪ねてみたことがあったが全く雰囲気が違くて驚いた。

それを感じてから、先にも書いた通り働いている人や客層の人柄が色濃く出るんだなあと納得した。

この店舗の何が、こんなにいい雰囲気なのか考えてみると、お年寄りが多く来店すること、に尽きるのではないだろうか。

お年寄りは高くてもいいものを手に取りやすい。

成城石井に通うようなセレブじゃなくても、

たくさんはいらないのだから、少なめで割高であっても美味しいものを手に取るのではないのだろうか。

そして、そんなお年寄りに優しく接するのがスーパーの店員さんなんだと思う。

私は中年なのでまだカテゴリ的にはお年寄りではないが、その優しさのおこぼれをいただきながら

レジ前でマゴマゴお財布を出し会計してもらっている。

雰囲気が好きなので、仕事で荒んだ時など、買い物に行くと癒やされるのが不思議である。

こんなお気に入りのスーパーが家のそばにあるなんて、本当に恵まれたと思う。

私自身がお婆ちゃんになってもきっと通うだろう。それまで閉店しないでいてほしい。

あまりのスーパー愛に話が逸脱して申し訳ない。

そして近所には、食べ物屋さんもなかなか多く点在している。

一番多いのは焼肉屋さんだが、どれも個人経営できっと美味しいのだろうけど、

それゆえに料金に天井がなさそうでなかなか入る勇気が出ない。

そしてイタリアン、カフェ、ラーメン店…実に色々取り揃っている。

どれも車じゃなくても行ける距離にあるので、車を乗らなくなったら歩いて楽しめそうである。

逆にいつも車で行きたがるのに、近所にこういうお店があると知ると

不思議と歩いてでも行きたくなるのが食いしん坊の定めである。

今日もそこそこ評価の高い中華そばを食べに行ったのだが、

女性1人でも入りやすくて美味しく、感動すら覚えた。

1人で行ったせいで感動は誰とも共有できなかったが、今度は出無精なオットを連れ出して行ってみたいものである。

お店ばかり紹介して興奮してしまったが、実は学校と公園も案外多い。

住宅も多いので、あまり開放感はないが、公園を歩くのも気分がいい。

近所を歩いていくと、普段は車で通り過ぎる場所もゆっくり眺めながら通ることができる。

こんな小道に遊歩道があるとか、こんなところにお店がとか、色々と刺激も多い。

ふとgoogle Mapをひらけば、大きな通りからはわからないようなお店が奥まってあったり、

本当に色々楽しい。

ずっと車生活だったのに、たまに歩くことがこんなに楽しいことなのかと思う。

もちろん車も楽しいのだが、この知らなかった土地が好きになっていくことが楽しく思うようになった。

この先どのくらいここに住んでいられるか、それはわからないが

会社を勤め上げて、のんびり余生を自分の足を使って過ごせるように

今からでも歩くことを心がけるべきだなと思うようにもなった。

そういう意味でも、たまの近所散策は楽しく、そして有意義なのかもしれない。

まあ、結局歩いて消費するものより、食べ歩いて摂取するカロリーは上回るのだと自負している。


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