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彼女の一周忌を迎えて

1年前の昨日、
彼女は空を飛んだ。

家族の元を離れる時、
彼女は何を考えたのだろう。
大好きだよ。
でもさようなら、そう思ったのだろうか。

家族が迎えに行った時、
悲しみの中にも母親には、
彼女がホッとした表情をしているように見えたそうだ。

それが辛いの、
そう話していた彼女の母親である、私の友達。

そう。
友達の娘が亡くなった。

その知らせを受けた時から、
私はずっと旅をしているようだった。

現実でないどこか。
心はすぐに、そのどこかに飛んでいた。

どうして彼女が死ななければならなかったのか、
ずっと考える旅に出ていた。



ドーン

今朝、そんな音が私の心に聞こえた気がした。
もちろん気のせい。
音なんてしていない。

だけど頭の中で映像が浮かぶ。
彼女が空を飛んだあと、
どれだけの衝撃があったのだろう。
どれだけの音が響いたのだろう。

そう考えてしまうのは、
彼女の一周忌を迎えたからだけではない。

友達が、その場所に彼女の兄妹と一緒に行ってきた、という話しを聞いたからだ。

ずっと、行ってみたいと言っていた。
でも、行くのが怖い、と。
そして子どもたちを連れては行きたくない、と。

だけど、ついに行ったんだね。
その場所に。
一番連れて行きたくなかった彼女の妹を連れて。

思っていたより何にも無かった、と言った。
もっと感じるものがあるかな?と思っていた、と。

ただ、その場所に立って、
花を手向けて、祈った、と。

都会の中にあるその場所は、
何故かそこだけひっそりと、寂しい場所だった、と。

後を追ってしまいそうな妹は、
そこに立って、少し安心した顔をしたそうだ。

何を感じたのだろう。
何を考えたのだろう。
安らぎが、そこにあったとでもいうのだろうか。
姉に会いたくなったらここに来たらいい、と思ったのだろうか。
それとも、
そうあって欲しくないけれど、
死にたくなったら、ここに来たらいい、と思ったのだろうか。

んーん。
私に遺族の気持ちがわかるわけがない。

そう思いつつも、今日も涙が出る。


友達の家に通い出してから一年が経つのか。
「早いな」そう、先日友達に言ってしまった。

いま、そのことを悔いている。
早かった、というのは私の感覚。

友達にとっては、今までにない苦しみを抱えた、
長い長い一年だったはず。
彼女をずっとずっと探し続けて、けれどどこにもいないということを認めざるを得ない、果てしない悲しみを抱えた、長い長い一年だったはず。

なんて無責任な言葉を吐いてしまったのだろう。

きっと謝っても、謝らなくても、友達が許してくれることはわかっている。
けれど今度会う時に、私はやっぱり謝るだろう。

そしてそこから、また話しを聞くだろう、と。
一周忌、誰々が来てくれた。
こんな話しをした。
妹の表情。こころの安定。
子どもたちの学校の様子、仕事の様子。
ご主人との会話。
親族のこと。
縁を切った母親のこと。


彼女のことを思い浮かべるとき、
私は自分の娘を思い浮かべずにはいれなかった。
彼女と同じように不登校になったことがあったから。
こころが壊れてしまった娘を思い出さずにはいれなかった。

そして、娘にそのままの気持ちを話さずにはいれなかった。
心から愛しているよ、と言わずにはおれなかった。

娘は全てをわかった上で、私は大丈夫だよ、といつも言う。
そう言って私を安心させてくれる。



今、
私はできることをするだけ。
友達を応援し、なんでも話すことができる間柄でいるだけ。

友達に心からの笑顔が戻る時を、ずっと待つだけ。


友達とその家族に、再び幸せが訪れるのを待つだけ。





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