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京ことば「かんにんしておくれやす」

京都の山奥にある宿坊や東山の有名料理旅館の案内を何気なくみていたら、ふと「かんにんしておくれやす」という言葉が浮かんできた。

客室数4室、ペット不可、お子様不可
「不可」と書かれた文字が、私の中では「かんにんしておくれやす」に自動変換される。

「かんにんえ」とか「堪忍やで」も話し言葉でよく使われる。
「申し訳ないけど、、、(それでも、絶対無理やねん。)悪いなあ〜。また今度お願いします」という意味で使う。

(絶対無理。不可)という固い漢語が深く沈み込んでいて浮上してこないが、短く漢語に翻訳するなら要は、そういうことなのだ。

聞こえは優しいが、そこにははっきりとした境界線が引かれており、「そんなことをそもそも聞いてくるなんて、なんて常識のない人なん?」という行間の感情まで伝わってくる。

「かんにん」と聞けば、「不可」と覚えておこう。
「かんにんさしてもろうてます」=「あなただけではなく、皆さんにお断りさせてもらっております」

京都には、今日もたくさんの観光客が詰め寄せてくる。パンデミック中にゆったりと京都を味わえた住民もまた「観光で食べている街やから、ちょっと辛抱しようなあ」と思っているに違いない。海外からの観光客が増えたことで、英語や中国語を話す人が京都にずいぶん増えたしオンラインの情報も豊かになった。そこで「不可」「No!」と言ってくれているおかげで随分、コミュニケーションギャップが解消されているように思う。

というのも、京都で育った私ですら、「言うてはることは、わかるけど、本音は何?どういう意味?」と迷うことが多かったのだ。

私がただ常識がなかっただけかもしれないが、「三代京都に住んでいない人は京都人とは呼べないという」と言われるのは、そう言う深く沈み込んだ境界線と思いと思いやりを理解してくれる仲間探しなのかもしれないと思う。
私の母ように、京都に嫁いだものの京文化に受け入れてもらえなかったと思っていた人に伝えたい。
「自分を外国人だと思って、どんどん京都を楽しんで遊んで欲しい。京都人が普段学ばないことにも挑戦して、旅人のように楽しんでみて。そして、よそ者同士、楽しみを分かち合えばいい。そこに飽きれば、また別の遊びを探せばいい。そして、地域のこともしっかりとやってみれば、それもまた楽しい。」

そして、もし私が京都に移住したら、やはり「外国人」のフリをして良いとこドリをして生きていくことだろう。