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「寧波阪急グランドオープン」から学んだ中国ビジネスで大切な3つのこと

「寧波阪急」さんが昨日4月16日、最高の天気に恵まれ、グランドオープン(正式開業)しました。
本当におめでとうございます!

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阪急百貨店さんの海外初出店店舗。
正式開業に辿り着くまで、多くの苦労と苦難があったことと想像します。
(以下、敬称略)

今日は、中国ビジネスに興味のある日本人向けに、ぼくが
【「寧波阪急 正式開業」から学んだ中国ビジネスで大切な3つのこと】
についてお話します。

「寧波阪急 正式開業」間近になって、当日の「開業式典」を取りやめにするほどの事態があったので、この状況から参考にできる、学べる点が多いはずです。

もちろんすでに中国ビジネスに携わっている方も、中国でのビジネスで気をつけないといけないことを再認識できる内容になっていますので、最後まで目を通してもらえると嬉しいです。

<今日のポイント>
ぼくが「寧波阪急 正式開業」から学んだ中国ビジネスで大切な3つのこと
・中国と日本の歴史を考慮しよう
・中国政府との関係性は重要
・なんと言っても「中国人のニーズを掴む」ことが最大に大切

※「寧波阪急」試営業開始時の状況は下記にまとめています。
お時間あればこちらもご覧ください

※「寧波阪急」の正確な施設概要等はエイツオーリテイリング社のHPに掲載されている資料を参考にしてください。

「中国と日本の歴史を考慮しよう」

歴史のこと、ぼくたち日本人が意外と忘れがちなことですが、中国でビジネスするには考慮する必要があります。

今回「寧波阪急」が「開業式典」を急遽取りやめる(正確には延期のようです)ことになった最大の理由が、まさに戦争中の歴史事項です。

「寧波阪急」が試営業を開始した4月8日以降、中国のSNSで、こんな話題が盛り上がりました。

「日本の阪急百貨店が寧波にオープンするらしいけど、オープン日の4月16日は昔日本軍が寧波に侵略してきた日だぞ。そんな日に寧波阪急がオープンするのは、どういう意味だ?寧波をまた侵略しようとしているのか」
「そんな日に私たち中国人が日本の百貨店に買い物に行くのか」

この内容は寧波の方々の間で瞬く間に広がりました。

(会社の同僚に調べてもらったところ、
日中戦争時の1941年4月16日、日本軍が杭州から寧波へ侵略した、という内容を話題にしているということでした。)

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この話題の内容が正確かどうか、ぼくはわからないのでコメントできないですが、
中国と他国の間の歴史に関する話題が大きくなってしまうと、その話題に関する正式行事(今回の場合だと、寧波阪急の開業式典)に中国政府の方が参加しない、というのが中国の一般的ということは理解できます。

中国での商業施設の開業時には、その商業施設が出店している市のトップを主賓として迎えるのが一般で、その主賓が参加しない、となるとそもそも式典が成り立たなくなってしまいます。

という状況を鑑みて「寧波阪急」は『4月16日には予定通り営業を行うが、開業式典や開業イベントはすべて取りやめる』、という苦渋の判断をされたのだと思います。

ぼくは昔の歴史から、他国の方を恨むとか憎く思うということはありません。
日本人の多くがおそらくぼくと同じような感覚を持っているものと勝手に推測していますが、ただそれは日本だけの話であって、「日系企業が海外でビジネスをする場合、大切な日程等を決定するときには、過去の歴史のことを考慮する必要がある」ということをあらためて再確認できました。

「中国政府との関係性」

中国で日系企業がビジネスする場合、中国政府との関係性は本当に大切です。

これは、中国でビジネス経験のある日本人はほぼ確実に同意してくれる事実だと思っています。
小さなビジネスならまだ政府との関係性がなくてもそんなに問題にならないと思いますが、「寧波阪急」のように大きな規模のビジネスになると、政府との良好な関係性は絶対に必要です。
(※イトーヨーカ堂の中国進出関連についての書籍「巨龍に挑む」、「中国人のやる気はこうして引き出せ」にも、政府との関係性を大切にしていたという内容の記載があったので、この点については間違いなく大切な事項だと思っています。)

中でもとくに大切なのは、
中国政府と日本企業の間に入ってくれる中国人です。

「寧波阪急」4月16日の件を推察すると、
SNSで歴史について話題になったとき、「4月16日の正式開業」をどうするのか、阪急百貨店大阪本社と現地寧波阪急のスタッフの方々との間できっと様々な議論があったと思います。
(以前、ぼくは日本企業の中国駐在員をしていましたので、日本本社との調整は相当力を使っただろうなということは少し想像できます。)

また、寧波政府からの意見、要望ももちろんあったと思います。
「本当に4月16日にオープンするのか、何も問題は起こらないのか」とか。
(相当の圧力があったのではとこれまた推察しています。)

政府の了承、承認を取らないとこの国でのビジネスはスムーズに進みません。
(オフィシャルなもの、アンオフィシャルなものも含めての了承、という意味です。)
で、この政府との交渉・調整ですが、これは日本人では到底無理で、日本企業の意向を理解した中国人でないと交渉できない領域です。

「寧波阪急」の場合、
『4月16日は開業式典、開業イベントはやらないけど、予定通り営業します。加えて、交通誘導等については当初予定通り政府のサポートをお願いしますね。』
という形で落着したわけですが、この内容に落着するには、政府との強力な関係性がないと難しいということは、たやすく想像できます。
すなわち「寧波阪急」にはこの内容で政府と合意できる中国人キーパーソンがいたということですね。

中国でビジネスを行う場合、「中国のどの企業(個人)と手を組むか」、また「どういう中国人を採用するか」は本当に大切だと、あらためて実感しました。

「中国人のニーズを掴む」こと

「中国人のニーズを掴む」ことは、中国ビジネスを行う上で絶対に必要な要素だとぼくは思っていて、「寧波阪急」はこの点が秀逸だったなと感じています。

「寧波阪急」の正式開業時に想定外のことがあったことは上記に記載した通り。
その中で迎えた、4月16日正式開業日。
さて当日はどういう状況だったかと言うと、もうとにかく盛況だったようです。
(ぼくは当日開店時2時間ちょっとしか現地にいれませんでしたが、当社メンバー等からの報告を聞くには午後も多くのお客様の来店があったようです。)

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余談ですが、
中国の商業施設の「開業式典・開業イベント」は、芸能人・有名人を手配して、大々的に告知をして、集客を図る派手なものが一般的です。
日本の商業施設の開業イベントと比較しても、中国の開業イベントは多額の費用をかけていて、実際、その芸能人・有名人見たさに来店するお客様もとても多いです。
メンツを大事にする中国らしいな、と中国文化の一端を垣間見ることのできる場面です。

開業イベント等何もなく、ここまでの集客ができるのは「寧波阪急」が寧波の方々にとって魅力的だったという証拠だし、
歴史に関する話題等あり、ちょっと騒がれたけど、
「中国の方は良いと思えばそんな話題に関係なく来店してくれる」という証拠でもありますね。

中国のSNS等で「寧波阪急」が寧波の方々から期待されている、支持されている点を、ぼく視点でまとめてみました。
大きく3点あります。

①ラグジュアリーブランド
②日系を中心とした充実した飲食ラインナップ
③日本式の高いサービス力

① :ラグジュアリーブランド
寧波には富裕層が多くいると言われているのですが、
その寧波に今まで、ラグジュアリーブランドをフルラインナップで揃えている商業施設がありませんでした。

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「和義大道」という施設が、今まで寧波で唯一のラグジュアリーブランドを揃えている商業施設だったのですが、上海や杭州の施設と比較するとブランド数は少なかったため、寧波の富裕層はラグジュアリーブランドを購入する際、わざわざ上海・杭州まで行っていました。

「寧波阪急」は、ラグジュアリーブランドを寧波で購入したい、という寧波の方々のニーズを掴めたことが大きいですね。

余談ですが、
「中国の消費動向について」
中国は富裕層が多く、本当にお金を持っていて、コロナ禍で海外旅行できないため、有り余る資産を中国国内消費に費やしています。
そして中国では今「M型消費」と呼ばれる消費特徴が顕著になっています。
すなわち、「贅沢品」「低価格帯商品」といった、両極端の価格帯ゾーンの売上が好調です。中でもラグジュアリーブランドの売上好調さは際立っています。

中国では、中国全土で商業施設の建設、開業が相次いでいて、ラグジュアリーブランドを商業施設に誘致することは、とても難易度が高くなっています。
(ラグジュアリーブランドは、一年間に中国に新規出店する店舗数をあらかじめ決定していて、その出店枠を多くの商業施設で競い合っている状況だからです。)
当社もあの手、この手を使ってラグジュアリーブランドの誘致を行っていますが、まったく順調には進んでいません。

そんな中、中国企業でも寧波にここまでのラグジュアリーブランドを揃える商業施設を作れなかったのに、日本企業の阪急百貨店が作っちゃうっていうのが、本当にすごいことだと感じています。
阪急百貨店の底力すごいなと、ただ関心するばかりです。

② 飲食ラインナップ
中国の方は「食事」を大事にしています。
「吃好了吗?(ご飯食べましたか)」という言葉が今も挨拶に使われているほど、食事を大事にする文化があります。

中でも、日本料理は人気で、「焼肉、お寿司、ラーメン」が特に人気の高いジャンルです。

単純に美味しいと思うことと、日本料理に対してはヘルシーという印象が中国の方にとっては良い意味で浸透していることが、日本料理人気の理由です。

「寧波阪急」は「がんこ寿司」「千房」「麺や庄の」等の初出店店舗を誘致できたことがすごいし、この飲食ラインナップの良さが、寧波の方々から興味を持ってもらっている要因でもあります。

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また余談ですが、
「日本料理」「和食」は世界でたたかえる日本の優れたコンテンツだと、日本を離れてぼくは本当に痛感しています。
日本の飲食企業の方々には、積極的に世界、とくに中国に展開してほしいなと思います。
寧波、広州、深圳であれば、ぼくは出店のサポート(信頼できるパートナーの紹介と、出店場所の案内)できますので、お気軽にお声がけください。

③日本式サービス

「日本=サービス良い」って印象を中国の方は持ってくれています。
これも本当に嬉しい点ですね。
ぼくが今中国でそれなりに中国企業からコンサル依頼を受けれるのも、ぼくが「日本式の細やかな運営手法を中国の商業施設に導入する」サービスを提供していて、中国企業が「日本式」という点に興味を持ってくれているからです。

ただ、日本式、日本流のサービスを中国で実践、導入するのは難しい。
「寧波阪急」も日本式サービスの導入を行なっています。確かに寧波の他百貨店と比較するとサービスレベルは高いですが、「寧波阪急」が現時点で実現できているレベルは目指している姿とはまだまだ遠く離れているものと思います。

日本では「お客様が来店したら、笑顔でいらっしゃいませと言う」ということは当たり前のように浸透していますが、中国ではその感覚がない。この当たり前でないコトを理解してもらうことが難易度が高いですね。

中国でもこの数年、サービスに対する要求が高くなってきています。
中国の接客・サービスレベルが向上するにはまだ5年はかかるだろうと、ぼくは思っていますが、一度伸びはじめると凄まじいスピードで成長していくのが中国流。今後のサービスレベルの向上に期待です。

まとめると、「寧波阪急」は開業したタイミングも良く、寧波の方々のニーズを巧みに掴めていて、寧波の方々から多くの期待を寄せられています。

経済発展も速く、流行の移り変わりも速いのが中国。
「寧波阪急」は今後も寧波の方々のニーズを掴み続けられるかどうかがポイントですね。
ぼくは寧波に住む日本人として、今後も「寧波阪急」を良いお手本として学ばせていただきます。

最後に

今回は「寧波阪急」の正式開業を傍目に見ていて、中国でビジネスを行う上で重要な点を再度認識できたので、その点をお伝えしました。

今ぼくは「中国でアウトレットモールの開発・運営コンサル」を行っていて、こうやってたまに中国ビジネスに興味のある日本人に向け情報を発信しています。
決して文章がうまいわけではありませんが、皆さんが読みやすいようにと思って心を込めて文章をお届けしています。
なので、もしちょっとでもいいなと思ったら、スキ、フォロー、シェアをお願いします。
次回も頑張ってお届けします。

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