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【#1】 ふるさと納税っていいの?〜まずは現状を知ろう〜

本シリーズは、新社会人となり、ふるさと納税に興味を持った筆者が「本当にふるさと納税っていいの?」という疑問に答えるために、1ヶ月間調べた結果をまとめたものである。

本記事では、「ふるさと納税ってなに?」「ふるさと納税ってなんで始まった?」「ふるさと納税の現状は?」といった疑問を解消していく。

本シリーズが、ふるさと納税について考えるきっかけになれば幸いである。


ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、2008年・第一次安倍政権の時に、当時の総務大臣の菅義偉氏のもとで始まった。この制度は、​​都市と地方の財政収支のアンバランスさを是正する試みの一環として導入された。

個人が任意の自治体に寄付をすると、その寄付金額のほとんどが所得税と住民税から控除され、実質的な自己負担は2000円だけとなる。控除を受けられる金額は、家族構成や年収によって上限が決まっている。

例えば、10万円寄付した場合、98,000円が税金から控除され、実質的な負担額は2,000円となる。

しかも、寄付した自治体からは感謝の意を表して地域の特産品が返礼品として提供されることが一般的で、寄付の用途を選べることもある。

ふるさと納税はなぜ始まったのか?

では、なぜこの制度が始まったのか。
そこで、創設者・菅義偉氏の発言を引用したい。菅さんは秋田県出身の方だ。

総務大臣になって調べてみると、当時、生まれてから高校を卒業するまでの行政サービスに自治体は、約1,600万円かけていました。それだけかけて育ててくれたのに、いざ、自分が働いて、税金を納めるとなると、住んでいるところ、つまり都会になるのです。やはり、こうした仕組みが必要だと改めて確信し「今やらないで、いつやるのだ」という固い決意で、制度創設を表明しました。

出典:https://furusato-nippon.com/column/detail/164

つまり、地方の税金を投下して育った若者が大都市に流出することで、地元ではなく大都市に納税しているという現状をどうにかしたいと思って始まったわけだ。

というわけで、2008年にふるさと納税は始まり、今年で16年目を迎える。

ふるさと納税の現状は?【数字で見る】

ふるさと納税の寄付額

2023年のふるさと納税額が過去最高の1兆円を超える見通し(日経新聞調べ、夏に正式な発表あり)。1兆円を超えていれば、4年連続で過去最高値を更新することになる。

出典:総務省

また、日経新聞の調べによると、2008年〜2022年の寄付の累計額の89%は三大都市圏(首都圏1都3県、大阪府、愛知県)以外の地域への寄付となっている。

ふるさと納税の利用者数

総務省によると2023年度のふるさと納税寄附額は約9,654億円、納税寄附件数は約5,184万件、と過去最高を更新している。十分な普及が進んでいるようだが、納税義務者数に占める利用者数の比率は約14.9%とまだまだ伸び代がある。

(意外と利用者が少ないように感じないだろうか?筆者の周りには多くの利用者がいたため、5割は超えていると思っていた)

大きな傾向としては、大都市圏ではふるさと納税の利用率が高くなっている。ふるさと納税の利用率を都道府県別で調べると、上から順に「東京都 22.9%」「大阪府18.8%」「神奈川県 18.6%」「兵庫県 17.8%」「愛知県17.2%」と並んでいる。総計では、寄付した人の56%が三大都市圏の住民となっている(2022年時点、三大都市圏の人口が占める割合は約42%)。

ふるさと納税の実質収支*

*実質収支= 寄付受入額-ふるさと納税の運営経費-住民税控除額

ふるさと納税に対する批判として、受け入れの寄付額よりも、返礼品を用意して郵送する経費や他自治体に流出してしまう控除額が上回ってしまい、実質赤字の自治体が多いと言われてきた。

東洋経済の調べによると、2022年度は488自治体(全自治体の28.4%)が実質収支マイナスになっている。マイナス額を上から順に並べると「横浜市(259.1億円)」「大阪市(140.6億円)」「名古屋市(118.6億円)」「川崎市(113.1億円)」「世田谷区(85.9億円)」となり、大都市圏の自治体は損する制度になっていることがわかる。

次回は、ふるさと納税の意義について考えてみる。


<参考文献>
ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和5年度実施)
23年度のふるさと納税、1兆円超えの公算 市区調査1割増
ふるさと納税、潤う地域に偏り 寄付累計4兆円のひずみ
ふるさと納税の現在地~2つの調査結果より
ふるさと納税の都道府県別「利用者数・利用率」と「平均寄附金額」
実質収支全国マップ ふるさと納税のリアル
寄付額1兆円突破「ふるさと納税」大衆化の危うさ
ふるさと納税「収支マイナス」自治体ランキング


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