【TV】スター・ウォーズ:アコライト
映画スター・ウォーズシリーズのおよそ100年前を描くというドラマ。
すごく面白いということはなかったのですが、興味深い試みが多く行われており、私は好感を抱きました。
スター・ウォーズのドラマシリーズというと映画シリーズのキャラクターをどう出すか? に命かけてる感じがあって、正直それは私は好ましい方針だと思っていません。
それについてはまたどこかで愚痴るとして、今作ではそれがほとんど(完全とはいかなかった……)達成されたのは良かったと思います。
過去作のキャラクターと面識も関係もない人物だけで構成。
それもあって、メインキャストの多くがアジア系とアフリカ系で占められており、大銀河系は広いからそうなるよなあと思わせる方向にしているのも良いです。
どうも白人とアジア系とアフリカ系を3等分ぐらいにしてる感じもあって、そういうことを批判する人もいるでしょうが、こういうところはフィクションの良さだと考えて欲しいですね。
主要な3人の俳優が素晴らしく、イ・ジョンジェによるマスター・ソルを見ると、ジェダイの衣裳はアジア系が一番似合うなって思いました(イカゲームの人らしいですが観てないのでまったく影響なし)。
ヒロインは双子で、アマンドラ・ステンバーグという人が二役をやってます。
どっちがどっちかわからなくなる混乱がドラマのポイントではないかと思うのですが、あたかも一人の人格の相反する面が拮抗し葛藤するような、複雑な役柄がよく表現されていたと思います。
そのような二面性という意味では、ザコっぽい登場のあと堂々とした悪役として出てくるカイミールにも複雑なテイストが常にありました。
彼の全裸海水浴wにヒロインの一人オーシャが絡むシーンでは、演じるマニー・ジャシントの独特の色気が放たれて、スター・ウォーズ全般の中でも屈指のセクシーな場面となっていたのが印象的です。
大銀河系、恋愛要素にふりまわされて戦争の帰趨に影響したりもしてましたので、こういうところは仄めかしでいいから要素として忘れないでほしいですね。
ドラマのテーマ性としては、ジェダイ騎士団という組織が持つ闇を強調するような話になっており、善悪の境を彷徨うような物語となっています。
この点も、映画のエピソード2や3では結構表現されていたのですが、今回はさらに容赦なく腐敗をあばきだす感じです。
したがって長期にわたり組織を統括してきた、かの人物の責任がますます問われるというかなんというか……
ということと、今回のドラマ3話目から、ヒロインがジェダイにリクルートされる過程が描かれるのですが、これが結構ヤバいというか問題意識が明確で興味深いです。
映画エピソード1のように、辺境の惑星で発見した素質ある子供をリクルートするジェダイの手法がここでも描かれますが、その問題性を明確に映してました。
土着の宗教・文化の中で育ち将来を期待される少女を、大都市(コルサント)に連れて行って訓練を施しより大きな世界で活躍させようとするジェダイに悪意はありません。
しかしその土着の宗教に対し、軽んじるどころか異教徒扱いですからね。
地域文化を破壊する結果をかえりみている様子もありません。
だって何しろ、ジェダイになることやコルサントに行くことは、何より本人が希望することなのですから、それが悪いことであるはずもない……
才能ある若者が大都市に出てフックアップされることの問題点に向き合っているように思いました。
特に女性が主人公なので、本人の希望通りになることは視聴者としても応援したい気持ちになるし、彼女をひきとめようとする現地の大人の女性たちが地方社会の旧弊を象徴しているようにも見えます。
だからといってそれでいいのか、という問題は日本だけでなく世界中にある問題なのでしょう。
ここは今作のとりわけ需要なテーマだと思いました。
シリーズのフォーマットを活かして現代的テーマを追求するのは、このフランチャイズの活路だと考えています。
ほかにも殺陣がカッコいいとか、スマートフォン型ドロイドwとか面白い要素や美点は多々あるものの、全体には地味な展開が多く『アンドー』ほどのハードな演出に振り切ってもいないので、そこまで引き込まれない感じはありました(それもあって作品の理解に不十分なものがあるかもという懸念もあります)。
映像的に目新しさにとぼしく、SFらしいエキゾチックな光景や、ダイナミックな広い画もあまりなかったようにも思いました。
100年前なら、映画エピソード1のヌビアン(ナブー・ロイヤル・スターシップ)みたいな金ピカ宇宙船がいっぱい出てくるのかなと思ったら全然出てこなくて、昔っぽさの表現をもう少し考えて欲しかったかなあとか(銀河共和国の長い停滞期を表現しようとしたのかなとも思いますが)。
しかし明らかに、シーズン2をやるであろう引きの強い終わり方ですので、今後に期待して良いのではないかと思います。
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