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ロサンゼルスでの宝石買い付け 〜 ヨーゴ産サファイアを求めて

こんにちは。
リカラット代表の小山(おやま)です。

先日、世界最大級の宝石展示会がツーソンで開かれました。アリゾナ州ツーソンのミネラルショーは、世界的にも有名です。今回のアメリカ出張の目的はこの展示会。昨年よりも多く収穫があり、有意義な買い付けの旅となりました。早くお客様にお届けしたいな、と考えていたところ……

「フライトが遅延?」

乗る予定だった飛行機が、14時間後の出発になってしまいました。思わぬ形で、自由時間inロサンゼルス。皆さんなら、ロサンゼルスのどこへ行きますか?

ハリウッド観光?
ユニバーサル・スタジオ?
ビバリーヒルズ?

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私が選んだ場所は、「Jewelry District」です。


Jewelry District(ジュエリー・ディストリクト)をご存知ですか?


「Jewelry District」は、ロサンゼルスにある大きな宝石街です。せっかく時間ができたので、早速ダウンタウンの中のこの宝石街エリアに向かいました。ここは、宝石商の中では有名な買い付け場所なんです。周辺にカッティング工場もあり、GIAアメリカ(宝石鑑別機関)の学生も、授業の一環で訪れる街です。

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ジュエリー・ディストリクトは世界的に見ても大きめの宝石市場。日本ではあまり出回らないアメリカ産のレアストーンもたくさん流通しています。

・レッドベリル
・ベニトアイト
・ロードクロサイト

などなど、良い石があればぜひ手に入れたい。私も胸を高鳴らせて、ジュエリー・ディストリクトに足を踏み入れました。着いてすぐに買い付け……は始まらず。
私の目は、売り場に併設された宝石加工場に釘付けになりました。

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ジュエリー・ディストリクトは、小売店だけでなく宝石加工場も軒を連ねていて、購入後、その場でサイズ直しや加工を依頼できます。普通の店ならば、小売店と加工場の場所が離れているため日数がかかってしまいますが、ここロサンゼルスのジュエリー・ディストリクトでは、その場で依頼できて数時間で加工が完了します。

見回せば、たくさんの宝石商の方が加工場に並んでいます。自分の案件を急ぎで仕上げてもらうためスタバのコーヒーを渡したり、おやつを渡したり……と、微笑ましい光景も。日本では、こういった加工場を見る機会が少ないので、とても新鮮でした。

ロサンゼルスで探す宝石は?


今回私が探すのは、ヨーゴ産・ブルーサファイアです。

ジュエリー・ディストリクトには数千の宝石店があるので、まずはヨーゴ産サファイアを取り扱っている店を探し出す必要があります。地道に1軒1軒回って、取り扱いがあるかどうか尋ねるしかないわけです。

買い付けの前にまず見つけることすら大変な、ヨーゴ産・ブルーサファイア。どんな宝石かご存じですか?

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ヨーゴ産サファイアの希少性

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これが、アメリカ・モンタナ州ヨーゴで採掘されるサファイアです。モンタナサファイアとも呼ばれています。ティファニーでも取り扱っている宝石で、人気がありますが、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんね。

ちなみに、モンタナ州のサファイアの産地は4つ。

・ヨーゴ
・ミズーリ
・ドライコットンクリーク
・ロッククリーク

この中でも、ヨーゴ産は0.8ct未満が殆どです。0.8ct以上のサイズで、色味の綺麗なものとなると、目にする機会はぐっと少なくなります。

ヨーゴ産サファイアが集まるこのジュエリー・ディストリクトなら、私の求めるブルーサファイアが見つかるかもしれない。いや、見つけたい! そんな意気込みで、小売店を回ります。

ここで宝石の豆知識  ~モンタナサファイア~
ティファニーの副社長だったJ・F・クンツ博士が、モンタナ州のヨーゴ渓谷で見つかった青い原石を、サファイアであると証明したことから始まったモンタナサファイア。いくつかの鉱床があり、場所ごとに傾向が異なりますが、全体的に透明度が高く、ファンシーカラーも多く産出されているのが特徴です。ヨーゴ産サファイアは平べったい原石が特徴で、大きめサイズが取れないとされています(リカラットSHOPから引用)。

ジュエリー・ディストリクトで宝石を探すには?

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今回はジュエリー・ディストリクトの数千の宝石店の中から、まずはヨーゴ産サファイア取扱店を探し、さらにその中からブルーサファイアを見つけ出すのが目的です。14時間あっても、全然足りませんね。

アフリカ産やオーストラリア産のサファイアの取り扱いは多いのですが、ヨーゴ産はかなり少ないです。ロサンゼルスはややヨーゴに近いのですが、この宝石街でもなかなか見つかりません。

ようやく見つけたお店で、早速取引を開始。
この手の小売店は店頭に多くの在庫を持たないので、「日本から買い付けに来ました」と説明して、オフィスからヨーゴ産サファイアの在庫を持ってきてもらいました。と言っても、

「これが0.8ct以上のヨーゴ産サファイアです」

と、出してもらえるわけではありません。たくさん渡されるルースの山の中から、自分でサイズや色を調べて、求める1石を探し出さなくてはならないんです。まさに、宝石鑑定士ならではの仕事ですね。

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今回、各店舗に出してもらったヨーゴ産サファイアは1000個を越えています。

・0.8ct以上
・明度
・彩度
・インクルージョン評価

これらをチェックし、私個人の鑑定基準に達したものを探します。
上記条件の他にもう1つ、「形(プロポーション)」も大切です。縦横のサイズがアクセサリーとして加工しやすいものを選ぶ必要があるからです。

ダイヤモンドの場合は、4Cという指標がありますが、サファイア含め色石の場合はそれがありません。そのため、それぞれの宝石鑑定士が経験を基に、カラーの明度・彩度・インクルージョンをランク付けして、買い付けたい石かどうか決めていくのです。

「明るすぎてダメ」
「暗すぎてダメ」
「色に鮮やかさがあるもので」
「さらに、インクルージョンが少ないものが欲しい」

1つ1つ、ルーペとピンセットを使ってチェック。ある程度絞り込んで数を確保した後は、宝石用ゲージを使ってサイズを確認します。

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写真に写っているのが、宝石用ゲージ。ストップウォッチのような見た目ですが、宝石用のノギス(測定工具)です。クチバシのようなところに石を挟んで、サイズを正確に計ります。

これで、欲しいサファイアが決まりました。
最後は値段交渉をして、買い付け成功です!

今回買い付けできたのは……?

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今回、買い付けた個数は「2個」。
1000個以上のヨーゴ産サファイアを見て、基準に達したものはこれだけでした。これこそ、ヨーゴ産ブルーサファイアの希少性を裏付けています。

上の写真をご覧ください。
ヨーゴ産サファイアはグリーンがかっているものが多いのですが、私が今回探していたのは、青味があり、少しグリーンも入るようなバイカラータイプ。まさに、求めていた宝石です。

「ロサンゼルスで自由時間があってよかった!」

そう感じられるサファイアに出逢えました。
けれど、正直に言うと、「思ったよりも買えなかった」という気持ちがあります。私の評価基準を満たすようなヨーゴ産サファイアは、既に流通量が少なくなっているようです。宝石流通量が多いロサンゼルスでさえ手に入りづらいのですから、今後動向をチェックしなければならない石の1つですね。

次に、ロサンゼルスで探したい宝石は?

今回のような偶然がまたあるかはわかりませんが、次回ロサンゼルスに来ることがあれば、ノンオイルレッドべリルを探して、また1軒1軒お店を回るつもりです。

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こちらのレッドベリルは、アメリカでしか採掘できない宝石。既に枯渇していて、宝石品質の新しい石が出回ることはまずありません。けれど、アメリカの宝石商の方々は、オールドストックとしてまだ持っていることがあります。

ロサンゼルスに来る前、ツーソンの宝石展示会では、1つだけノンオイルレッドベリルを買い付けできました。それも、数百石の中から1つだけ探すことができた貴重なものです。

レッドベリル、それもオイル処理されていないノンオイルレッドベリルを入荷したい! 次回は、それを求めて旅に出ようと思います。


今回の出張では、急遽ロサンゼルスで宝石を買い付けする時間を持てました。探し求めていたヨーゴ産ブルーサファイアと出逢えたのは、偶然の出来事です。「まさに宝石との出会いは一期一会だな」と考えながら、私は急いで空港に向かい、帰国の途に就いたのでした。

これからも、一期一会を求めて世界を回っていく日々が続きます。


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宝石鑑定士。福岡の質屋出身。大手IT企業勤務を経てGIA G.G.国際宝石資格を取得。宝石卸業として独立後、リカラットを設立。世界中で宝石の買い付けを行い、宝石通算売買数は100万石以上。noteではレアストーンを求めて買い付けた様子やリカラットでのイベントを中心に記載します。
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