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イディオムに対する考え方の手順

そもそもイディオムってなんやねーん!

2つ以上の単語が1セットになり、その単語同士の意味を足し算したり掛け算したりして、別の意味を作り出す。それがイディオムという単語の種類です。たとえば以下のような足し算・掛け算を行うことができます。単語の組み合わせによって、いろいろな意味を作り出すことができるんですね。だからイディオムは、なぞなぞクイズが好きだと、面白さが倍増するかもです。イディオムにも、なぞなぞにも、共通しているのが「柔軟な思考」なんですね。(ちなみにわたしはなぞなぞはそんなに興味ないですが、イディオムの意味を考えることは大好きです!)

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(例) 動詞「take」を軸に、副詞を足し算・掛け算した図

例の図を見てください。「take」は「(自分の意思でなにか)を取る」という意味が軸にあります。この軸に、前置詞を含む副詞を足し算・掛け算していくと、それぞれの副詞の意味がtakeと合わさり、図のように意味が変わっていきます。

意味の広がりは無限大と考えていい

図では1つのイディオムにつき1つの訳をつけていますが、ためしに手持ちの辞書で「take off」を引いてみると、訳し方の種類が34番までありました。足し算だけでなく、掛け算をすることができるので、実際にはもっと増えるんです。

わたしの言う、意味の足し算というのは、
「take」は「取る」で、「off」は「離脱」だから、「離脱を選び取る⇨取り去る」ね~!
という単純な考え方です。

一方で意味の掛け算というのは、
「take」は「取る」で、「off」は「離脱」だから、
・「今いる場所からの離脱を選び取る⇨出発する/離陸する」
・「今やっていることからの離脱を選び取る⇨~に取り掛かる」
・「今の悪い状況からの離脱を選び取る⇨急に商品に人気が出る」
・「体から衣類の離脱を選び取る⇨洋服などを脱ぐ」
・「体からヒゲの離脱を選び取る⇨ヒゲを剃り落とす」
・「体から体重の離脱を選び取る⇨減量する」
・「仕事から体の離脱を選び取る⇨仕事を休む」
・「名簿や計画から参加者の離脱を選び取る⇨~を除外する」
・「外の世界から自分の離脱を選び取る⇨~に熱中する」
こんなふうに意味が広がっていく様子を意味しています。(ふつうは前後に文章があり、その文脈から意味を推測します!)

意味広がりすぎワロタ…暗記するのは無理ゲー…

たったの2語から、こんなにありとあらゆるシチュエーションに対応してくれるなんて、なんてtake offは万能なんだろう!と感動する人もいるかもしれません。だけど大半の人は、こんな意味の広がりを見ると嫌気がさしてしまいますよね。意味の推測をするヒントが前後にあるとはいっても、やっぱりいろんな意味がある単語はしんど~い!うんざりだ~!と思うでしょう。

ではなぜウンザリするのか?

(自分の気持ちの原因となるものを理解しようとしてください。学習のモチベーションをあげるために、自己分析をするんです!)

それは、真面目な人であればあるほど、「新出単語はとにかく暗記しなければいけない」という素晴らしい学習姿勢があるからです。そして実は勉強に手を抜きたい人も、「とにかく単語を暗記すればギリギリのラインはクリアできるだろう」と考えがちです。

どちらのタイプも、「暗記をすれば済む」はずなのに「そんなにたくさんの暗記はできない」というジレンマに陥ってしまうんですね。「解決策が分かっているのに、その策は実施・成功しにくい。でも他の策が分からない!という状況にある」とひと目で判断し、ウンザリしてしまうんです。

どうすればいいのか?

まずイディオムの構成要員となる副詞を理解していく必要があります。上の図で挙げた副詞はほんの一部ですね。まだまだあります!

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イディオムになる副詞のイメージ一覧表(印刷用はここから

この一覧表は、各副詞が使われているイディオムの使用頻度を調べ、高頻出のイメージをざっくりとまとめたものです。あくまでもざっくりですよ!

3段目真ん中にある「off」を見てみると、「分離」という大きな枠組みの中に「離れる」「発する/放つ」「減る/終わる/済ませる」というサブカテゴリーがあります。さらにその中に、もう少し詳しい意味の広がりを掲載しています。数が多く見えますが、辞書よりかは数を絞って、さらに重要度の高いイメージを選んでいます。つまり取捨選択ができている状態を作れます。学習効率がいいのです!

じゃあこの表を暗記すればいいんか!?というと、そうではありません。暗記することから一旦離れましょうね!この表は、気になるイディオムが登場したときに、辞書を引くよりも先に、自分で足し算・掛け算して考えてみるために使ってください。

イディオムへの取り組み方

1.なにか英文に触れる

読解問題や英文法の問題をやるもよし。ニュースを読むのでもよし。映画を観るのでも、洋楽を聴くのでもよし。イディオムのためになにかするというよりかは、普段の英語学習や趣味活動をふつうに行ってください。

2.気になったイディオムをメモする

イディオムは当たり前にたくさん出てきますので、出てきたイディオム片っ端から全部分解バラバラにして計算してやるよ!と意識を高くしすぎると、たぶん疲れてしまうかもしれません。数あるイディオムのなかから取捨選択をして、学習する対象を数個に絞ってください。

選ぶときの基準は、英文や字幕や歌詞カードを読んだり聞いたりしたときに、
・前後の流れを踏まえても、100%意味が伝わってこなかった
・文脈的になんとなくこうかな~と思ったけど、本当に合ってるのか不安だ
このように感じたものを最優先しましょう!

もしかしたら、イディオムかどうか分からない場合もあるかもしれません。「This is the English lesson which I take on Monday.」
このように時間の情報が文末にある場合や、
「This is the English lesson which I take at school.」
このように場所の情報が文末にある場合、それは動詞takeのイディオムではありません!これらは文章の終わりに置かれている「時間・場所の情報を示す副詞のカタマリ」です。よく分からない場合、このように時間・場所の名詞とセットになっている前置詞は除外するといいかもしれません😉

3.学習するイディオムを選抜する

さらに選んだイディオムを以下の2つのカテゴリーに分類します。
・動詞の意味は分かる
・動詞の意味が分からない
このうち「動詞の意味が分からない」イディオムはいったん除外します。なぜならば、イディオムの足し算・掛け算をできるようにするために、今は副詞の意味を覚えることにエネルギーを注ぎたい段階だからです。動詞の意味が分かってないと、足し算しようにもできないですね!

この段階を経てみると、もし10個メモしたとしたら、半分くらいには減ったでしょうか!?

4.副詞一覧表を参考に意味を足し算・掛け算してみる

副詞一覧表を取り出して、動詞と副詞の意味を足し算・掛け算しましょう。

辞書は非推奨ですが、副詞一覧表だけではなんの意味も出てこない場合のみ、まずは副詞を調べてみてください。1つの副詞につき10個くらいの意味があるはずです!

実際にやってみせて!

わたしはこの今Quizletで英検1級単語を学習していて、「feed off A」という単語の意味「Aを利用する」がなかなか覚えられなくて、困りました。「feed」は「餌(ごはん)を食べさせる」で「off」は「離脱」だけど、なんでそれが「利用」になるのかうまく足し算・掛け算できなかったんです。Quizletは単語のみ登録されているので、前後の文章から意味を推測することもできないんですよね。

まず「ものを~させる」と「ものを~する」じゃ目線が違うのが引っかかりました。「人にさせる」と「自らする」と、という差です。そういうわけで「feed」には「自らする」系の意味がありそうだ、と推測しました。案の定辞書には「食べる」という意味が乗っていました。(検索すると、I am feeding the sheepという文が使われている小説がヒットしました)

これで立場は理解できます!下準備完了!あとは「食べる」と「off」で、なぜ「利用する」になるのか、という問題です。動詞の意味が正しく理解できたので、副詞offの意味を英辞郎で調べました。そうしたら8個ある副詞の7番目の意味が「最後まで」でした。

ついでにグーグル検索でも検索したところ、google bookの「The Two-word Verb: A Dictionary of the Verb-preposition Phrases in American English」という本がヒットしました。p18からp19にかけてoffの意味の広がりが書いてあったので、分かりやすいようにスクリーンショットを撮影し掲載しました。

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引用元:The Two-word Verb / George A. Meyer 著

10個意味があるんですが、最後の「To a complete or satisfying degree; in a congenial way」(完璧か満足できる程度まで;しっくり来る方法で)が、先ほどの「最後まで」に当てはまるかなと思います。
※10個中10番目にあるということは低頻度の出現率、つまりあまり役立たないほうの意味です!

これでようやく意味の足し算ができるようになりました!

「食べる」+「最後まで・完璧に」=「(好きな野菜も嫌いな野菜も)最後まで完璧に食べきる⇨(好きな野菜も嫌いな野菜も栄養分は)なんであろうと(体が利用するために)食べる⇨食料源として利用する」

これを読んで、こじつけじゃないか!?本当にそうなのか!?って感じたかもしれません。

でも、たとえオリジナル解釈だとしても、自分で考え、調べたことって、すごく記憶に残るんです!1度きりではいずれ忘れる可能性が高いですが、何度もこの体験をすることで、少しずつ覚えていきます!しかも、単に単語と意味を覚えるのではなく、柔軟な思考力・発想の転換をする力も養っていけるんです。お得ですね♬

余談ですが「利用する」という言葉からは、「良い意味で情報などを利用する」のか「悪い意味で他人や状況を利用する」のか、という2つのニュアンスが生まれます。動詞によっては良い意味(🔺)にも悪い意味(🔻)にも使えますし、片方どちらかの場合のみに使える動詞もたくさんあります。英文読解を文脈から推測する場合、このポジティブ・ネガティブ判断がとても大きな役割を果たすんです。手間だと思うので気が向いたら調べてみるくらいでOKですよ!

というわけで最後は「feed off」を調べました。結果は、両方の意味で使えることが判明しました!
🔺「feed off poverty」(貧困を糧にする)(google検索は464件)
🔻「feed off other peoples' unhappiness」(人の不幸を食い物にする)(32件)

新たにweblio辞書で調べたところ、feed offが使われた共起表現が12件しかなく(feed onだと2504件)、「Many mammal and bird species feed off the berries」(多くの哺乳類と鳥類はベリー系の果実を食料源として利用する)のように生態系の説明をしているものが多かったです。


と、まぁ、なにもかもをこんなに突っ込んで調べる必要はありません。わたしも、沼のようにずぶずぶと知識を掘り下げていくのがおもしろくて、ついつい深追いしてしまいます。だけど、この作業を出会う全部の新出単語にやっているわけではないんです。むしろQuizletの単語リストにある単語100個中の、唯一の1個でした!笑

不思議だなーなんでだろうなーと思った瞬間が、楽しい学習の入り口です。自分の好奇心を見逃さないようにする、というのがまず気をつけたいところなのかもしれません😃


ちなみに形も広がっていく

これまで「take off」の意味の広がりに着目しました。実は、イディオムに更に単語を足して、意味をもっと明確にしていくことができます。「take for」というカタマリを軸に考えてみましょう。こいつに単語を加えます。
・「take A for granted」(Aを与えられていると思う⇨Aを当然だと思う)
・「take A for B」(AをBだと思う⇨AをBと間違える)
センター英語でよく見かけますね。これらのイディオムを覚えるときも、まずは「take」と「for」のそれぞれの意味を理解する。そして「take for」の意味を理解する。さらに「grant」(与える)の意味を理解する、という手順をとってみてください。


今回は意味の広がりを分かりやすくするために1つの動詞で行いましたが、イディオムは、名詞にも形容詞にも副詞にも存在します!のちのち、連載していくなかで取り上げますね。

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