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命題論理を電子回路として解釈する(論理学ではなく電流学)

命題論理を電子回路として具体的に解釈してみよう。

図1 論理回路

(野矢茂樹著『論理学』東京大学出版会47ページより)

 X、Yの電磁石に電流が流れスイッチがオンあるいはオフになったとき、電流が回路に流れるのかどうか・・・ということである。これならば真理表の形式も問題なく使うことができる(表2)。
 しかし厳密にはこれは”真理表(真理値表)”ではない。電流が流れるか流れないかの表、とりあえず本稿では”電流表”と呼ぶことにする。電流が流れる場合はon、流れない場合はoffと示すことにしてみよう。とりあえず論理学に倣ってand-回路をX∧Y、or-回路をX∨Yというふうに表現しておく。

表2 電流表(and回路or回路)

 繰り返すが電流が流れるか流れないかを真偽関係と混同してはならない。これらの関係を私たちの日常生活における言語の意味、あるいは日常生活における論理から説明しようとすると”論理的に”辻褄が合わなくなる(それが論理学である)。
 次にif-回路に関して野矢氏は次のように回答されている。

図2 if-回路

(野矢『論理学』226ページより)

 これを実際の回路図として示すと下のようになる。

図3 実際のif-回路

(下手な手書きですみません)

そして上記の回路において以下のような電流表が作成できる(表3)。

表3 if-回路の電流表

 ここでも誤解してはならないのだが、if-回路といっても「(もし)XならばYである」という言語的な意味を全く持ち合わせていないことは明確に理解しておかねばならない。本稿ではとりあえず論理学に従いX→Y、あるいはA→Bというふうにif-回路を表現はするが、これを私たちの日常的真偽判断と関連づけることのないようにしていただきたい。
 上記の電流表は現実世界(あるいは空想世界)における真偽判断に基づいて導かれたのではなく、ただ上記の表のようなXとYと電流の関係になるように回路をつくり上げた、ただそれだけのことである。
 上記図2・図3は¬X∨Yと見做すこともできる。ただ¬X∨Y≡X→Yとはあくまでそういう”設定”、¬X∨Y≡X→Yとなるように¬、∨、→の規則を設定して人工言語を作成しただけなのである。この同値に日常言語・自然言語、あるいは現実世界のあり方からの根拠づけがあるわけではない。
 これらのことを考え合わせた上で、本稿では”論理学”という表現はせず、仮称として”電流学”という用語を用いることとする。
 そして、次にように捉えなおすことができる。

トートロジー:電磁石に流れる電流がオンでもオフでも常に回路には電流が流れる
健全性:常に電流が流れる回路を特定の組み合わせで組み合わせてもやはり常に電流が流れる
完全性:常に電流が流れる回路は、特定の組み合わせのもとで組み合わされた回路である

 一つの例として、論理学ではトートロジーとされているA→(A∨B)について考えてみよう。

図4 A→(A∨B)の回路

Aがonということは上記二つの電磁石A両方に同時に電流が流れるか、あるいは一つの電磁石Aに二つのスイッチが連動していることを示している。上記の回路においてA、BそれぞれがonでもoffでもZには常に電流が流れることが理解できよう。

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