見出し画像

アメリカ・ツーソンのミネラルショーに見る世界の色石マーケット動向【2019年版】

リカラット代表の小山(おやま)です。アメリカのツーソンミネラルショーをご存知でしょうか? ツーソンミネラルショーは世界を代表する宝石展で、世界の宝石トレンドの発祥地です。

これまでも「パライバトルマリン」や「ペゾォッタイト」などの”エース”達がこのミネラルショーで鮮烈にデビューして行きました。「ツーソンを制するものが色石を制す」と呼ばれるほど、世界の色石の方向性を牽引するマーケットです。

そんなツーソンからの色石マーケット動向についてお届けします。

ツーソンミネラルショーとは

画像1

ツーソンミネラルショーは、世界最大の色石の展示会です。

まず1つの会場で日本のIJT(国際宝飾展)と同じくらいのサイズがあります。国際展示場の一番大きなブースです。

そんな会場が「ブロック」という大きい単位に分かれています。1ブロックには3〜4会場あり、隣のブロックまでは徒歩ではなく、車での移動になります。

そんな「ブロック」が12個ほどあり、結局、会場の数だけでもなんと47会場あります。

画像2

マップだけでもかなりの厚さになるのです。

ツーソンミネラルショーの会場

ツーソンのミネラルショーは大きく2つのカテゴリーに分かれます。

1つは業者向け(wholesale)、もう一つは一般向け(public)です。業者向けは屋内、一般向けは屋外が多いです。

◯業者向け:

画像4

◯一般向け:

画像5

業者向けの会場に入るには、小売店としての営業証明が必須です。そのためインボイスや登記簿謄本の「英訳版」を用意して持っていく必要があります。

たまに日本のブログで「自社のホームページを見せたら入れた!」みたいに書いている方がいますが、それだと入れないこともあります。

頻繁に入場ルールが変わので、事前に会場に確認を行うのが無難です。ちなみに、1度でも参加すれば過去の履歴があるので次回からすぐ入れるようになります。

業者向けの会場では、数千万〜数億円するようなハイグレードなジュエリー製品・ルースが扱われます。例えばこういったものです。

どちらもこのグレードのものとなると日本ではなかなか見ることができません。セキュリティ上、写真が撮れないところが多いので、限定的に許可をもらえて撮れたものだけをこの記事に載せています。本当はこの何倍も様々な石があるのです。現地での感動はひとしおです。

2019年の色石のマーケット動向

画像5

今年のツーソンのミネラルショーでは、ルビー・サファイア・エメラルド・パライバトルマリン・アレキサンドライトといった「貴石」の需要は大きく変わっていません。

どちらかというと日本でも販売されるようなコマーシャルグレード(一般消費者向け)のものは全般的に5%程度値下がりしているというのが全体の傾向でした。

トピックとして私が気になったのをいくつか紹介します。

ファンタジーカットが流行りの兆し

はじめに石ではなくカットから。

皆さんはファンタジーカットはご存知でしょうか。裸石(ルース)の裏面に凸面を入れ、鏡面効果を発生させているカットのことです。

日本ではまだまだ認知の低いカットですが、世界的には既にかなり注目を集めています。中でもこの2019年のカッティングアワードに選ばれた2作品は見事です。

◯ オレゴンサンストーン John Dyer作

画像8

オレゴンサンストーン Christopher Wolfberg作

画像9

会場内でもこのファンタジーカットを使ったルースが、前回に比べてずいぶん増えたなという印象でした。

日本だと「ファンタジーカット」そのものをあまり見る機会はまだないですが、例えばシミズ貴石さんの独自カット「甲州貴石切子」には大きな注目が集まっています。

このように、石そのものではなくカットにも大きな注目が集まって来ているというのが興味深いトピックでした。

神の手を持つ研磨職人が揃う、シミズ貴石さんへのインタビュー記事はこちらから。シミズ貴石のさくらインカットはどこで買える?どれくらい待つの?直接聞いてきました。

エチオピア産エメラルドの値上がり

画像6

エチオピア産エメラルドがずいぶんと値上がりしていました。

2016年11月に発見されたエチオピア産エメラルドですが、実は2年前のツーソンミネラルショーでのデビューをきっかけに人気に火がついた石です。

近年では、カルティエやティファニーなどのハイブランドジュエリーでの取扱いも開始され、世界的にエチオピア産エメラルドの認知度が高まってきています。

エチオピア産エメラルドは、コロンビア産のものよりも明度が高いものが多いのが特徴なのですが、最近では最高級のコロンビア産と同じくらい濃い深いグリーンのものも見つかっており、人気を集めています。

さらにエチオピア産エメラルドは、採掘が一時的に減産方針になったことで供給が減りました。

以上の様な要因を受け、エチオピア産エメラルドの中でも上質なグレードのものに、コロンビア産エメラルドに匹敵する価格のものが出てきたというのが1つ目のトピックです。

タンザナイトは強気過ぎる値上がりか

予想以上の値上がりが見られたのがタンザナイトです。

昨年も10%程値上がりしていたので今年はさすがにもう価格が変わらないと思っていたのですが、タンザナイトを扱うどのバイヤーも昨年の10%程度高い金額を提示してきました。

バイヤーたちは「今後もタンザナイトは絶対に値上がりする!」と口を揃えて言い、値下げ交渉も全く出来ない程だったのですが、実は近年、タンザニア政府が規制に乗り出したこともあり、そろそろ価格が安定するのではと睨んでいます。

日本でもタンザナイトは人気の石なので、引き続きウォッチしていきます。

価格が不安定なモザンビーク産ルビー

画像7

モザンビーク産の新しい鉱山が発見されたことで供給過多になり、昨年から値下がり傾向にあるのがモザンビーク産ルビーです。

値下がりの傾向自体は緩やかになってきたのですが、かなりバイヤー間での価格差が激しい(10%〜20%くらい)のが特徴的でした。各バイヤーの「早く手放したい!」という気持ちの現れでしょう。

2カラット以上のハイクラスのモザンビーク産ルビーは採掘量も限られ、需要も高いままなので依然として価格は高く、一般消費者向けのルビーだけが価格変動が激しい状況となります。

日本で購入出来るモザンビーク産ルビーはほとんどが一般消費者向け。今後価格がガラッと下がる可能性があるため、購入の際には今回の記事を思い出していただければなと思います。

モザンビーク産パライバトルマリンは人気が過当

同じモザンビーク産でもパライバトルマリンの方は、過当なほどに人気沸騰中でした。

最も有名なブラジル産のパライバトルマリンが、そのあまりの人気に供給が追いついていないこともあり、ツーソンではモザンビーク産パライバトルマリンが大きな価格上昇を見せていました。

価格が高いだけではなく価格差が大きかったのも今年の特徴で、だいたいバイヤーによって10%〜30%ほど差がありました。

日本でもモザンビーク産のパライバトルマリンの需要は大きいのですが、それでもまだまだ一部であり価格は比較的安定しています。

もし今モザンビーク産パライバトルマリンを購入するなら、価格が乱調している海外よりも国内の方がオススメです。

私も今回のツーソンでモザンビーク産パライバトルマリンを購入するのはやめました。

全ての種類で安定した人気を見せるガーネット

今年、どの会場でも活況だったのはガーネットでした。

赤・緑・紫・オレンジ全ての種類のガーネットが人気で、特に深いロードライトガーネットで上質な色味のものは、昨年までの1カラットの価格が今年は20%近く値上がりしていました
他の石のようにバイヤー間での価格差も小さくマーケットが安定していました。

小ネタ:ツーソンで流行っている偽物オパール

画像10

最後に小ネタを。
オパールの「偽物」をツーソンで大量に見かけました。

この偽物オパールたちは、宝石品質でないホワイトオパールを加熱・染色などで人工処理したもので、価格は1粒1,000円程度と非常に安価です。エチオピア産のオパールをインド人の宝石商が加工処理しているというのが良くあるパターンのようです。

なおバイヤーとのやり取りでは、天然オパールですか?と聞くとほぼYESと答えられます。

ここで安心して買ってしまったら思う壺で、その後に必ず「トリートメントしてますか?」と質問して下さい。

パッと見だとほとんど見分けがつかないので、この質問がないと加工処理のものを購入する可能性があります。特にホワイトオパールの加熱処理石は少し厄介です。

ご注意ください。

まとめ

画像11

以上、ツーソンからのレポートでした。

世界の宝石商にとっての色石の中心地でありながら、残念ながらめっきり日本からの訪問者数は減ってきてしまっているようです。

これからも引き続き、最新の色石レポートを発信していきます。

twitterも頑張っていますので是非フォローの方、よろしくお願いいたします。



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

あわわ、ありがとうございます!
7
リカラット代表取締役。日本で一番ITに詳しい宝石商(たぶん)。美しい宝石を求めて世界を飛び回っています。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。