NPB「リクエスト制度(リプレイ検証)」のルール
※2023年5月4日「リクエストから検証までの手順」を加筆し、検証時に多数決で判断することになったこと、「確証のない映像」についての基準を追記。
日本のプロ野球では、審判の判定に対してチームが疑義を抱いた場合、審判に映像による判定の見直しを求めることができる「リクエスト」という制度が2018年から導入されています。
映像による判定の検証=「リプレイ検証」は以前から導入されており、審判団が必要と判断した場合に実施されていましたが、2018年からは監督が審判団にリプレイ検証を要求できるようになりました。
どんなプレイでも・何回でもリクエストを要求できるわけではなく、ルールが定められています。しかしそのルールは一般には非公開の「アグリーメント」(パ・リーグでは「パシフィック・リーグアグリーメント別紙22NPBリプレイ検証制度」)に定められており、私のような一般人は報道された内容を見るしかありません。実は野球殿堂博物館を通じてNPBに問い合わせてもらったのですが、「報道内容をご覧ください」という回答がNPBより寄せられました。
2019年と2020年には対象のプレイや細かい手順についてのルールが追加されており、変更を反映してまとめられたWeb記事は見当たりません。
観戦しているときに「あれ、これリクエストできないの?」といった場面が多々あるのですが、上記のような事情で私もよくわからないことがあります。備忘録として下記の通りまとめましたので、ご活用いただければ幸いです。どうぞご査収ください。
対象となるプレイ
①アウト・セーフ
②ファウル・フェア
(2019年追加)
④本塁での衝突プレーや併殺崩しの危険なスライディング
⑤頭部への死球
⑥フェンス際の打球(本塁打判定以外)
⑦併殺を試みる守備側を妨害する走塁
(2020年追加)
⑧捕球から送球に移る際に落球した場合、完全捕球かどうかについて
2018年の導入当初には①・②の2つだけだった対象が拡大しています。
④は塁上でのアウト・セーフだけでなく、いわゆる「コリジョン」「ボナファイド」の判定についてもリクエストができるようになりました。
⑤頭部死球でれば、投手が退場になりますが、リクエストの結果頭部死球でないとなれば、退場が取り消されます。
⑦は2019年4月21日の阪神ー巨人戦で問題となり、試合後に阪神球団が提出した質問書へのNPBからの回答で対象であることが確認されたものです。
⑧以前は「審判員の判断に基づく判定は対象外」とされていましたが、完全捕球はリクエストの対象となりました。スポーツ報知によると、「捕球を試みたグラブまたは手を閉じる行為を捕球とし、送球する方向を向けば完全捕球と判定する」とされています。(監督会議で「完全捕球」の確認もリクエストの対象に拡大 : スポーツ報知 (hochi.news))
対象外の判定
下記の審判員の判断についてはリクエストできません。
(ア)投球判定=ストライク、ボール
(イ)ハーフスイング
(ウ)自打球
(エ)走塁妨害
(オ)守備妨害
(カ)インフィールドフライ
(キ)審判員=塁審=より前方の打球
(ク)ボーク
(キ)本塁方向に向かって塁審の前の打球についてはリクエストできないため、例えば本塁と一塁の間のファウルライン付近で地面に触れた打球がファウルかフェアという判定に対してはリクエストすることができません。
審判の判断によるリプレイ検証の実施
監督からのリクエストによるリプレイ検証だけでなく、審判員の判断で「本塁打か否か」についてリプレイ検証が行われる場合もあります。
以前は、コリジョンなども審判の判断によるリプレイ検証の対象でしたが、リクエストの対象の改訂により、現在は本塁打か否かのみがその対象です。
リクエストができる回数
・チームは1試合で2回のリクエストが可能。
・リクエストによるリプレイ検証の結果、判定が覆った場合は、リクエストの権利の回数は減らない。リクエストの結果、当初の判定が変わらない場合は、権利の回数が減る。
・権利の回数である2回は、9回終了時点でリセット。延長では新たに1回の権利が付与される。延長回でも、リプレイ検証によって判定が覆った場合、リクエストの回数は減らない。
リクエストから検証までの手順
当該プレイに対する判定後、リクエストする監督は、速やかにベンチ前に立ち、球審に向けてモニターを意味する「四角」を手でかたどる。監督以外がリクエストすることはできない
監督によるリクエストのサインを確認した球審は、何回目の行使かを監督に指で合図し、リプレイ検証に入る(リプレイ検証中、選手はベンチに戻ることはできない。)
リクエストの対象となるプレーを判定した審判員ともう1名の審判員はグラウンド上に残る。
リプレー検証を行うのは、当該審判員を除く審判員2名、控え審判員の計3名。
リプレイ検証はその試合のテレビ中継の映像を用いる。その試合の主催球団は、審判控室にあるリプレー検証用モニターを設置し、試合終了までテレビ中継映像が見られる状態を確保する
リプレイ映像の検証時間は「5分以内」とし、確証のある映像がない場合は審判団の判断とする
「確証がない映像」とは下記の3種類
(1)グラウンドの土などでタッグやベースへの走者の足の入りが確認出来ない。
(2)プレイがその他のプレーヤー、または審判員でブラインドになっている。
(3)映像自体がぶれている。映像を確認した上で、検証を行なった3名の審判員の多数決で原判定を変更するか否かを決定する。
行使と検証における注意事項
地方球場を含む公式戦全試合が対象(本拠地開催のオープン戦を含む)
ベンチ内のコーチ、スタッフまたは外部の者が、何らかの方法でリプレー映像を確認し、監督に行使を促すことはできない。そのような行為が確認された場合はリクエストに応じず、監督は退場となる
検証後の判定に抗議した場合は、抗議した選手と監督が退場処分を受ける
野手の捕球のタイミングは、ボールがグラブの内側に触れた瞬間
捕球した際にグラブ、または手のひらを閉じれば『完全捕球』とみなし、そのグラブが送球する手の方を向けば送球動作とみなす。
リプレイ検証後の観客に対する説明は、審判員が必要と判断した場合に行われる
今後
下記の2つのプレイをリクエストの対象とすることが要望されていたものの、2021年シーズン時点では対象とはなりませんでした。
・バントをした時に打席から足が出ていたかどうか
・ファウルチップの判定
出典
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?