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「お」や「ご」を付ければ丁寧語になるのか
今年はコロナ禍の影響で、例年よりも新入社員が少ないかもしれません。
とはいえ、新入社員が入ったところでは、研修や教育に追われているところも多いと思います。
また、昨今は、対面で人が教えるのではなく、動画を研修として見せるところも増えてきたようですね。
さて、今回は、そんな動画で見つけたおかしな敬語です。
社員に敬語を教える動画でおかしな敬語を見つけるというのもおかしな話ですが、見つけてしまったものは致し方ありません。
名詞に「お」や「ご」を付ければ丁寧語になるのか
その動画では、敬語には尊敬語と謙譲語と丁寧語があるとしたうえで、丁寧語の説明として、「です」「ます」を付けること、そして名詞に「お」や「ご」を付けると教えていました。「です」「ます」が丁寧語というのはいいのですが、「お」や「ご」は丁寧語にはつきません。
例として「お忙しいところ」を挙げていましたが、「忙しい」は名詞ではなく、説明と例文すら合っていません。
なぜこんな説明になってしまったのでしょうか。
美化語を丁寧語にまとめた?
「お」や「ご」には、誰も立てない美化語としての使い方があります。
親が子どもに「あんたも早くご飯を食べなさい」と言うとき、子どもを立ててはいませんが「ご飯」と言う、このような使い方です。
おそらく、このことを言いたかったのではないかと想像はしますが、出てきた例は「お忙しいところ」という丁寧語とは関係ない敬語でした。
では、「お忙しいところ」は敬語の種類でいうと、何でしょうか。
「お忙しいところ」は尊敬語(主体尊敬)
「お忙しいところ」は残念ながら丁寧語ではありません。
丁寧語であれば「私もお忙しいところ参加しました。」と言えることになってしまいますが、こんな言い方をする人はいません。(間違っても真似しないでくださいね)
実際には「お忙しいところお越しくださいまして、ありがとうございました。」と忙しい当人を立てるときに使います。
そうするとこの動画は、尊敬語と丁寧語の違いもよく分かっていないということになってしまいます。
なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょうか。
尊敬も謙譲も丁寧も、同じ場面で同時に起こる
例えば目の前に敬愛する先生がいたとしましょう。
そのときあなたはこの先生を尊敬しています。
その先生の前ではへりくだります。
その先生には丁寧に話します。
先生の前で頭を下げる行為は、果たしてへりくだる行為でしょうか。
尊敬を表しているとは言えないでしょうか。丁寧ではないでしょうか。
そう考えると、尊敬と謙譲と丁寧を分けるのは、とても難しいことです。
では、どう考えればいいのでしょうか。
敬語は誰を立てるかを考えて使う
敬語は、人を立てるために使う言葉ですから、誰を立てるかで敬語を使い分けます。
「行く」という動詞を例にとって考えてみましょう。
①「行く」という行為をするその人を立てたいときは「いらっしゃる」 例)社長がいらっしゃる
②誰のところへ「行く」のか、その行先にいる人を立てたいときには「伺う」
例)お客さまのところへ伺う
③話の聞き手(読み手)を立てたいときには「参る」
例)私が参ります
このように使い分ければ、区別は明確で混乱することはありません。
それでは、また。
不適切な敬語は、文法を知らないで使っていることが原因です。知らないことには正しい敬語を使いようがありません。そして、誰かに聞こうにも教えてくれる人が周りにいないのが、多くの人が置かれている現状です。
私も周りに聞ける人がいなくて敬語を身につけるのに苦労しました。そこで、こんな記事を書いております。ご自身の敬語が気になる方は、どうぞ参考になさってください。
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