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1日一編は詩を読む。「自分の感受性ぐらい自分で守ればかものよ」

自分の感受性ぐらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ


茨木のり子
詩集「自分の感受性ぐらい」(1977刊)所収

「現代詩文庫」思潮社にも収録


「現代詩文庫」思潮社にも収録

「初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった」
が大変染みる言葉。

ばかものよ、という
最後の怒りの言葉が心に深く響く。


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