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餌はやる?あげる?

先日「ご集金に参りました」を取り上げたところ、Plot 47さまよりコメントを頂戴しました。それがこちら。

Plot 47さま、ありがとうございます

金田一先生も犬に餌を「あげる」と言ってしまうぐらいですから、「やる」と言うべきところで「あげる」を使う人が増えたのは間違いなさそうです。

ちなみに、元の記事はこちら。

やる>あげる>差し上げる

そうは言われても「やる」を使うのは抵抗があるという方のために表を作りました。

「やる」と「あげる」について考えるには、もうひとつ「差し上げる」もセットにしてしまったほうが理解しやすいのです。

そして、対語もセットで理解してしまいましょう。

このように表にすると、「やる」は別に失礼な言葉ではないということが一目で分かると思います。
加えて、敬意の度合い(=敬度)を、感覚的なものではありますが私なりに表現してみました。

+が多いほど敬度が高い

「やる」は敬度としてはゼロ(表では±と表現しました)です。
一方、「くれる」という言葉には謝意が含まれています。謝意は敬意に通じます。それを表では(+)と表現しました。

ここで注意していただきたいのは、ゼロにマイナスの意味はありません。決して相手を馬鹿にしたり見下げたりするものではないのです。だから、相手を見下げて使うときにはあえて本来不要な「くれる」を加えることで、嫌味として「くれてやる」と言わなければなりません。

餌はやる

ということで、Plot 47さまのおっしゃるとおり、犬に餌は「やる」ものです。自分の子どもにも小遣いは「やり」ます。自分の旦那に小遣いを「やる」ものか「あげる」ものかは夫婦関係によります(笑)

ただし、間違いはあっても正解がないのが敬語。
例えば、こんな人がいたらどうでしょう。

私にとって犬はペットなんかじゃない。友人や恋人よりも大切な家族以上の存在。私を分かってくれて、私を支えてくれるかけがえのない存在だから、少しでも健康でいてほしいし、1年でも長生きしてほしい。

こんな人が犬に「ご飯をあげてくるから、少し待っててね」と言うその言葉尻をとらえて「ペットなら餌をやるですよね」と訂正する必要はありません。

「どんなご飯をあげてらっしゃるんですか?」などと、言葉を合わせてあげるのが配慮というものです。

Plot 47さまが挙げてくださったエピソードは、金田一家における心置きなく言いたいことが言える暖かい人間関係があればこその話であり、そういう人間関係の中でこそ、正しい敬語の使い方を学ぶことができるのでしょう。
羨ましいと思いつつ拝読しました。

それでは、また。


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