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誰も立てない「お~」の正しい使い方は?~敬語クイズ#3

「お~!」という感嘆の声ではありません。
「~」には名詞が入ります。
「あぁ、前に説明した動詞連用形の名詞化ってやつね!」と思ったあなた。

いつも記事を読んでくださってありがとう!でも、残念ながら違います。
今回は単なる名詞、普通に名詞と言われて思い浮かぶ、あの名詞です。

「お」は言ってみれば「” ”(ダブルコーテーション)」のようなもので、「ここでは敬語だけに許された特別な使い方をしてますよ!」の合図に過ぎません。なので、いろんな使い方があります。だからこそ、整理しないとぐちゃぐちゃになって意味が分からなくなるのです。
なお、「お」は漢字で書くと「御」です。後に続く言葉によって「ご」のときや「おん」「み」などの場合がありますが、煩雑になるのを避けるため、ここでは「お」でまとめます。

以前、「おなら」は誰も立てない【美化語】であると解説しました。

そのコメントで、素晴らしいスプレーアートの数々を披露されているかりん様より、貴重な情報を頂戴しました。

「おしきち」!?

住宅メーカーということなので、恐らくは自社モデル建築の「お敷地」と言っていたのではないかと想像いたします。だとすれば、誰かを立てる目的ではなく、話し手の品を上げるために「お」を使っていたことになります。
(もしかしたら実際には違うかもしれませんが、そう仮定して今回は美化語の説明をしたいと思います)

【美化語】の説明

基本的に敬語は誰かを立てるために使います。そして、立てる対象は、「主体」「受け手」「聞き手(読み手)」の三者です。
しかし、同じ「お」を付けておきながら誰も立てない使い方があり、それを【美化語】と言います。

そして、美化語について問題になるのは、付けなくて失礼にあたったというケースよりも、今回かりんさんが気になったように付け過ぎておかしいケースというほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。

それは、美化語にも幅があるからです。以前説明した「おなら」のように「お」を外すともう意味が通らなくなってしまうものから、普段は「花」と言うのに、あまりにもかわいらしくて「うわぁ、かわいい花~🥰」と言ってしまうものまであり、問題になるのは後者のほうなのです。もちろん、友人や恋人と話すなら「お花」でも「お人形」でもいいのですが、これを公的な場で使うとちょっと恥ずかしいですよね。

そこで、おかしな美化語を使わないための見分け方は、「独り言でも言うだろうか」ということです。
「明日の弁当、なんにしよう?水も持って行っておこうかな。あ、金も下ろさなきゃ」と考える人は「お弁当」「お水」「お金」と使ってください。でも「お敷地」と独り言で言ったことがないなら、そんな美化語は使わないでください。
住宅メーカーに入社し、周りの先輩や上司が「お敷地」と口をそろえて言っているのを聞けば、真っ当な神経の持ち主なら真似します。真似しているうちにそれが普通になっていくものです。もし、自分が既にその業界や不自然な美化語に染まり過ぎてしまったのではないかと心配な人は、他業種の知人や家族に独り言で言うかどうかを聞いてみてはいかがでしょうか。

地域や文化によって多少は差がありますが、これを覚えておけば、あまりにもおかしな美化語は避けることができます。なかには、別に思い入れのない人形でも「お人形」と言う私は美化語の使い方がおかしいのだろうか、と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは気にしないほうがいいと思っています。これはそもそも「お」が付けられないという一定の条件はありますが、美化語の作り方を完全に表せるルールはありません。したがって、自分の中にある基準を疑うと、基準がなくなってしまうのです。

あなたは独り言で言う?言わない?

先述のように、美化語として適切かどうかは地域や文化によって差があります。また性差があり、男性のほうが独り言で美化語を使うことが少ないので、今回は正解はありません。アンケート程度に思ってお答えください。
皆さんの答えがどれぐらい揃うのか、それとも揃わないのか、一緒に見てみませんか?

【問題】
以下にあげた言葉について、「独り言で言う」もしくは「独り言で言うかも」と思うものを選んで番号で教えてください。
※偉い人のもの、とか、偉い人に向かって言う、とか、聞いたことがある、ではなくて、お風呂の中で考えているときや、誰にも見せない鍵の付いた日記を書いているときを思い浮かべて、自分が独り言で使うかどうかをお答えくださいね。

【言葉群】

  1. おスズメ

  2. おバラ

  3. お道路

  4. お長財布

  5. おメール

  6. お手紙

  7. お芋

  8. お財布

  9. おトイレ

  10. お店

皆さまからの回答をお待ち申し上げております。

それでは、また。


世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。