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セリフはなくったって・・・

 随分と昔ですが、私ポンコツ女子大で、日本文学なんぞ学んでいました。

高校の時、古典の先生が、伊勢物語を1年かけて取り上げてくれて、

それがとてつもなく面白かったので、もう日本文学しかない!と思い込んだ

わけですが、第一志望の大学に見事に落ち、失意の女子大で、早々に 日本

文学にも嫌気がさしてしまい、必要な単位もとってしまったので、劇芸の授

業ばかり受け、それが結構 興味深かったです。

 演劇のゼミだったかな?ある教授が、芝居の券を数枚持参してきては、

学生に配ってくれました。人数の少ないゼミだったのですが、

券を先生が配り始めると、全員がわらわらと席をたち、争奪戦の様相・・・

劇団の養成所の芝居くらいしか見たことがなかったので、教授が配ってくれ

た券はありがたかった!

 中でも、強烈に印象に残っているのが「心中天の網島」。主演は

平幹二郎さんと、太地喜和子さん。演出 蜷川幸雄さん。お二人の演技力は

言うまでもないのですが、とにかくライトの使い方に至るまで演出が秀逸!

一番感動したのは、セリフのない江戸庶民の動きが、とてもリアルだったこ

と、本当に、江戸にタイムスリップしてしまった感がありました。

ただの男1や女3ではなくて、大工さんや 左官屋さんや、行商人や、女将

さんや、世話付きのおかみさんたちが、目的をもって、生き生きと動いてい

ました。みんなが それぞれの役わりを完全に演じきっていたのです。

これはもう、細部にいたるまでの演技指導なしでは、考えられませんね!

この庶民の普段の生活の 生き生きとした躍動感が、主役の二人の心中とい

う悲劇を、効果的に浮き彫りにしていたのです。

 その後、私も人生色々(?)でしたが、無事に結婚して、伊豆地方に住む

ようになりました。蜷川さんのお芝居は、絶対に見ようと思っていたのです

が、煩雑な日常生活にまぎれて、ついついと延ばしているうちに、蜷川さん

は、彼岸の方となってしまいました。

 嗚呼、後悔先に立たずとは、こういうことだったのね!

せっかく 蜷川さんと同じ世代を生きてきたのに、そのすばらしいお芝居を

見なかったとは! 特に、シェイクスピアがみたかった。どんなに凄い セ

リフさばきだったことか!

 

 趣味で、声楽なんぞ習っているので、NHKBSで深夜時々放送してくれる

海外オペラが、大変ありがたく、毎回録画しています。日本のオペラでも

券が高額で買えないので、海外オペラなど、とっても手がでません。

しかし、海外のソプラノ歌手の方は、衣装も乱れ胸もあらわに、時にはベッ

ドシーンさながらに、超高音で歌う。凄すぎる・・・といつも圧倒されま

す。ただ、時々 周りのコーラスの方たちが、ぼっと突っ立っているだけの

時があり、その時は、ソプラノのアリアだけを聴き、あとは早送りしてみま

せん。演出 つまらないな・・・と推測できるからです。


 先日、私が大好きな眞栄田郷敦君が出演していたので、プロミスシンデレ

ラをみました。いやぁ、郷敦君は素敵だったけど、内容はひどかった・・・

早送り、しまくりました。とくに芸能事務所社長の西園寺(かたせ梨乃)の

とりまきとおぼしき若者数人が、ぼっと突っ立ってるだけなのに驚いた。

何してるの お兄さんたち?早送りしているので、彼らの存在が意味不明で

わからない。いくらセリフがないとはいえ、その役を全うしてくれないとね

見るほうも白けるのよ!仲居さんとか、旅館のスタッフの男性も、セリフの

ない人は、ただその場にいるだけ。これでは、どれだけ主役や脇役の役者さ

んが頑張っても、ドラマの質はあがりません!おそらく、セリフのない人に

は、細かい演技指導がなかったのでしょうね。だから「男1」や「女4」で

その場に邪魔にならないようにいるだけ・・・いやぁ~、ダメだぁ・・・・

と、思ってしまいましたのよ、私。

でも、郷敦君みたさに、最終回まで録画して、とばしとばし見ますけどね!

 セリフはなくったって、演技指導は必要・・・ですよね?




 




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