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トートロジーのからくり?の一つ

これまでの内容については、
電流が流れるか流れないか学(電流学)|カピ哲!|note
をご覧ください。

 以下の前原の証明について、これを回路分析的に考えてみよう。

 (前原昭二著『記号論理入門』日本評論社、46ページ)


・・・これは(A∧¬B)∧(A→B)という前提からどんな命題を導けるのかという問いでもある。(A∧¬B)からはAと¬Bが導かれ(∧除去)、それぞれが(A→B)とどのように影響しあうのかを見ていくのである。

(A∧¬B)∧(A→B) は、
A∧¬B∧(¬A∨B) と変形できる。これを図45のように回路図で示せば、これが矛盾回路であることがよく分かる。

図45A∧¬B∧(¬A∨B)は矛盾回路

 つまり((A∧¬B)∧(A→B))→X のXが何であろうとこの複合命題は常にトートロジーであることが示される。仮にXを(前原氏に倣って)⋏とすれば

((A∧¬B)∧(A→B))→⋏
(※ ここでは⋏は何らかの矛盾回路として取り扱う。たとえばA∧¬AとかD∧¬Dなど。)

・・・となる。⋏はCでもDでもC→Dでも全体としてはトートロジーとなるのだが、ここではとりあえず⋏を選択しておく。
 さらに演繹定理を用いれば以下のように変形できる。

((A∧¬B)∧(A→B))→⋏
(A∧¬B∧(A→B))→⋏
(¬B∧(A→B))→(A→⋏)
(¬B∧(A→B))→(¬A∨⋏)
⋏は(並列に繋がれた)矛盾回路なので除去可能である。つまり
(¬B∧(A→B))→¬A
となり、さらに演繹定理により、
(A→B)→(¬B→¬A)
となる。

 ((A∧¬B)∧(A→B))→⋏ からは別のトートロジーも導ける。以下の証明について考えてみよう。 

(前原、前掲書、169ページ)

 この証明も、一つの式で示せば以下のようになる。

((A∧¬B)∧(A→B))→⋏

これをさきほどと同じ要領で変形していく。

((A∧¬B)∧(A→B))→⋏
(A∧¬B)→((A→B)→⋏)
(A∧¬B)→(¬(A→B)∨⋏)
⋏は並列に繋がれた矛盾回路であるから除去し、
(A∧¬B)→¬(A→B)
というトートロジーが結果として導ける。

 さきほど、⋏のかわりにCでもDでもC→Dでもなんでも良い(回路全体としてはトートロジーとなる)と述べたが、それらも結局は⋏から任意の命題を導くことができるEx falso quodibetにより証明されてしまう。

((A∧¬B)∧(A→B))→C
(A→B)→((A∧¬B)→C)
(A∧¬B)→((A→B)→C)

これら皆、証明可能ということである。
 とりあえずX→Y(X、Yは複合回路でも良い)の前件が矛盾回路であれば、X→Yというトートロジーは常に証明可能ということになるのである。そしてそこから演繹定理で導かれた命題も証明可能なトートロジーということになる。


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