日本ハム球団から3選手が「ノンテンダー」となった件について、これからの論考と議論の参考資料にすることを目的に、これまでの経過と一次資料・関係者の証言と発言のまとめます。あとちょっとだけ所感を。
日本ハム球団「ノンテンダー」発表
2021年11月16日、日本ハム球団は当時同球団に所属していた西川・大田・秋吉の3選手について、「ノンテンダー」とし、保留手続きを行わないことを発表した。
「ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではない」としたものの、結果として3選手ともに同球団と再契約はせず、他球団と契約した。再契約に至らなかったことについて、同球団の稲葉GMは下記のようにコメントした。
プロ野球選手会の反応
選手会は同年12月6日開いた、同会大会において日ハム球団の「ノンテンダー」に対する懸念を表明した。
また2022年1月17日に行われた選手会とNPBの事務折衝においても本件を取り上げた模様で、対外的に懸念を表明したのはこれが初めてである。
そして1か月半以上経過した2022年3月7日に突如として日ハム球団に抗議文を提出した。下記が抗議を行ったことを伝える記事からリリースを引用したものである。
チームの編成も終わっているこの時期に抗議を行った理由として、選手会はTwitterで理由を説明した。
日ハム球団の反応
選手会からの抗議文に対し、日ハム球団は川村球団社長名でコメントを発表した。
選手会と日ハム球団の協議
2022年3月18日、選手会と日ハム球団が協議を行った。協議後に日ハム球団は下記の発表を行った。
論点
選手会のリリースから判断すると、下記の2点が論点であると考えられる。
① 「ノンテンダー」は「選手の価値を一方的に下げるような態様で選手を取り扱う」行為であるのか?
② 通告に当たって球団は誠実に対応したか?
①について:日ハム球団の対応は野球協約66条に則って再契約を行わない対応を行ったものであり、手続き上は何らの誹りを受けるべきものであるとは考えられない。抗議の論理としては、かねてから選手会が主張している保留制度の見直しが背景にあるものと想像される。保留制度の是非は一球団と協議すべきものではなく、日ハム球団のみに物申すことは失当ではないだろうか。
一方②について、球団が選手と「協議」したとするのは誤りであるとする選手会側の主張であるが、大田・秋吉両選手もメディアに対して通告は唐突であったとの証言を行っている。また再契約の条件提示もなされていないとしている。これに対し球団側は「誤解や誤認も複数ある」としており、どのような説明を行うのか注目される。
さいごに(どうでもいいこと)
選手会はシーズンが始まる直前の3月上旬という時期に唐突に抗議を行ったが、秋吉はNPB球団との再契約もならないなど、抗議を行うことによっても直接の当時者である当該選手が救済されていない。抗議そのものが遅きに失している。また日ハム球団の行為を問題視するのであれば、水面下での接触やショーシャルメディアを使った世論喚起などもできたはずであろうがそれも行っていなかったようである。
一方の日ハム球団も、自由契約のプレスリリースにおいての稲葉GMのコメントしか公式に発信しなかったこと、抗議文に対するコメントの最後の一文においていささか喧嘩腰で反応したことなど、対応に疑問が残る。
双方ともに広報のまずさが目立つ。広報の仕方一つで手に入れられるものも失うものもあることを確認すべきではないか。
(2022年3月18日追記)
3月18日協議後の日ハムのリリースでは、球団側が改めるとしたのは「ノンテンダー」という用語を用いない、という一点のみである。選手会が問題とした選手の価値を一方的に下げるような扱いや誠実な対応には何ら応えていない。