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ねこのおたまさん

猫を飼っている。
名前は『たま』。
よく『おたまさん』と呼んでいる。

みかえりおたまさん


正式な名前は『たかはししらたま』として動物病院のカルテに登録されており、毎回病院のカウンターで「たかはししらたまです」と申し出ている。名前は『しらたま』だが、『たま』として接しているので本当の名前を言うとなんだか嘘の名前を言っているみたいに感じる。『たかはし』と付けるのもなんだかおかしな気がするが、飼い主の苗字をつけるのがその病院では決まりだそうだ。さらに言うと、私が「たかはししらたまです」と申し出るのも変な感じだが、猫は自分の名前を「にゃ ー」としか表現できないので仕方ない。

おたまさんは以前勤めていた会社の上司の娘さんのお家より譲り受けた。当時生後2ヶ月。「猫飼いたい」と2日に1回くらい呟いてた私だったが、いざ飼えるなると急に不安になってきて、女手ひとつで育てていけるかしら … と一種のマタニティーブルーになってしまった。今は逆に、先立たれた際に後追い自殺しないかが心配である。

親兄弟から引き離し鞄に詰め込まれたおたまさんは、奉公に出される『おしん(連続テレビ小説)』のようで、とても良心がいたんだ。
しかし、たかはし家に着いた瞬間から、おたまさんは親兄弟の存在を一瞬で忘れ家の中を我が物顔で走り回るのだった。猫とは薄情な生き物だ。

おたまさんは今年の9月6日で4歳、人間で言うと32歳となり、なんと本厄にあたる。病は気からというが、何事もなく健康でいてほしい。ほんの少し前まで子ギャルだったのだが、猫の成長は本当に早いなぁ、とちいちゃい頃の写真を見て涙ぐむのだった。

おしまい。


こちらの記事は、2021年に東京・末広町のPARK GALLERY様で行った個展「石ころをひろった」に際し、PARK GALLERY様のNOTEにて連載させていただいたエッセイです。
【PARK GALLERY】
https://park-tokyo.com/
https://note.com/park_diary


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