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【映画】ナポレオン

(イラストは「ナポレオン14世」のレコードジャケットをまねて描きました。知ってる?)

時間の都合でかなり小さいシアターでの上映だったことが災いしたのかもしれませんが(隣の4DXシアターの振動が伝わってきたのはちょっと良かったけど)、少々期待しすぎだったかなと思いました。

もちろん重厚な映像に華麗な戦闘スペクタクルと、優れた要素はさすがリドリー・スコットであったのは間違いありません。
でも、それ推しで見せる映画にはしないだろうというのもあったし、曲のつけ方の揶揄的な感じもあるカッコ良さから、これは『バリー・リンドン』を目指した作品であろうと早い段階で思いました。

『バリー・リンドン』はスタンリー・キューブリックが「ナポレオンの映画を作ろうとして金がかかりすぎるので断念し、かわりに作った歴史物」という成立過程が有名ですので、ナポレオンをリドリー・スコットが撮るということは、キューブリックが作ったかもしれないナポレオンか、バリー・リンドンのどちらかを目指すだろうとは思ったのですが、観ていて後者だなと思いました。

ただ、『バリー・リンドン』は封建的な時代のハチャメチャな人間をとんでもない映像美で描いてものすごく面白かったのですが、ナポレオンはそこまで壊れた感じの人ではなかったようで、なにしろ世界征服の一歩手前というぐらいには仕事が成功した人物ではありますからね。
それを言うと、『ナポレオン』の前にApple製作で劇場公開された映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の、弱くて愚かな人間が悪をなしてしまうあの奥深さにもかなうのが難しい題材だったかもしれません。

キーになるのが妻ジョセフィーヌというわけですが、彼女の妖艶な美しさは物語を牽引し、ナポレオンの戦う動機となるのに十分な魅力を放っていましたね。
演じたヴァネッサ・カービーが素晴らしく、『バリー・リンドン』のリンドン夫人、マリサ・ベレンソンに匹敵するものがあります。
……と、どうしても比較してしまうので、そこまで面白くはないなって思っちゃうのが残念なところでした。

以下は……
ネタバレかな?
ネタバレすると、
ナポレオンはワーテルローの戦いで敗北します!!

……という前回同様のボケはさておき、
評判の戦闘シーンはさすがの出来で、とりわけアウステルリッツの戦いでは「こうやって勝つのかぁ〜」と大変わかりやすくなってしました。
全体像も、個別のディテール(可哀想な兵士たち)もよく見えて把握しやすい。
これはまさに指揮官が主人公である映画ならではでしょう。
その後のワーテルローのシーンの効果を高めるのに役立っていました。
最初の戦闘は夜が暗いのも良かった。
映画に出てくる夜は戦場なのに明るいことが多いんですよねー。
技術的に暗いシーンを暗く撮れるようになったんだと思います。

もしかすると、映像ばかり素晴らしくて人物描写に興味がないと言われるリドリー・スコットの弱点が出ていたのかもしれないですが、『最後の決闘裁判』のように十分な尺(ひとつの事件に三倍の尺を使ってるからねえ)があれば人物描写への不満などはまったくない映画もあるので、2時間半は短すぎただけなのかもしれません。
というわけで、4時間半あるらしい全長版が配信されるという話もありますので、それを観れば相当違ってくるかもしれないですね。

「お前ら、アベル・ガンスのナポレオンなんか12時間あるんだぞ!!」と、リドリー・スコットが言ったとか言わないとか(言ったとは聞いてないですが、言いそう)。


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