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RUN RIOT / OUTRAGE

 OUTRAGEは、ちょうど僕がメタルを聞き出した頃、(メジャー)デビューしたばかりだった名古屋のバンドだ。

 デビュー当時のOUTRAGEを、僕はスラッシュメタルというくくりで理解していた。もちろんあながち間違ってはいないのだが、その頃スラッシュメタルをあまり好きではなかった僕は、OUTRAGEの曲をほとんど聞かずに来てしまった。

 そんなOUTRAGEの曲を初めて「いいじゃないか!」と思ったのが、2009年のラウドパークだった。ライブで聞く"My Final Day"のかっこよかったこと。しかし、昔からのファンに言わせると、 その名曲"My Final Day"より後のアルバムは、いまいちぱっとしなかったという評価もあったようなのである。

 そして今年、彼らの新アルバム『RUN RIOT』が発表となった。これが実にかっこいいのである。豊かなメロディと、突進するような熱い疾走感。そのふたつの融合が完璧に実現されているのだ。ラジオ番組で伊藤政則が「30年かかってやっと本気を出した」などと評していたが、まさに全方位隙なしの、ヘヴィメタル完全体のようなサウンドが完成されている。特に、2曲目"Blood And Scars"のドラマティックなリフとサビを聞いた者は、オールガッツポーズでその完成度に狂喜するに違いない。この曲はOUTRAGEとしても一押しチューンらしく、若き日のメンバー(役の少年たち)が大須商店街を自転車で爆走するというユニークなPVも用意されている。この辺り、名古屋生まれのバンドとしての矜持なのかと可笑しくもある。ぜひ見てほしい。

 アルバムを締めくくる"Are You Ready"では、そのイントロにおいて阿部洋介のギターがマイケル・シェンカーばりの泣きのソロを聞かせてくれる。もうスラッシュメタルなんていう狭いカテゴライズはいらない。そこには本物のヘヴィメタルがあるだけだ。

 ドラムを担当する丹下眞也がパーソナリティを務める、エフエム愛知の『HEADBANGERS CLUB』というヘヴィメタル番組では、丹下眞也自身が、このアルバムについてのエピソードをいろいろ語ってくれている。CD初回限定盤には、ボーナストラックとして、PARALEX"White Lightning"TANK"Red Skull Rock"が収録されているのだが、これらのマイナー曲を敢えて演奏することで、自分たちのルーツがNWOBHMにあることを主張しているというこのとのようだ。この点は非常に興味深いし、言われてみればなるほど、これまでのOUTRAGEも、今回のアルバムも、NWOBHMのエッセンスが含まれていることに気付かされる。

 2020年になって、これだけの快作を放ってくれたOUTRAGE。まだまだ体力的には余力がありそうだ。これからもメタルシーンの真ん中に居座って、もっともっと頑張ってほしいところである。


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