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In absentia / Porcupine Tree

 ポーキュパイン・ツリーは英国のプログレッシブロックバンドと紹介されることが多い。しかし実際にアルバムを聞いてみると、作品によって多様なアプローチがなされており、プログレの一言で済ませてよいものかちょっと悩むところではある。

 初期にはそのサイケデリックよりな音作りがピンク・フロイドに近いと評されたり、あるいはポーキュパイン・ツリー名義でありながら実は中心人物であるスティーブン・ウィルソンが独りで作っているアルバムであったりする。また、そのサウンドもサイケデリックという紹介を鵜呑みにすると、テクノっぽかったり、デジロックだったり、あるいはアンビエントな香りがしたり、実に多彩だ。

 しかしながら、この『In Absentia』においては、極めてハードロック/ヘヴィメタル的なアプローチが明確になされており、その点では90年代から始まるプログレメタルの一派としてとらえてもよいだろう。(アルバムは2002年の作品)

 ヘヴィなギターをフィーチャしたオープニングで幕を開けるアルバムだが、曲によってはアコースティックギターをふんだんに取り入れたり、シンセサイザーをたっぷりと重ねて幻想的な音を作り出したり、非常にスケールの大きいアルバムであることを感じさせる。

 バリエーション豊かな楽曲がそろっているが、その根底にあるのは、ブリティッシュプログレにも通ずる美しいメロディラインだ。こういうメロディの美しさはスティーブン・ウィルソンの持ち味であり、魅力なのだろう。インストであっても、歌モノであっても、そのメロディを聞くだけで心が癒やされようというものだ。

 バンドのサウンドは、このアルバム以降おおむね同系統の路線をたどることになり、同じような美しいプログレッシブサウンドを求めて聞くなら、新しいアルバムを聞いてみるのもよさそうだ。

 なお、バンドは2009年の作品『The Incident』を最後に休止状態にあり、その点は残念である。しかし、スティーブン・ウィルソンがソロ作品を意欲的に制作中ということで、そちらにも期待したい。


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