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【TV】推定無罪

大学の後輩、野坂尚也が監察医の役を吹替ているのですが、Apple TV+の中でも特に観られている作品らしくシーズン2が決まったそうです。
スコット・トゥローによる原作小説、ハリソン・フォード主演の映画版などは未履修です。

まず気になるのは主演ジェイク・ギレンホールの顔がトイ・ストーリーのウッディによく似てるなーということですがそんなこととは関係なく、この主人公に感情移入できないことが甚だしいです。
職場の不倫相手が殺され、担当検察官を名乗り出る主人公ラスティ。
不倫してたことは事件前の時点で妻にも判明ずみながら、殺人事件の時はその不倫相手とよりを戻そうと彼女の家を訪問していた……と、言い訳できないいろんなものがありすぎです。
当然、担当からはおろされて被告人となってしまいますが、彼を追い詰めようとする検察官が敵愾心をあらわに、イヤーに攻めてくる中で、こりゃひょっとするとラスティが本当に殺ったのでは? と疑ってしまう描写が続きます。

そりゃー、殺人したかどうかを別にしても、罪にまみれてる状態で裁判を戦うストレスはものすごいので、色々な出来事の中で取り乱しがちなのも理解はできます。
そこは人間らしいリアリティがよく表現されていますが、よりによってこいつを主人公としてドラマを見続ける身にもなってくれ、と言いたくなるほどなんですよねー。

主人公と敵側の人物がいかにも感じ悪いのに対し、主人公の家族、また弁護を担当してくれる元上司の誠実さには救いが感じられます。
アメリカ中から注目されている裁判の被告の妻、という立場に苦しむ役を、ルース・ネッガという役者さんが見事に演じています。
母であったり妻であったり時には女でもあるような、役割の中での揺らぎが要求される役です。
ある時は疲れた主婦、ある時は魅力的な女性、シーンによってまったく違って見えることに驚きました。

そして、全般的に情けない姿を見せがちな主人公も、法律家としてのスキルを発揮する場面では、米国でのこの分野のプロというものを感じさせる説得力を見せています。
敵側のトミーも、最初は不安定だったのが裁判が進む中でスキルをつけていき、しだいに堂々たる検察官ぶりを見せるようになっていきます(おっさんの成長が見どころになっているドラマというのも面白いところ)。
このあたり、陪審員をどう説得するかが勝負になっている米国の裁判制度の興味深いところです。
我々もまた陪審員のように、被告人の人柄などの印象にも揺さぶられながら視聴することで、評決を下す難しさが実感されました。

こうした、演技合戦のようなスゴイ俳優陣による法廷劇で、実にエキサイティングで刺激的でした。
尚也演じる監察医のクマガイ含め、吹替声優の確かな実力も感じられます。

何度か映る殺人現場の凄惨な様子や暴力シーン、またクリス・ウェイラスもビックリのゴアシーンもあり、不快感を楽しむ心の余裕は必要なドラマです。
しかしそれらをはるかにしのぐ……最終話で真相が明かされたあとの、ラストシーンの不気味さは格別でした。
シーズン2観るのヤダって思ってしまうレベルですよ。
しかし思えば、この不気味さはドラマ全般にそこはかとない違和感として漂っていたようにも感じられます。
そういう意味ではこれぞ映像演出の豊かさであり、とんでもなく面白いドラマでした。

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