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生きづらさの生き方ガイド~読書感想文#27

この本は生きづらい人ヘ向けた本ではない。
どんな人にもある、生きづらさに向かい合うための本である。

ガイド

その名のとおり、この本には冒頭にガイドがあり、何に困っている人が、何ページを見ればいいかがすぐ分かるように工夫されている。

不登校・ひきこもりとは

平成30年度の調査では61.3万人がひきこもり状態にあると推計されたそうだ。
80代の親が、50代のひきこもりの面倒をみなければならない「8050問題」も最近クローズアップされている。
このようなことから、生きづらさと言われてまず思い浮かぶのが「不登校・ひきこもり」であろう。

それらについて、まったく知識のない人でも簡単に読めるように、「不登校・ひきこもり」の現状と、支援について説明が書かれている。

当事者

次に、体験談が載っている。
先の説明がほんの数ページであるのに対し、体験談は本書の半分を占める。そのうちの半分が当事者のものである。

百聞は一見にしかずという。医者の説明を滾々と聞かされるよりも、具体的なエピソードや赤裸々な感情の表現は、読む者に鮮明な印象を与える。今まで、生きづらさなど、どこか遠くの話と思っていた人も、身近に感じられることだろう。
ちょっと、とっつきづらいあの人や、もしかしたら自分の中にあるモヤモヤも生きづらさの一面かもしれない。

家族

体験談のうち、残りの半分は家族のものである。
生きづらさを抱える人と共に生きる人も、また生きづらさと無縁ではいられない。そう考えると、誰にとっても人ごとではない。
当事者を広く捉え、生きづらさを包み込む優しい視点を編者は持っている。
この本を読むと、その優しさが伝わってくる。
それは、専門家だけでなく、かつて引きこもっていた経験があり、今は生きづらさを抱える当事者やその家族の支援をする大橋氏が著者に加わっていることが影響していると思われる。

当事者であり、それを乗り越えた大橋史信と、専門家(家族関係心理士・心理カウンセラー)である岡本二美代が、今、生きづらさを抱えている人たちを支えたいという思いで書かれた本であることが、分かる。

当事者もその家族も、自身の気持ちや体験を素直に話せるのは、この大橋氏が聞き手だからなのだろう。

情報提供

生きづらさを抱える多くの人は、誰に相談していいか分からず、いや、相談していいと思えずに独り悩んでいるだろう。

だからこの本では、半分は情報提供である。
不登校、ひきこもり、発達障害、LGBTQ+、様々な生きづらさを抱えた人の役に立つことを目指している。

これが一冊あれば、必要な支援を得ることができるようにきめ細かく配慮されている。

全ての人へ

生きづらさを抱える人には独りではないと感じてもらえる本として、支える人には自分だけが頑張りすぎることのないように頼れる資源を活用するための本として、そして生きづらさと関係ないと思っている人には生きづらさを抱える人を理解する入り口として、また自分の中にほったらかしにされている生きづらさがないか確認するために、読んでみていただきたい。



世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。