【映画】フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
アポロ11号の月面着陸はフェイクだったという都市伝説をネタに、その「真相」を想像力豊かに描くロマンティックコメディです以上! っていう感じ。
面白いので万人におすすめできます。
FLY ME TO THE MOONという題名でアポロ11号を描く映画は過去あって、邦題は『ナットのスペースアドベンチャー』という2008年の3DCGアニメでした!
これのプラネタリウム上映用短縮版を地元の博物館で子供と一緒に観たのですが、それについては別途語りたいです。
この時代の宇宙開発もの映画は『ライトスタッフ』を筆頭に、『ドリーム』『ファースト・マン』『アポロ13』など名作がいくつもあり、本作はそれらとはちょっと趣が違っていて、史実の裏付けのない隠された計画がテーマなので、別系統かな。
むしろピーター・ハイアムズのあの名作『カプリコン・1』の系統っていえるかもしれませんね。
Apple TV+のSFドラマ『フォー・オール・マンカインド』は1969年の月着陸を起点にした歴史改変ものなので、そちらに近い面白さかも。
Apple Studios制作でもありますので。
物語はそこそこ複雑なようでいて軸はしっかり、宣伝コピーにある「リアルかフェイクか」というテーマを中心にしています。
最初に広告業界で働くスカーレット・ヨハンソンの上手な嘘つきぶりが示されます。
相手役のチャニング・テイタムはもちろんそれと対照的な、嘘がつけない実直な男。
この二人が対立しつつも惹かれあうというロマンティックコメディそのものの展開ですが、ヨハンソン演じるケリーの見事なハッタリがアポロ計画そのものを成功に導いてしまうのが面白いです。
ヴェトナム戦争の映像がTVで流れるこの時代、メディア社会が始まっておりそこでフェイクがどんな影響をもたらすか……
そのあたりが本作の現代性として見逃せないところです。
日本での劇場公開は7月19日、月着陸が7月20日でしたからその時期にぶつけてきたのでしょうが、奇しくも2024年は7月13日にトランプ元大統領が銃撃されたばかりですから、米国の新旧の重大事件が思い起こされます。
宇宙開発ものとしてもじゅうぶん面白いのですが、本作をリッチに感じさせているのが、ケリーが仕掛けたパブリシティ戦略の数々。
オメガとかケロッグとか名だたる有名企業が次々にアポロ計画に関連した広告企画を展開していて、それが次々に見せられるので面白いです。
(NASAって画像をパブリックドメインとして公開していて、誰でも画像使い放題なのですが、そのへんもこの時期に始まったのかな?)。
最初のシーンでケリーが、スポーツカーのマスタングの広告企画案を出すのですが、そのあと戦闘機のほうのマスタングに乗るところがあって、こりゃ引っ掛けたのかなとか。
まあ、ケリーの嘘つきぶりもすごくて、広告といってもここまで虚飾まみれじゃないぞと業界の人は苦情を言いたくなりそうではありますが、そこは60年代の話ってことと、テーマ性との連動ということでよろしいんじゃないでしょうか。
そのぶん、チャニング・テイタム演じるコールの誠実さも重要な役割を果たし、クライマックスではまさしく虚実入り乱れてのスリリングな展開、そして「真実」に行き着く……と、うまく収まってました。
一部、セリフで説明するだけ? っていうところとか、その情報って先に出てたっけ? と思うところもなくはないですが(見逃しただけかも)、必要十分な丁寧さがあったとは思います。
猫とか、カラフルな60年代ファッションとかも含めて、可愛らしいところが多々あって、とても楽しめる映画でした。
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